59ー野生ゴーレム討伐作戦withレベリング(ミギワ視点)ー
縄張り周りの魔物ではレベリングの旨みが薄くなったからね。仲間のレベリングや資源採取、害獣駆除も兼ねて僕らも臨場だ。僕はミギワ。いつもなら柔らかい革張りの椅子に座らされ、拠点内の物資管理や細々とした要望などのまとめをする"総務室"の最終確認役をしているのだけど……。今日は隣の縄張りにある天王山方面でレベリングしている。
僕もその内の一隊を率いて天王山の峡谷の奥深くでゴーレム狩りをしていた。
僕の隊はユニコーンのカリュエルさん、ネグスエルさん、トマルエルさん、残りは内勤組の女性陣。僕の隊に配属されるのは主にファットテール部隊ノーマル班の建築班に属しているお嬢さん達。僕達は大物狙いのペロ助隊とは違って、小物をチクチク倒してレベリングしている。
「うん。皆の経験値の入り具合もいいね。僕の方もそこそこ入ってるし、今後も落ち着いていこう」
僕達の拠点で最強の戦力であるペロ助は大物狩りを好んでいて……。さっき、その大物に出くわしたらしく、彼のスキルで仲間を鼓舞して集団戦を開始しているそうだ。ズドンズドンと大きな音が響き渡っている。あそこまで大きな音を立てて戦っているとなると、本当に大物と戦っているのかもしれない。
まあ、ペロ助はペロ助である。僕達は僕達のペースで仕事をすることにし、さっき見つけたいい感じの岩塩が露出している場所で採掘中。たまには体を動かすのも良い物だ。
皆でツルハシを振りかぶってピンク色の岩塩を採掘し続ける。その他にも鉄や銅など以外にも貴金属もチラホラみつけた。でも、この多すぎる種類の金属が近場に固まっているのは不自然過ぎる。僕達の縄張りにも遺跡があったし、魔物の森には何か大きな秘密がありそうなきがするんだよなー……。まあ、でも今それを気にしても仕方ない。ポロポロと現れるゴーレムを潰しつつレベリングを続ける。
「メタルゴーレムって珍しいのですね」
「僕もそこまで詳しいわけではないけど、メタルゴーレムはそこそこレアな魔物みたいだよ? ロックゴーレム系から時間をかけて、好みの金属を精製するから現れるまで時間がかかるみたいだね」
「なるほど。でも、それだとロックゴーレムばかりで資源採取の効率が悪くないですか?」
「それは仕方ないんじゃない? 製錬作業が必要になるけど、手に入らないことは無いし地道にやればいいと思うよ」
ご主人様の言う事は確かにほんとうのようだな……。ユニコーンの三騎士はいいとしても、内勤組のメンバーに驕りのような感情が芽生えてきている。確かに皆強くはなっているけど、結局のところは人類種の枠を超えているわけではない。僕達のような人外種とは能力値が雲泥の差なんだよ。
僕のレベリングだけ考えれば比較的希少なメタルゴーレムを狙う方が効率がいい。しかし、彼女らに安定した戦闘を学ばせつつ、徐々にレベリングするならロックゴーレムをチマチマ討伐した方がいいんだよ。実績的な戦闘経験としても、位階上昇の概念的な部分の経験値も一気にドカンとよりも馴染ませる感じの方が絶対にいい。
ここのゴーレムの出現割合は今の所九割以上がロックゴーレム。残り一割がメタルゴーレムだ。そのロックゴーレムの中に、30m級の大きさまで体を成長させたエルダーゴーレムが数体。そのメタルゴーレムの内の数体にメタルゴーレムの上位種になるアーマードゴーレムが含まれていた。今の所はその中に希少金属のメタルゴーレムやアーマードゴーレムがいなかったことが救いかな? 別に僕単体なら普通に勝てると思うけど、内勤組の子達が居るとなると僕だけではどうにもならないタイミングがあるんだよね……。そもそもこの峡谷内にはゴーレムが多すぎる気がするんだよ……。
「それは私も感じておりました。一体一体の能力はロックゴーレムなのでそれ程なのですが……。まさかお城の外で蟻型ゴーレムと似たような大群を見ることになろうとは思っておりませんでした」
「それだけこの峡谷が資源に満ちているのだろうが、それだとしてもこの数は異常だな。それにこの峡谷はかなり深いはずなのに水が出ている場所がない。それも私からすれば強い違和感を感じさせるな」
「いずれは詳しくこの峡谷を調べねばいけないかもしれませんね」
「ご主人様ならばいずれは着手されるでしょう。ですが、まずは人員全体の能力向上が必要な事項でしょうね」
僕とユニコーンの三名が岩塩の露出している部分を砕いていると……。カリュエルさんが振りかぶったツルハシのヘッド部分が折れて跳ね返り、反対側の壁に刺さった。このツルハシって魔道具だからかなり頑強なはずなんだけどな?
それよりもカリュエルさんに怪我がないかを確認した後、僕はツルハシをぶつけた場所を観察すると……。この材質に僕は覚えがある。これって、僕達が死にかけたドラゴンゴーレムが居たあのダンジョンの魔法無効化加工されたブロックだ。だから魔法のツルハシが折れたんだろう。この魔法無効化金属で加工されたブロックに打ち込んだとなればね。普通のツルハシになるわけだから、カリュエルさんの筋力なら一発で折ってもおかしくない。ただ、カリュエルさんの使っていた魔法のツルハシならば折れるだけなんだけど、僕の生体武装である魔装“コアクレスト”なら魔法無効化金属も効果がない。
僕の魔装は聖装とのハイブリッド。魔力でも強化ができるけど、聖氣でも強化ができる。僕は聖騎士だから、聖氣を使う術法に長けているからね。聖氣で局部身体強化を行いつつ、コアクレストにも聖氣を塗ったくっていく。ユニコーンのお三方は何が起きてもいいように構えている。下手をすれば広範囲を破壊するからね。
「聖法の星よ。我が力をもって我が障害を砕け! オーバーコアブレイク!」
魔法無効化の加工を施された遺跡と同様だと思われる壁面を派手に粉砕し、僕はその中を注意深く観察する。僕が打ち抜いた場所はどこかに繋がる通路だった。……そこからこれまでとは毛色の異なるゴーレムが飛び出してきたので、警戒態勢を改めて取る。
このゴーレムは内勤組には命取りになりかねない。動きもゴーレムとは思えない程の素早さに、それなりに高威力の攻撃。僕のカイトシールドで攻撃をいなしつつ、後方へ行かせないように押し込めている。ボディのあちこちに刃物のようなパーツがついて居り、ゴーレムにありがちなトリッキーな挙動で僕に斬撃を通そうと連撃を繰り出して来る。
僕がガードタンクに徹している間に内勤組はカリュエルさんの指示で魔砲への換装を完了。シールドバッシュで弾き飛ばし、メイスで殴り飛ばしつつ、ワラワラと湧き出てくるゴーレムを潰していく。
一応パーティーを組んでいるので、僕が目の前のアサシン型ゴーレム?を潰せば、後列の仲間にも経験値は何割か入る。だから、とりあえず僕が抑え込んで、叩き潰す。その撃ち漏らしを魔砲で迎撃したり、ユニコーンの三人が近寄らせる前に破壊する。
「このゴーレムはおかしいですね。ゴーレムコアがありません。機動外装を破壊すればミニマムゴーレムが逃げ出す物なのですけど」
「おそらく、この数居るアサシン型ゴーレムの中に統括している本体がいるんでしょう。時間をかけてでも潰していくしかないでしょうね。幸い、一体辺りの強度はそこまでではないです。僕が全面的に壁になるので、打ち漏らしの迎撃をお願いします」
それからは長かった。百体近くアサシン型ゴーレムを僕が聖騎士のスキルである“セイントウォール”で引き付け、押し返し、時たま漏れる数体を後列組が迎撃する。その後体感時間で一時間くらいした頃に、ちょっと気持ち悪いアサシン型ゴーレムが現れた。腕が三対、顔面も三つ。脚は普通……。手には武器の類いが数多く握られ絶え間ない攻撃を雨霰と打ち込んで来るけど。聖騎士の防御スキルを上手く活用すればこの程度は敵ではない。
近接戦闘系上級職“聖騎士”。
それが僕の天職。その本懐は崩れることのない城塞の守り。だが、聖騎士と言うのはそれだけの存在ではないのだ。通常の騎士と同じロールであるタンクと“聖法”という騎士にない戦線維持の要となる能力を持っている。
僕の陣営へステータス上昇と負傷を徐々に回復する“鼓舞する心”。
陣営全体に防御力上昇のバフをのせ、一定割合の攻撃を肩代わりする“護身の心”。
自陣の誰かに向けられた攻撃を一定確率で無効化する“転鎧の心”。
戦闘中に受ける精神的重圧を緩和する“庇護の心”。
最後に僕個人の攻防の能力を一定時間急上昇させる“勇気の意志”。
これらの攻防を充実させるスキルは聖騎士が持つ戦場で仲間を護るための力。聖騎士は協会に仕える聖なる騎士ではない。聖なる力で仲間を護る守護の騎士なのだ。騎士系の職の中で仲間を護ることに特化したスキル構成の職はない。ちなみに聖騎士は上級職だからね。それなりに職業経験値が貯まるまでに時間がかかる。……と思ったんだけど、手数で稼いだおかげかもうすぐ聖騎士をマスターできると思う。
「さすがはご主人様の忠臣。転生して間もないというのにこれだけのスキルを既に習得してるのですか。聖騎士は上級職。必要になる経験値はバカになりません」
「そうだろうな。それにしても早いと思うが……」
「その辺りはご主人様…王の権能があるからこそだと思われます」
うん。それはあると思う。
ご主人様の周りに居る仲間の成長を助長する権能は他とは違う。ご主人様の職業“製作者”がどのような職業なのかはわからない。だけど、何らかの恩恵はある。その恩恵はかなり大きい。いや…、大きすぎる。
タイミングが来た。最後に聖騎士のマスタリースキルを発動する。誰かがアサシン型ゴーレムを潰したんだろう。その分の職業経験値が入り、僕の職業である聖騎士をマスタリーした。随分前からマスタリーしていたペロ助とは違って、マスタリースキルの詳細はよく知らない。
聖騎士のマスタリースキルは“神護の聖鎧”。効果時間はかなり短いけど、近接攻撃スキルの少ない聖騎士にある攻撃強化スキルの一つだろう。武技術スキルは武器の練度でも得られるけど、やはり職業スキルには敵わない。聖騎士は防御の要。しかし、それは機を見ているだけだ。
僕はカイトシールドをつけている左腕を前に出し、敵の攻撃を無視して猛進。勘違いされがちだが、手堅い防御は見た目派手な攻撃よりも、そのタイミングさえ掴んでいれば効果的な攻撃となる。盾の武技スキルである“シールドバッシュ”を神護の聖鎧でコーティングした物で殴り飛ばす。堅い守りは敵の攻めを撥ね退ける亀の甲ではない。僕の守りは敵が怯むその時に真価を見せる。シールドバッシュで吹き飛ばされ、岸壁に激突した三面六臂のアサシン型ゴーレへさらなる追撃。猛進を止めず、僕は巨大な圧力となって三面六臂のゴーレムへ致命的な一撃を叩き込んだ。
だーけーどー、ここで終わりではない。僕は用心深いんだよ。動きがなくなったと見せかけて急襲してくるなんてべたな騙し打ちは僕には通用しない。メイスに聖氣を纏わせ、今度は僕からの乱打。地の攻撃力としては僕はそれ程高くないけど、神護の聖鎧を纏っている間の僕の能力はペロ助にも匹敵する。そして、完勝!
『守護神による職業昇級許可が降りました。
聖騎士のマスタリー及び、マスタリースキルでの特定危険種の討伐を確認。
昇級処理中の誤動作を確認……。原因を特定完了。
事由 存在鑑定の結果……異世界転生者であり、太守の眷属であると判明。
転職昇級条件のクリアと、固有職業獲得条件をクリア。
……転生後の個体経過をロード、王の太守…ユウゼン シロイの眷属ミギワの天職を“聖盾の守護騎士”へ変更。
…………………完了』
なんか、頭の中に無機質な音声が流れたんだけど、これはどういう事だろうか?
僕にはよくわからなかったので、その辺に詳しそうなユニコーン三人衆に声をかけて聞いてみた。僕のこの発言に三人は大いに驚いている。驚かれているだけでは話が進まないので、とにかくカリュエルさんから詳しく聞いた。
僕が戦闘の後に聞いた無機質で機械的な声は“天の声”と呼ばれる神族からの干渉を知らせるお知らせのような物なのだそうだ。
デパートの迷子アナウンスみたいに聞こえたからそれ程の物とは思わなかったけど、カリュエルさん達からするとかなり凄い事らしい。人類種よりも格段に寿命が長い僕達人外種でも天の声を聴くことができる個体は限られる。あ、もちろん人類種でも何かの理由で聞くことはあるらしいけど、神族からの直接の承認というのは非常に大きな案件なのだそうで……。しかも僕に天の声を降ろしたのは守護神という戦神と対になる強力な力を持った女神だそうで。なんか、事が大きくなって来たな。
まあ、考えても仕方ない。時間も時間だから、今日はペロ助達と合流して拠点に帰ろうかな?




