「捜し物はユナですか?」⑦
「先輩ィーー!!前!前ぇ!!」
「もぉーーー、次はなんだよ!シリアスシーンになる所だぞ、こっちは!」
護朗とおじさんが振り向くと、車の前面には今にも巨大な爪が襲いかかろうとしていた。
「げぇっ!?テケテケ!?追い払ったはずじゃ……!?」
「ブレーキ!ブレーキ!!」
「間に合わないっす!!」
「「「ウワァァァァァァァーーー!!!!!」」」
巨大な爪が時速60キロで突っ込んできたハイエースを受け止め、ブレーキ代わりになる。しばらく進んだ後、完全に車は停止した。おじさん2人はシートベルトを外すと、すぐに車から逃げ出す。
「とんずらするぞ!命あっての物種だ!」
「へいっ!」
「いたたた………」
幸い、護朗は大きな怪我はなかったが、止められた時の揺れで足場に転がり落ちていた。
「回り込むなんて予想外だったよ……。こんな大きな車を止められるあの爪…恐ろしいな。ユナさんのスキルみたいだ。…………あれ?」
ちょっと待てよ?ビーストクラス並のスピード?蛇みたいな三白眼……後方への大ジャンプは何だかデジャブを感じる……そして、何より車を受け止めるほどの巨大な『爪』。
「………………」
これ以上考えるまでもなかった。
「「うわぁあ!!!テケテケ様ぁ!命だけはー!!」」
「僕の予想通りなんだろうなぁ……」
車を出た護朗は尻餅ついて後ずさるおじさん2人とじわりじわりと『爪』を向けて追い詰めるユナの姿を確認する。
入学式にトリプルテールだった髪は括ることなくストレートロングになっており、服は赤いジャージに青いショートパンツ、そして黒いタイツを履いていた。どうりで足が暗闇に紛れて見えなかったわけだ。
目は怒りと殺気に満ち溢れており、黒真珠のようないつもの丸い瞳ではなく、白亜戦の時に見せた蛙をも目で殺せる鋭い三白眼だった。




