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僕は無難にニューライフがしたい  作者: OGRE
拠点の拡充を始めよう
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66ーミニマムゴーレム達は働くー

 転生から約400日。この世界では標準化されているざっくりした暦から言えば、僕がこの世界に来て早一年になろうとしている。ただ、この世界の一年と地球での一年は全く違い、転生してからそれだけの時間が経てど実感は薄い……。

 実感は薄いけど、時は変わらず過ぎて行く。別に感傷に浸っているわけではないのだが、一応一年近くが経過。つまり、僕も約1歳である! だからなんだと言う話だけど、とりあえず一区切り。


「じゃん! ご主人に感謝じゃん! ミニマムゴーレムの大群が頑張ってくれてるじゃん!」

「今日も朝から元気じゃん……。それで? 朝からどうしたの?」

「いろいろとミニマムゴーレムにやらせてみたじゃん! ミニマムゴーレムは凄く頑張り屋じゃん! それにいろいろと応用が利く種族じゃん!」


 少し前に成り行きで拠点に連れ込んだミニマムゴーレム。最初はその一体だった。しかし、天王山の大峡谷で僕が行わせた勧誘作戦がまさかの展開を引き寄せてしまったのだ。2体から3体集まればいいとこだと考えていたところに……。まさかの無数のミニマムゴーレムが大集合していた。

 それからは代表して、最初のミニマムゴーレムと意思疎通をし続け、ミニマムゴーレムたちの事情も知ることになる。

 ミニマムゴーレムは単体としてはかなり弱い。強化外装を作り上げ、自らを守ることでようやっと生存できりようになる。ゴーレム同士での縄張り争いもあり、峡谷は峡谷で生存競争はかなり激しい。そのため下位のゴーレムの生存環境は最悪だそうで……。それにしても数が集まりすぎだとは思うけど、幸い我が家には養える環境がある。だから、様子見は必要だとは思ったが、無数のミニマムゴーレムを全て引き取った。


「でも意思疎通はどうしてるんだ? ミニマムゴーレムは会話はできないだろ?」

「魔道具で何とかなったじゃん! ホワイトキャップー! カモーンじゃん!」

「うーい。どったのじゃんじゃんニキ? あれ? 王の太守様もいるね。マジでどったん?」

「かなり緩い話し方だね……。で、君があのマキシマムギガントゴーレムのミニマムゴーレム?」

「そうそう! おいらはこのじゃんじゃんニキにこの魔道具をもらってから“ホワイトキャップ”って呼ばれてるんだ。改めてよろしく!」


 僕と最初に意思疎通したミニマムゴーレムは、じゃんじゃんことスーパーマックスノー一号が作った魔道具で、擬似的な会話ができるようになっていた。その魔道具が白色の野球帽で、割と可愛らしい。ミニマムゴーレム達には一人一体の蟻型ゴーレムが配備されている。ミニマムゴーレムにも個体差があり、性格が違う。見た目可愛らしいミニマムゴーレムだけど、穏健な個体から血気盛んな個体まで様々だ。

 なので譲渡した蟻型ゴーレムも異なる型番だし、割り振られた職場も異なる。目の前のホワイトキャップは金属加工が得意な個体で、スーパーマックスノー一号の助手として務めているらしい。

 ミニマムゴーレムは強化外装さえあれば、それなりに何でもできる。この拠点にどの程度の数が移住したか知らないけど、あちこちの部署に配属されて今も働いているらしい。なりこそ小さいがミニマムゴーレムはそれなりに賢く……思っていた種族ではなかった。


「まあ、おいら達は魔物だし? 人間とは相容れないもんなー。王の太守みたいにいろいろぶっ飛んでる兄貴だから、おいら達を受け入れてもらえたし、わかりあえたと思うぜー」

「いや、そこはシンシレットの功績だね。君もシンシレットが居なかったら僕とも繋がれなかったと思うよ」

「えー? 王の兄貴だったら大丈夫だったと思うぜー!」


 ホワイトキャップは楽しそうな口調で僕を持ち上げる。そのまま僕達は朝食を食べに食堂へ。僕の朝は和食モドキから始まる。金剛米、汁物、葉野菜系の和え物、メイン一品あれば文句なし。今日のメニューは金剛米、カラハナタケのお吸い物、昆布モドキと赤ヒジキの白和え、味噌田楽ぽい何かだ。かなり豪華である……。

 スーパーマックスノー一号は。

 マルマルブドウパンのトースト、サテュロスヨーグルトのベリーベリージャム添え、モヒカンエッグのゆで卵、贈り物のミックスジュース。

 ……ホワイトキャップも食べるらしい。

 たっぷりサテュロスチーズのかかったモヒカンエッグトースト×2。


「意外と体の自由が利くんだね。いい食べっぷりだけど、普通の食事をして大丈夫なの?」

「あぐあぐ……ごくん。んやー、むしろこんないい食事は峡谷じゃ食べらんないから、今じゃ恵まれてるんだよなー。なんか他種族からは勘違いされがちだけど、おいら達は究極の雑食。別に石ころ限定じゃないのさー。むしろこんな美味くて、吸収効率のいい食事ならばんばんざい!」


 ホワイトキャップの話ではミニマムゴーレムは区分的にはスライム種と近縁で、何でも吸収し何でも糧にできる究極の低燃費生命体だそうだ。確かに見た目からも分かるとおり、機械鉱石生命体ではある。しかし、それはあくまでも生存戦略の中で進化し、その形態に至ったに過ぎない。ゴーレム種は鈍重で狩りの成功率が低い。なのであらゆる物からエネルギーを得られるように、吸収機構を進化させた生命体なのだ。

 土中に混ざる微量のエネルギー変換可能な物質を、日々濾し取りながらでも生きられる生命体か。

 それでは鉱石を吸収する事をやめられるかと言えば異なるらしい。結局のところ、肉体の維持にエネルギーの要らない無機物を選んだはいいが、やはり摩耗するし経年劣化が起きる。だから、できるだけ定期的に良質な鉱石を吸収し、ボディのメンテナンスは必要不可欠となる。その点を見てもこの拠点は恵まれており、腕の確かな錬金術師がメンテナンスやアップグレードもしてくれる。ホワイトキャップからすれば、ここでは無駄に重い強化外装すら要らない桃源郷のような場所なのだとか。


「おいら達は外の知識とは全く違う種族なんだよなー。ほら、あそこで脚立の上でお玉を動かしてるヤツ。アイツは今日のスープ担当だし、あそこで蟻型ゴーレムに乗って食器を下げてるヤツもだな。おいら達はこの城じゃ何の強制も受けてないんだ。こう言う自由な環境な。おいら達にはそれこそが何よりもかけがえないんだぜー」


 ミニマムゴーレムは身長10cmから30cmくらいまで差がある。その体格を活かしていろいろな仕事をしていた。それから元野生の魔物とは思えない程すぐに溶け込んだと思う。ホワイトキャップが他にも何体か居るリーダー格のミニマムゴーレムを紹介してくれるとかで、そのまま食堂で待つ。ゴーレム種は共生関係、または従属関係にある別個体と荒い意思疎通ができるらしい。

 そこにサイズ感の違うミニマムゴーレムが各々違う蟻型ゴーレムに跨って現れた。

 一体目はホワイトキャップと同じくらいの体格で、10cm少々。頭には麦わら帽子を被り、オーバーオールを着た個体だ。何となくだが、農場で働いてそう。名前はストローハット。

 二体目はミスリル製のサークレットヘルムを着けた30cmオーバーの大きな個体。こいつには見覚えがある。ペロ助が倒したオリハルコンアーマードゴーレムのミニマムゴーレムだ。職場はダンジョンや外壁の歩廊の上らしく、名前はミスリルヘルム。

 三体目は中間的な体格の20cmくらい。コイツは……どう考えても鍛冶場で働いてるんだろうな。なんでそこを真似したのか知らんけど、彼の名前はペストマスク。

 四体目は10cmに満たない極小ミニマムゴーレム。医療班に所属しており、頭にはナースキャップを乗せていることから、名前はそのまま…ではなくDr.ナースキャップ。


「五体目と六体目のコイツらは統括室と総務室勤務の個体だ。ブラックベレーとハニーカチューシャだぜ。コイツらはゴーレム種でも珍しいジェミニゴーレムって言う二体で一体のゴーレムでな? コイツらは得た情報をどんな条件下でも共有できる特別なゴーレムなんだ」

「それは凄いな。情報共有能力が段違いになるのか」

「せやで! んで、最後になるけどこのフロアと厨房勤務のゴーレムの統括がアイツ。あそこで皿を下げてるヘッドドレスで部署統括は最後だな。他の部署や種族との取次ぎはおいら達の部下がしてるぜ」


 思ったよりしっかりと組織立った労働環境みたいだな。最初は加工系の班に所属してもらう程度を想定してたけど、ついでに食事をしながら定着具合を聞いたりもした。

 ビックリするほど普通に溶け込んでいるように感じる。今の拠点全体に入り込み、足りない手数や痒い所に手をつけて働いているようだ。それからミニマムゴーレムには年齢のような概念があり、存在進化の回数でそれだけ立場が上になる。このミニマムゴーレム達はその年功序列制度と、希少種であることが判断基準で統括に任命されている。

 現在の最年長はミスリルヘルム。大きさから何となくわかる事だが、大峡谷にゴーレムが住み着き始めた初期から生き残る数億歳単位の個体らしい。しかし、ミスリルヘルムは個人主義であまり統率は得意でないらしい。だから、彼?彼女?の部下にあたるゴーレムヘルムとシルバーヘルムに部隊運用や物資管理面を任せているらしい。


「我は騎士なり。騎士は主を城を国を守護する盾となる。死を恐れず、幾度敗れようとも喰らいつく。我は鬼の王に忠誠を誓う騎士。我らは王の剣となり盾となる!」


 すっごいガッチガチの考え方をしてるな……。このミスリルヘルムはこれからも活躍するだろうし、よろしくしてもらおう。

 それからこの中で最も希少な種はジェミニゴーレムのブラックベレーとハニーカチューシャの二体で一体の特殊なミニマムゴーレム。正直、素材の違いくらいしか判断基準が僕にはないのだが、この二体はわかり易い。胴体にあたる場所に星を真っ二つに割った模様があるから。確かにジェミニは双子座だけど……。

 そのジェミニゴーレムの二体はまだ食事に夢中で会話になりそうにない。存在進化の回数としてはまだまだ少ないらしく、あの二体は幼いゴーレムとなる。

 それから運の面で全体の総括も任されることになっているホワイトキャップだが、彼は全体的に何を見ても中の中。存在進化の回数も進化先の種もここにいるメンバーから見ればどれも目立たないらしいのだが……。僕との繋がりを得た功労者と言う認識が強いらしい。


「おいらは特に強くもねーし、弱くもねー。生きた時間もそこそこ、存在進化の回数も、存在の格も全部そこそこ……。なんだが、なんだかんだおいらがまとめるのが一番波風立たないんだよな」

「然り。ホワイトキャップは弱い。しかし、我にはない柔軟さがある」

「んだなー。いろんな仕事になんでも卒なく手を出せっぺ」

「確かに特化種は強いかもしれませんが、それは場合によっては弱点になります。回復魔法しか使えない私など特にそうです」

「「ホワイトは頼もしいお兄ちゃんってかんじいー!」」

「何よりも……王との縁を築いた。言わば、我らが種の…代表といえよう」


 代わる代わるの言葉に僕も納得しつつ、ホワイトキャップはこれから忙しくなって行く事については確信した。おそらく、ミニマムゴーレムはこれからも増えて行くだろう。アリ型ゴーレムに跨り、天王山の大峡谷にて鉱脈の案内をしてくれるようになっているからね。それと同時に野良のゴーレムでも呼びかけに応じる個体は増えつつあるのだ。情報の拡散速度が速いのかわからないけど、もうかなりの数が一気にドカンと増えても何ら驚かない。

 それにミニマムゴーレムはとても素直だ。なんと言うか、あまり反抗的な態度がないんだよね。


「そんな事ないじゃん! 僕には割とオコになるじゃん!」

「それはじゃんニキが無茶を押し通そうとするからだぜ! さすがにあんまりむちゃくちゃな仕事はおいら達にも拒否権くらいあるだろ?!」

「そりゃもちろん。ところで、無茶な仕事ってどんな仕事?」


 うん。忘れてはいけないが、ゴーレムは機械鉱石生命体だ。つまりゴーレムは素体がちがうだけで立派な生物なのである。ゴーレムは休眠が不要なわけではなく、有機的な素体の種族よりも少なくて済むだけなのだ。

 じゃんじゃんは楽しいと周りの耐久値や速度を考えず、作業を1人だけガンガン進めてしまう悪癖がある。彼の助手であり秘書のような仕事をしているホワイトキャップには頭の痛い事案なのだろうが……。彼はもう十分に働いているようだ。これからも頑張って欲しいと思う。じゃんじゃんを止められるのは僕を含め数少ない戦力だからね。

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