11ーまさかの事実と神殿の調査ー
神殿の奥にあったまさかのまさか。竜の形をした巨大ゴーレムが鎮座していた。そのドラゴンゴーレムが破損していたから突破口があり、なんとか旧世代の遺物は葬り去ることはできたが……。そのドラゴンゴーレムは最後の最後にブレス攻撃を放とうとし、不発に終わった。
「あの爆発の中よく生きてたな……。三人共」
「いんやあ、マジでギリギリだったぜええぇ。ミギワが居なかったら俺も旦那も大怪我だったろうなあ」
「ブレス攻撃でしたら危なかったですよ。不発で自爆してくれたから何も問題なく乗り切れましたがね」
僕らがそうやって生の実感に浸っている間、アカメカブトトカゲ特殊部隊や他の隊員がどん詰まりの行き止まりの室内を調べていた。最初に報告を持って来たのは、担当区域が部屋の奥だったアカメ六号。なんでも部屋の奥には固く閉ざされた扉があるそうだ。アカメ六号が何をしても開かなかったので、後から見に来て欲しいと言うことだった。
次に報告を持ち込んだのはアカメ一号。ドラゴンゴーレムの上半身が自爆した爆心地をアカメ三号、アカメ四号の三名で調べ、衝撃の事実が発覚した。なんと、ドラゴンゴーレムが自爆した爆心地の中心が僕ら居住区域にしている洞窟と繋がったのだ。そんなに近い場所に存在していた事も驚きだけど、あの洞窟の岩盤はしっかりと強度を調べた。落盤に巻き込まれた生産班員も居たし、二度目は絶対にあってはならない。まあ、繋がった場所が居住区域や倉庫などのエリアから離れた場所だったことは幸いか。
「繋がったのは入口と最奥を繋いだ中間地点の通路。我々が作成した周辺地図と照らし合わせますと、この小山の丁度中心地点となります。遺跡という点が気にはなりますが、魔物が住み着いていなかった点を考えますと、そのまま居住施設に組み込んでも問題ないかと」
「まあ、遺跡の処遇は詳しく調査を行った後として……。まさかこの小山を縦に貫くように遺跡が作られていたんだね」
「せやな。俺も旦那の案に賛成だあ。確かに魔物は居なかったがあ、あの遺跡は罠が多すぎるんだよお。危なげなくしとくなら罠は全部解除じゃなくて除去が必要だしなあ」
アカメ一号の報告が長かったので、順番待ちができていた。その次は僕が殴ってぶっ壊したドラゴンゴーレムの残骸を調査したアカメ二号と、レオパード部隊のスーパータンジェロ隊員他数名が報告してくれる。
まず、危険性が残っているかをかなり厳しめに調べたアカメ二号からは青信号。自爆したことでバラバラになってしまった上半身、それから僕が殴ってなぎ倒した下半身部分もどちらも完全に機能が停止しているらしい。
次に挙手したのはスーパータンジェロ隊員。彼が調べたのは爆発後の上半身部分に使われている技術大系と、僕らの知識や技術で使えるかどうかの確認だ。残念ながら基幹となる機構のほとんどが爆発により損傷が激しく、再利用は絶望的。技術を学び取ろうにも地球の技術とは根幹から異なるので、今は使えない。ただ、一部は持ち帰って研究してみると言う事だ。
最後に挙手したのはスーパータンジェロ隊員の奥さんで、スーパータンジェロ二号さん。彼女が調べたのは爆発に巻き込まれず、そこそこ綺麗に残っているドラゴンゴーレムの下半身部分。ボディに使われている鉱石も未知の存在、僕らが知っている機構とは全く違う技術の塊だった。言うなれば魔法工学とでも言える物だろう。大気中から魔素を吸入し、それをエネルギーに動く。そして、その心臓部が腹の部分に収められており、巨大な白い球体が明滅している。おそらくこれはまだ機能を停止していないけど、駆動部が断裂したことで緊急停止している状態なのだろう。
「この世界の基本的な技術とも異なるね。僕らが居た地球とも技術が完全に異なるから、要研究案件」
「古代兵器の類。私も興味がある。もしかしたら、これは生活に活用できるかもしれないし、脅威なのは事実。知っておくべき。……もっと大きな爆発に繋げられるかも」
「了解。レオパード部隊はやり過ぎないようにね。事故も怖いから」
「にゃはははは……。善処する」
「爆発は芸術やで?」
「こら……ジェロ子。手綱は俺が握っとくんで」
「うん。よろしく」
レオパード部隊にはそこそこマッドなサイエンティストさんが居るからな。錬金術班は特に気にしてないと怖いレベル。
あと今更だけど、レオパード部隊は全部で九体。雄個体三体と雌個体六体。これは僕が繁殖を視野に彼らを飼育していたからで、各品種に雌雄比2:1。販売とかは考えず継代して飼育したかった気持ちが強い。ブラックナイト班が技術開発班。スーパーマックスノー班と目の前で夫婦漫談してるスーパータンジェロ達は錬金術を中心として様々な製品を作る錬金術班だ。個体により得意不得意はあるようだが、錬金術班はやれることをやれるようにやっていくらしい。
この点はファットテール部隊も同様で、全九体の三班。ノーマル班が土木建築や大工関係。ホワイトアウト班が鍛治や木工など。キャラメル班が農耕牧畜を担当してくれている。いずれも雌雄比2:1だよ。
「にしても…ここは何のためにあるのかねえ」
「それはアカメ六号が調べてきた扉を開ければ分かるんじゃない? ドラゴンゴーレムがここに鎮座してたってことは、アイツはゲートキーパーだったわけだ。よっぽどひねくれてなければこの先には本命の“何か”があるんじゃないかな?」
「これまでのトラップのことを考えっと……。そのひねくれパティーンが有り得そうで怖いぜ」
コラコラ、シズカさん。そうやってフラグを回収するだよ? ……まあ、前提として扉は開かなかったわけだし、入れるとは限らないけどね。
ここでアカメカブトトカゲ特殊部隊を二部隊に分隊。
多分、拠点側で驚いて慌てふためいているだろうマサムネや太陽達への報告にアカメ二号と九号、十号を派遣する。情報伝達は大事だ。残りのメンバーは奥を目指す。トラップに関しては後回し。この遺跡が何のためにあるのかを調べておく必要性は高い。何のためにあんなにたくさんのトラップを敷設した一本道が用意され、何がこの先にあるのか。好奇心もあるけど、危険な代物だったらどっかにやりたいし。
アカメ六号が調べ、開かないと言われた巨大な扉。その扉をもう一度調べ直す。確かに取っ手はあるのに押しても引いても開かない。つーか、こんなにデカい扉を作る意味って……。様式美と言えども無駄じゃろうよ。
「……なあ、扉ってさ。いろんな開き方あるよな? 忍者屋敷とかって、押しても引いても開かないなら引き戸とかよ」
「……引き戸ではなかったね」
「くっ……。逆ならどうだ?」
「逆も開かないね」
「いやいや、どっかにスイッチあんじゃね? 探してみるわ」
アカメ一号とペロ助は大広間の中を探し回り始めた。それに同調するように各員が散らばって大広間中を捜索し始める。ただ、特段何かあるわけでもなさそうで、僕はその様子を見ながらもう一度大扉に視線を向けた。魔力を流してみたり、聖氣も流してみた。導術で体を強化してぶん殴ってみたけど……。めっちゃ硬いな。拳が痛いだけだった。
ふむ……。そう言えば、シズカが引き戸云々って言ってたよな~。
いろいろな扉を想像してみたけど、押戸、引戸、回転扉、観音開き……。エレベーターみたいなスイッチがあるわけでもなく、調査能力が非常に高いアカメ一号でも探しきれてない。……。アイツ、意地になって天上にへばりついてまでスイッチ探してるし。うむ。試してみよう。こんな大きな扉だからそんなことはないと思うけど……。ありえなくはない。ここまで大がかりに探して無いわけだしね。
「ふっ……。むんッ!」
「ふぁっ?! マジでッ?!」
「うん。マジだったみたいだね。普通の人間にはどう頑張っても開閉はできない重さだったけど」
「うおおいぃ! マジかよおお! そんな答えってありかあああ?!」
「うむ……。まさかの持ち上げ扉と言うのは反則であろうて。そもそもこんな巨大な扉が足元から持ち上がると考える者が居ようて…居たな。我らが主殿だが」
うん。僕も希望的観測でしかなかった物が答えだったよね。
気づいた理由は僕の目線の低さ。天井付近まで見上げるような巨大な扉なのだけど、そんな巨大な扉なのにご丁寧に指をかけるような窪みがあったから。まさか本当に開くとは思わなかったけど、開いたからには入ってみようと思う。中に進んで行くと、ここも一本道。僕が前進するのと同時に魔法の灯が光る。その先には巨大な半透明の魔晶石が鎮座しており、そのてっぺんに何か刺さっているようだ。
某伝説の剣をイメージするけど。僕が剣を使おうとは考えないしな~……。剣を使いそうなメンバーはこの中には居ない。大剣を用いる太陽も生体武装の大剣がメインだし、このサイズの剣は使わない。サイズ的には合っているけどマサムネは刀を使う。アカメカブトトカゲ特殊部隊の面々は大ぶりとは言えダガーナイフ。シズカの場合はそもそも使う武器が剣ではなくタバルジン。ミギワとナギサは重量級のメイス。僕はそもそも無手……。レオパード部隊とファットテール部隊、クレステッド隠密部隊も使いそうもない。残るは……ペロ助?
「俺は使わんぜええ……。剣ってガラでもねえしな」
「そうなりますと、優先順位としてご主人様になりますが。どうでしょうか?」
「いや、抜いていいなら抜くけどさ」
消去法で全員が外れるという現象が巻き起こり、僕が巨大な半透明の魔晶石をよじ登って行く。体が小さいから頂上までが長く感じる。階段の一つも用意しろよ……。と、ここを作ったヤツに文句を叩きつけたい気分だ。まあ誰が作ったのかも知らんし、わざわざあの剣を安置するため、ここを作ったわけだから……。何か特殊な剣なんだろう。お宝であるならもらっておく。
魔晶石の効果で一定範囲の魔力が急速に吸収されてしまい、身体強化魔法なんかを使うと今は危ない。今の僕は魔力枯渇直前の状態。そんな状態で自滅するように魔法を使う程アホではないぞ。
やっとこさ剣の目の前までよじ登って来たわけだけども、遠目から見ていたから分からなかった。思ったより剣がデカい。僕の身長は50㎝程。その内成長するだろうけど、今現在は使えんだろうな。まあ、使う使わんは横に置いておこう。置いておいて……。抜こう。
柄に手をかけると、物凄い勢いで魔力を吸われている感覚に襲われる。これは早いところ決着をつけないと魔力欠乏で倒れてしまう。満身の力を込めつつ、聖法術で体を保護しこれ以上の魔力の強奪を阻止。導術を駆使しスタミナ全開で引っこ抜こうと力をさらに込めたタイミングで……。
「あ、アレ? どゆこと?」
「うわあ……。やっちゃった感じかい?」
「そのようだな。あの神々しい気配のある剣は何か特別な物だとは思うが……」
「まさか砕くとはなあ……」
剣が砕けちゃった……。てへぺろ……。折れたんじゃない。砕けちゃったんだよ。それこそ木っ端みじんに。
それにこの様子だとあのけたたましい警鐘のような音と警告の声は、僕以外には聞こえていなかったのだろうか? 僕の耳には『資格を所持しない者が聖剣を引き抜こうとしている』。『即刻、剣から手を放し離れろ』。『離れなければどうなるかわからないぞ』。…というような感じの警告が聞こえていた。だんだんと口汚くなり、かなり必死に制止して来た挙句、最後は罵倒に近く口汚くまくし立てて来たんだけど……。逆に腹が立って本気を出しちゃったんだよね。その結果、剣の芯に亀裂が入り、中心に嵌っていた大きな宝石を残して砕け散ってしまった。
『ぱんぱかぱーん! おめでとーう! 転生しても波瀾万丈な生を楽しんでいるようだね。お久しぶり。光の神だよ』
「うん。結構久しぶりだね。……というか、なんか楽しそうだけど、どうかしたの?」
『君に一つ良い報せがある。君の行動のおかげで僕がそっちの世界に干渉する足掛かりになったよ。これまで以上に守ってあげられるんだ。そのお祝いに……その剣だった物をリメイクしてあげようじゃないか』
光の神からの交信は僕にしか聞こえていないらしい。それから僕のこの行動に関して、何か含みのある嘲笑を混ぜ込みつつ、事の顛末を教えてくれる。なんでも僕の運命?を歪めていた存在は、僕を利用してこの世界の主導権を手中に収めるつもりでいたらしい。……いや、僕一人の力ごときで世界を手中にとかそうとうアホだろ。存在を利用するにも転生直ぐの赤ん坊だぞ?
その存在は僕を尖兵として使おうとしていたらしいが、まさかその手駒として使おうとしていた存在にリーサルウェポンを砕かれた。……まさにざまあ!
ただ、残念ながら、この世界を乗っ取ろうとしている勢力は複数あるという。全てが僕を利用しようとしていたわけではないらしいけど、僕を利用しようとしている連中はまだそこそこいるそうだ。その内の一つが今潰れたので、光の神がそこに無理やり干渉力をねじ込み、僕やこの世界に転生や転移している地球人を護ろうとしてくれるそうだ。
……でも別に剣は必要ないんだけど、光の神としては僕に持って居て欲しいと言うことだ。




