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僕は無難にニューライフがしたい  作者: OGRE
ご近所付き合いも大事
22/221

22ー僕が作った最凶の魔晶湖の遺跡ダンジョンー

 僕が地球からこの世界に転生して早90日。おおよそ三か月が経過。未だに成長期は来ず。

 そんな中、かなり長期に渡って行っていた件が漸く片付いた。魔晶湖の中央に入口があり、そこから地下階へと下って十階層にも渡る“魔晶湖の遺跡”のフルリフォーム工事がついに完了したのだ。それまでの道のりは苦労の連続だったけど、とある人物がこの拠点に住まうようになってから直ぐに解決してしまったんだよね。今までの苦労は何だったのか? というレベルだった。

 それは大妖狐の係累に属し、現在の南方の太守の娘であるクズノハさんだ。

 少し前のキツネ騒動の件で、太守であるタマモさんのヤラカシから謝罪の形として受け取った。言ってしまえば人質のような物だよね。そのクズノハさんに与えられた仕事というのが、アランドール氏の蔵書から有用な知識をサルベージするという仕事。クズノハさん自体はかなり大人しく影が薄い人で、たまに近くに居ても気づかないレベルで存在感が希薄だ。だけど、彼女は素直な性格でとても有能だった。その彼女の功績と言うのが……。


「ダンジョンコアのおかげで凄く楽になったな。よく見つけたね。あんなボロボロな書物から」

「私は……母とは違って……、妖術は苦手なのです。……その分、役に立とうと……知識を蓄えていました」


 クズノハさんは僕らが読めない古代語を読むことができた。僕らは転生特典でこの世界で使われている共通言語を話し、読み書きすることもできる。それだけでなく、亜人族に根付く独特の文字文化や言語形態も理解できるようになっているのだが……。例外がいくつかある。こちらの世界でもいくつかの古代語が存在し、その古代語に関しては読めないのだ。

 それには神族関係の理由があるらしいが、光の神にお茶を濁されたので、深くは触れない。

 ごほん……。その古代語関連の書籍は誰も読み解けず、それこそ文字通りお蔵入り状態だったのだ。それを理解し、僕らが読める形態に書き写してくれたのがクズノハさんだった。我が家の聖獣や守護獣すら読めなかった文字。彼女が何故それらを読めるかの理由は、彼女の持つ固有スキルに理由があると言う。それに関してはまだ教えてくれないが、時間が経てばその内教えてくれるだろう。


「それにしてもダンジョンコア…ね。ドラゴンゴーレムのコアがこの遺跡を維持するためのまさに格だったわけか」

「はい。……その認識で……間違いない……かと」


 クズノハさんが読み解き、書き写してくれた古文書の内容を僕らが更に突き詰め、レオパード部隊と共に僕の莫大な内包魔力をいかんなく発揮して再構築したのが現状のダンジョンコア。

 まずダンジョンコアとは何ぞや? という話だが、ダンジョンコアとは器物を魔法的に管理する疑似生命体の機関部だ。何故、疑似生命なのかと言うと、ダンジョンコアには自我や意識に類する物が無いから。それこそ意思能力があれば人工生命と言えるだろう。

 このダンジョンコアはゴーレムなどの魔法生物の中核部にある魔核や聖核と同系で、指定した器物に取り付きその器物へ魔法式を伝達する構造体を浸透させていく。人間の心臓と血管の関係に似ている。違いがあるとすれば、人間で言う所の神経細胞と同じ効果をその血管と近似する器官が持つ事。ダンジョンコアには独自の意思がないので、取り付いた器物を自ら改造することはない。そこに干渉するのが僕となる。ダンジョンコアを使うには魔力紋登録や聖氣波長登録を行い、登録を行った者の魔力を糧にダンジョンコアが取り付き、ダンジョンとなった器物を構築する。

 小難しい話を噛み砕いていうとこういう事。魔晶湖の遺跡をダンジョン化し、僕の魔力を代価として使って遺跡を遠隔で作り変えたのだ。ただ、ダンジョンコアも完璧ではない。パソコンもシステムを作り上げ、そう動くように組み上げねば動かない。ダンジョンコアも同じ。もっと言えば、ダンジョンコアは魔力や聖氣さえあれば、ダンジョンを拡張したり改修できるが……。指向性を示すダンジョンマスターが居ないと何もできない。そして、ダンジョンの場合はパソコンのようにデータを運用するだけに留まらない。物理的にアレコレ弄れる。魔力や聖氣さえあれば…ね。


「ダンジョンコアもその辺りは融通が利かないんだよな。他のファンタジーだとダンジョンポイント的な物でなんでも創造できるのに」

「それは…高望み…し過ぎでは?」


 僕もそう思うことにしている。この世界には万能の存在は存在していないと言う事だ。

 現在の魔晶湖の遺跡は美麗な古城風に作り変えられていた。デザイン面は僕よりもファットテール部隊のノーマル部隊がめちゃくちゃこだわった。おかげで素材集めが面倒だったが、それなりの物ができたよ。湖の孤島が円状の孤島だったので、それを活かす形で円形の城壁で囲い、内側には貴族屋敷風の一部三階建ての建物を作ってある。そのデザインが関係して城みたいに見えるんだよね。

 ダンジョン内部に関しては僕がメインで弄った。あの鬱陶しい数の罠は適度に残し、ほぼほぼ解体。使い易い物は場所を変えて再設置してあるけど、一部のどうしようもない物は資材にさせてもらったよ。それから十階層あるのはいいけど、細い一本道だけというのはあまりにも寂しい。なのでダンジョンコアを用い、僕の魔素を有効活用して一気に拡大。今の所は何か施設を造る予定はないが、アダマンタイトの粉末を混ぜ込んだ強度強化岩石レンガを使った巨大施設が完成。最下層にあるドーム状のボス部屋周辺は、既に僕が使うようさせてもらっている。玉座の間風のデザインにしてあるが、玉座の裏側に入口があってそこが新しい僕の部屋。かなり広めに作った。


「ダンジョンをこれ程巨大にしておりますが、維持は大丈夫なのですか?」

「大丈夫。僕の魔力で賄われて余裕すらあるから。ダンジョン内の手入れはとりあえず蟻型ゴーレムに任せるよ。玉座に女王蟻ゴーレムを乗せておけば、女王蟻ゴーレムの覚知範囲をかなり増幅できるし」

「主殿のための玉座ではなく、あのゴーレムのための玉座なのですか」

「いや? 防衛時は僕が座るよ。トラップとかを任意のタイミングで発動できるし、僕の魔力が必要だけど、魔力で兵隊蟻ゴーレムを召喚できるから」

「今更なのですが……。そろそろ蟻型ゴーレム以外のゴーレムも製作されてはどうですか?」

「それは僕も言ってるんだけどね……。レオパード部隊が蟻さんの沼にはまってるんだよね」


 ダンジョンはダンジョンマスターの力量によるところはあるが、ファンタジー的テンプレートの通例通り、ダンジョンコアを壊されると機能が停止してしまう。ただ、この世界のダンジョンコアと僕とでは、命が繋がっているわけではないので、この魔晶湖の遺跡ダンジョンがダンジョンでなくなるだけだ。もちろん、一度作られた器物が霞のように無くなることもない。

 このダンジョンにはないと思うけど、侵入者を撃退するための建築様式をしている。簡単に言うと、蟻の巣のような構造を組み込んだ。かなり入り組んでおり、小部屋に大部屋と部屋数が多いことも魅力だが、分岐が多いのに正解は一本しかないという鬼畜迷路になっている。それから各部屋に百体を基本とした兵隊蟻ゴーレムが各種配備されており、それと合わせて侵入者を隔壁トラップで閉じ込めたりもするなど。考えように至ってはかなり鬼畜な構成のダンジョンだ。罠はかなりシンプルにしたけど、作った僕自身が攻略したいかと問われたらば……。絶対嫌だ。心が折れる。


「兵隊蟻ですか……。いくつか種類があるようですが、これらの戦闘力はどうなのでしょうか?」

「気になる? 正直、お宝とかも配置してないから侵入者なんてないとは思うけど……。ちょっと外の魔物で試してみようか。結構えぐいよ」


 拠点の全体について目を向けている管理者のマサムネとしては気になるのだろう。僕達は20種の兵隊蟻ゴーレムを一体ずつ連れて外に出た。この段階でクズノハさんは一礼し、古文書の解読と転写の作業に帰って行った。彼女は戦闘事は不得手だし、特に興味がないようだしね。彼女は彼女のやることをしてくれたら問題ない。

 兵隊蟻ゴーレムは近接戦闘型10種。遠距離攻撃型5種。支援型5種となる。まず単純な種類として。

 近接戦闘系

 1.ウォーリアーアント

 2.シザーズアント

 3.ハンマーヘッドアント

 4.アサシンアント

 5.ライトアーマーアント

 6.フルアーマーナイトアント

 7.タイラントアント

 8.ジェネラルアント

 9.ファランクスアント

 10.ブレイブアント

 遠距離戦闘系

 1.キャノンアント

 2.バルカンアント

 3.バスターアント

 4.メイジアント

 5.セージアント

 特殊型

 1.バッファーアント

 2.リペアアント

 3.テレパスアント

 4.コマンダーアント

 5.カーゴアント

 名前でなんとなくわかるやつはそれでいいけど、分からないヤツは実際に見せてマサムネを納得させる。近接戦闘型は大軍で突っ込んで行き、やられる事前提の5種。後半に投入し疲弊した敵陣に人だなダメージを与える型番。装甲や段階的に異なる魔力回路によって実現した幅広い戦力となる。

 ウォーリアー、シザーズ、ハンマーヘッドくらいまでは下級の魔物とさしで戦って互角。アサシンとライトアーマーは中級種にも勝てる。ただ、数で圧す戦力なので、基本的に脆くて壊れやすく、個は心もとない。それを覆すのがフルアーマーナイトからの大型種になる。前5種が全長50㎝、体高20㎝程度の大きさに対し、大型種はかなりデカい。特にタイラントは配置場所が限られる10m級。他は平均すると全長1m、体高40㎝と大型ではあるが機動性も考えたサイズ比になっている。

 マサムネは生唾を飲んで固まっていた。そりゃそうだわな。想像したらわかると思うけど、蟻の大軍に纏わりつかれ、疲弊させられたところに物理的にも能力的にも飛躍的に高い戦力を叩きつけられる。大事なことだから二回言うけど、少し考えればわかると思うけど、相当ヤバい。


「近接戦力のみでも並みの戦闘力を持つ程度の存在ではまず生き残れますまい」

「だろうね。わざわざ遺跡や下の居住区を攻撃されなければ出会う事はないだろうけど」

「それに加えて遠距離攻撃手段を持つ個体、魔法的な強化を行う個体、壊れた個体を即座に修復して戦線維持を支える個体。女王蟻ゴーレムと似た能力ではありますが、戦場での行軍を行うコマンダーにそれを的確につなげるテレパス……。わたくしは絶対にここを襲撃することなど考えませんよ」

「ははは……。僕もそう思う。自分で構成した組み合わせを実現したらえげつない事になっちゃってたし」

「おお、ユウゼン殿。こんなところに居たのか」

「ヴィエラさん……。本当に毎日来るようになりましたね」

「仕事はちゃんとしておるぞ?」


 それなら構わんけど……。

 魔晶湖の遺跡ダンジョンはこれから徐々に成長させていく。まずは少しずつ僕の漏出魔力を貯蓄し、ダンジョンコアが余裕をもって遺跡を管理できるようになった頃に、蟻型ゴーレムを創り出していく。魔力だけだと燃費が非常に悪いので、一応必要になる素材は用意してある。製作は超楽しいけど、これが実装されたのちに侵入者が入った時の事は考えたくないね。

 ヴィエラさんも僕の近くにある蟻型ゴーレム用の移動ダクトを見てギョッとしている。蟻型ゴーレムには専用の移動ダクトがあって、数が減っても増援が直ぐに出てくる。終わりのない戦いが始まるのだ。

 ヴィエラさんは虫系魔物が苦手だからね。僕の方に迷わず逃げて来た。その後にこれまで使っていた働き蟻ゴーレムと同じような物だと伝えると一応安心してくれたけど、ダクトから出てくる数に徐々に顔が青くなっていく。


「大丈夫ですよ。ここは僕が管轄しているので」

「お、おう……。それにしてもこんな数の蟻型ゴーレムを何に使う気なんだ?」

「最初は様式美程度の感覚だったんだけど、よくよく考えたら自動で防衛してくれる戦力が居るのは心強いな~ってさ」

「まさかスタンピード対策とか考えてるか?」

「うん。たぶん、南方でいつかは起きるんじゃないかなあって……。タマモさんの縄張りの中を資源調査しているけど、人間族が嗅ぎつけたら面倒なことになりかねないから」

「それは面白くない話だな。しかし、魔物の森という魔境に入って無事な人間族が多数いるとは考えられないが?」


 ヴィエラさんは僕が転生者だと言う事を知って知るので、包み隠さずに教えた。僕以外にも転生している者が確実に存在している。細かい事は個人情報だろうし、僕を転生させた光の神に聞いても教えてくれないだろうけど……。僕以外にも異世界の知識を持った転生者がいることがほぼほぼ確定しているので、僕としては警戒してし過ぎることはないと思う。

 魔物でも人間でも亜人でも様々な個が存在しているのだ。

 全ての知性ある存在が善人であるならば、僕のような人嫌いな者は出ないのかもしれない。転生者が必ず善人とは限らず、人は心変わりするし環境に流されやすい存在だ。対策は打っておくに限る。そして、その数は多ければ多い方がいい。僕はできるだけのったりまったりして居たいとは思うけど、僕は用心深いのだ。……前世のような一人孤独に歩くことはもうないだろう。一緒にいてくれる仲間を必ず僕は守るんだ。

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