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僕は無難にニューライフがしたい  作者: OGRE
拠点の拡充を始めよう
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41ー王の拠点の新体制ー

 カナンさんの拠点内見学も兼ねて、僕は今日も視察行脚を行う。ここからは徐々に上階へと昇っていく形となる。まず最初に見に行くことになったのは、マサムネが詰めている統括室。男性の聖騎士や神殿騎士、犯罪組織の構成員から足を洗った男性陣が多く務めている。神殿騎士の男性陣は出身の家門がそれなりに裕福だったからか、読み書き計算は完璧。神殿騎士のメンバーの多くもそうだ。他のメンバーも徐々に勉強しながら、最初は部署間の取次やどうしても出る雑用をこなしてもらっている。


「主殿から配備いただいた人員のおかげで、我が部署も充足しておりますぞ。皆、優秀で助かっております」

「うん。マサムネも統括で忙しいだろうけど、ちゃんと休んでね。最近シズカが拗ねてないかい?」

「シズカとの時間は設けるようにしておりますが……。気を付けてみます」


 僕が飼育していたペット部隊だけど、その多くは継代して育てたくてペア飼育していた。それはマサムネとシズカも当てはまる。他のメンバーも多くはそうだ。なので拠点の事もそうだけど、張りつめ過ぎずにシズカとの時間も大切にしてほしい。それはまだ地球に居た時から飼っていた僕の正直な気持ちである。

 次はルオンエリアス達が務めており、ミギワが室長を務める総務室だ。ミギワとしては今すぐにでも室長の椅子を、ルオンエリアスの代表であるシュメリエさんに譲りたいらしいのだが……。正規移入してなお彼女達は副官の地位を維持し続けている。言い分はやはり僕の忠臣と考えられているメンバーが管理職になるべきという部分にあるらしい。この部署はこの部署で人族が多く移入した。ルオンエリアスが班長となり、総務室の中でも区分けされて効率を上昇させる思惑があったのだろう。ここに居るのは読み書き計算ができることが条件なので、神殿に務めていた元シスターだった人物がその仕事をこなしている。

 スキル傾向や加護の関係で神殿に無理やり囲い込まれた女性が多く、彼女らとしても神殿での鬱屈とした空気よりもここの生活は充実しているようだ。


「ホントにシュメリエさんが室長をしてくれればいいと思うんですけどね」

「何をおっしゃいますか。王の忠臣が中軸の部署の長についていることが大切なのですよ」

「僕はどっちでもいいと思うけど、現場で話し合って決めてね」


 こうなるとミギワの方が不利になる。ミギワは椅子を譲りたがっているが、ミギワはとても優秀な人物だ。何よりも自分で考えて効率の良い方法を導き出し、現場にすぐさま浸透させて有効活用する部隊運用能力が非常に高いのだ。この拠点ではマサムネに次ぐ部分があり、僕からするとこのままでもなんとも思わない。……ミギワの本心としては医療班を統括しているナギサと一緒に働きたいのだと思う。どちらの気持ちも分からなくもないが、ルオンエリアスの面々がミギワを手放したくないのもよくわかる。なので……、ごめんけど現場で話し合って欲しい。

 そのまま僕達は上階へと向かう。この先はアリの巣をモデルにしたダンジョンの防衛層になっている。デザインこそ遺跡調から北欧貴族のお屋敷風にしてあるが、あのダンジョンは凄まじい鬼畜ダンジョンとなっているので、侵入者はないと思う。そもそもどうやって侵入するかも問題だしな……。下層は下層で防衛能力が高く、あっちからの侵入はほぼほぼ無理。上層は上層で、異界樹の結界があり、侵入しようと思ったらば湖を泳いで水中から上陸しなくてはならない。湖中はダンジョン化してないけど、元から魔物の密度が高く攻撃的な魔物も居るので……。現実的ではないだろうな。

 ダンジョンエリアの上層、地下一階と地下二階の間の空間に医療施設がある。屋敷からは直接いけるが、ダンジョンからは入れない。通用口が用意されているので移動には困らないけど、ちょっと複雑な構造を作ってあるのだ。そこはミギワのパートナーのナギサが統括している医療班が働いている。陽光の聖女シンシレットを含めた高位聖職者のヒーラーが数多く在籍。それからアランドール氏の蔵書から医療的な知識を抜きだした研究資料や、ナギサの治験から得た膨大な知識を共有している。あそこもあそこでかなりハイクラスな医療機関だと思う。


「ご主人様。お疲れ様です。本日はどうされましたか?」

「うん。新住民の定着具合を見に回ってるんだよ。それから進化後の君達の様子も見ているつもり」

「私達の様子見ですか? 能力の向上が著しいこと以外は大きな違いは感じませんが?」

「いや、体格が三倍近くなってて違いが無い方がなんかおかしいと思うけどね」


 地球での常識ならそうかもしれない。だけどそれは同行しているサンドラさんやカナンさんに訂正されたが、進化とはそういう物なのだと言う。進化と成長は大きく異なる。進化はその存在に新たな形態を適応化する生態が持つ適応形態。能力の適応化は体内にある防衛本能のような物で、それが当然のような物なのだそうだ。思い返せば僕も著しい能力の上昇があったはずなのに、それが既に肉体の一部として認識していた。そう言う物と考えるのが早いか。この世界の法則なのだから、それ以上でも以下でもない。生命体が生き残っていくために編み出した、地球には見られない独特の法則ということだ。

 その医療班の詰所から上階へ上がり、庭園に繋がる建物から出る。屋敷の外に入り口があり、そこから城のような場所の各所に行ける。もちろん庭も……。

 我が家のランドマークのようになっている異界樹が見える。異界樹の幹にはたくさんのドールハウスがくっついていて、そこには比較的小さな妖精族が住んでいる。異界樹に咲く各種花から蜜と花粉、実を収集する仕事を主任務にしているのだが……妖精族もこの拠点に来てからは様々な場所に行っているのだ。妖精族は平均的な人類種とは異なり、体格が一定では無い。やれる事の幅がかなり広い。それから力の強さもまた個体で異なる。


「あら? 我らが君、お日柄もよく」

「天気はいいね。ルルエンシーさんも元気そうで良かったよ」

「うふふ。私供妖精族は今日も好環境に住まわせていただき安心しております。この拠点の様々な仕事に興味を持ち、手を出しておりますが……ご迷惑にはなっておりませんか?」

「うん。部署で楽しそうにやってたよ」

「そうですか。ならば私も安心です」


 妖精族の女王であるルルエンシーさんを見たカナンさんがかなり驚いていた。ちなみにサンドラさんはもう諦めの境地のような顔つきをしている。ここでは何が起きてももうおかしくないと言う感じだ。

 人に近いサイズにまで成長する妖精族はかなり珍しい。その中でも姓を持つ大妖精は超希少だ。しかもその妖精が個に付き従うと言うのはさらに有り得ないことらしい。妖精族は人類種より強力な場合が多く、力の弱い妖精族は迫害されているが、この場にいる妖精族は血筋正しい太古よりの妖精族。その女王が僕に向ける表情、何から何まで普通ではない。

 まあ、女王であるルルエンシーさんは直接の労働はしてないけどね。基本的に彼女は無数に居る妖精族を統括し、異界樹周りで異界樹関連の仕事をしている。異界樹周りは薬効効果の高い素材がわんさか出現するからね。薬草の類いは当たり前、キノコ類も大量に生えているし、苔の類もかなり珍しい物だ。実は霊薬の材料ばかりである……。これらの適切な管理を行える種族も限られているらしく、妖精族もしくはなんなんパラダイスことキャラメル一号が管理しているんだよ。


「なあ、サンドラ。ここはどうなっておるんじゃ?」

「それをワシに聞いたところで答えられるはずが無かろう。ワシはあくまで客人ぞ?」

「さっき鑑定して称号を覗いてみたが、まさかの“魔物の森の王”とガッツリ書かれておるのじゃ……。これは神族が認めておる証拠なのじゃ。これはわらわを含めた八大太守すべてがここに集まる日も近いやも知れんのじゃ」

「間違いなく集まると思うぞ? 残りの太守はビリビリ虎、毒蛇の小娘、火山の暴れん坊、地底湖の引きこもりであろう? 特に毒蛇の小娘とビリビリ虎は気づいておるはずじゃぞ? 気づいておるが……苦手な相手が居る故に来ぬだけじゃろう」


 なんか不穏な会話が聞こえたが、来ないなら来ないで構わないので、僕から深堀りはしない。深堀りしたらフラグ回収しそうで怖いから。僕は彼女らの会話は右から左にスルーして、他の場所の見学に行く。正直、屋敷の周りは残りのサテュロスや人族の住民が整理整頓に掃除洗濯しているだけだから、特別なことはない。給仕班のメンバーと大してやることに違いはないので、彼女らに声掛けの意味を込めて屋敷を一周回ってそのまま階下に降りる。

 登りはダンジョンエリアと違う通用口から上がって来たけど、今回はダンジョンエリアに繋がる防衛エリアを進む。

 この防衛エリアは一部のメンバーにしか正規ルートが分からない。なので僕から離れると現状詰んでしまうだろう。別に僕がマップを使って捜索すれば問題ないけど、このダンジョンはあちこちに一見分からないような傾斜がついており、平衡感覚に異常を齎しデザインも変化がないので方向感覚や時間感覚も簡単に狂わせる。たぶん迷うのが太守だとしても、無事に出るのは難しいかも。


「ヒッ……。えげつないのじゃ」

「そうじゃのう……。このように幼く柔らかで可愛らしい顔をしておきながらな? この男はおそらくこの森で一番性格が悪いぞ?」

「いや、サンドラさん…それは酷くね?」

「なーにを言うとるか……。こんな鬼のような迷宮を構築するダンジョンマスターなんぞ知れておろうが。しかも、なおも改造を検討中なんじゃろ? 一体全体何のためにこんな極悪な物を作ったんじゃ? 言うてみい?」

「え? そこにあるから?」

「な? こういう男なんじゃ」

「わらわ、頭悪いけどなんとなく分かったのじゃ」


 そんで僕が次に案内したのは、ダンジョン最下層であるボス部屋。一応僕が待機することが想定されているけど、侵入者なんて来ないのでペロ助や太陽、カリュエルさん達などが訓練場や修練場として使っている。適度に広く、壁や柱を壊しても僕の余剰魔力や聖氣などで即座に回復していく。それ以前に壊せるのはペロ助か太陽、三太守や位階の高い竜族しか今のところ居ないけど。

 基本的にはペロ助や太陽は教官だ。アイツらと模擬戦なんかしようもんなら、各縄張りの実力者でも危ない。それはヴィエラさん傘下のミラさんとゼラさんが体験済み。それはそれは恐ろしい目に遭っていた。

 ペロ助は僕の仲間の中で現状最高レベルであり、最凶の戦闘ユニットだ。定期的に狩りをすることで戦闘衝動を緩和しているが、彼の天職はあらゆる物を破壊する狂戦士(バーサーカー)だ。元から戦闘に対する高揚感が他とは異なるし、直ぐにヒートアップするから手加減も苦手。相手が大神の太守の補佐役だったから何とかなっただけで、並みの魔物では相手にならない。相性的に悪いタマモさんも戦いたくないと言ってるし。


「お? 旦那あ! よく来たじゃねえか! いっちょ組み手やってくか?」

「こらこら、あんまり暴れすぎないようにね。僕と君が組み手なんかやったら大変なことになるよ」

「そうだよ。ペロ助君。僕達は強くなりすぎてるんだから。もう少し手加減することを覚えないと」

「んやー? 俺は忘れねーぞ? 俺と模擬戦した時熱くなって俺の尻尾を危うくお前の尻尾みたいにちょん切りそうになりやがって」

「ウッ……。それはごめん。だけど、僕らの能力はこの拠点ではご主人を除けばマサムネ君と同じくらい飛びぬけてるんだし」

「そうだな~。マサムネもたまに来るけど。アイツもいい筋してんだよなー。アイツとも模擬戦を一回はしてみたいぜえ」


 現在のペロ助は存在進化し、固有竜人種という特殊なカテゴリーになっている。その膂力と速度は太守の三人でも恐怖を覚える程。ぼさぼさツンツンのカーキ色の髪を後頭部でひとまとめにしており、大柄でゴツイ体つきと渋めの声が印象に残る。ドラゴ〇ボールに出て来そうな感じだね。普段着を道着にしてるのもそれを加速させる理由だろうけど。

 それに対し太陽はちょっと前のペロ助を彷彿とさせる巨躯のリザードマン。平均的なリザードマンの大きさは知らないけど、2mは普通に超えているし、太陽の場合はそれに身の丈を超える大剣を背負っているのでさらにデカく見える。ただ、ペロ助程にゴリッゴリではなく、太陽は一撃必殺とヒット&ウェイが基本戦法。この2人の仕事も詳しく見て行こうか。

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