「捜し物はユナですか?」⑥
「馬鹿言え!猫1匹でどうするつもりだ!」
「運転手のおじさんは速度を少し緩めてください。おじさんは僕の合図で車のドアを開けてください。そしたら……」
「そしたら?」
「アキを頭の上に乗せたまま顔を出して、アキの可愛さでテケテケを油断させます!」
「「バカかっ!!!」」
「相手が本物のテケテケならまだしも、五核使いなら僕らと同じ人間……可能性は低いかもしれないけど、効くかもしれません!相手が油断したところを僕がテケテケに飛びかかって囮になります!そのうちに逃げてください!」
猫の可愛さで惑わす馬鹿な作戦と思ったら、それ以上に命懸けな作戦におじさんは真剣な顔で護朗の身を案じる。
「おめえ……いくら五核使いでもそいつは危ねぇ作戦だ!死ぬぞ!」
「仮にもビーストクラスが発現したんです、身体能力は上がっている…………はずです。道路に転げ落ちても僕は死なないと思います。それより僕が囮になる瞬間、アキをあなたに投げますから、アキのことよろしくお願いします!」
護朗は考えを譲らなかった。おじさん2人は涙を拭いて、護朗の作戦に乗る。
「分かった、お前の勇気に乗ったぜ!おい、減速だ!」
「了解っす!先輩!」
車を徐々に減速させていき、車の内鍵を開ける。
「今は時速60キロ……開けた拍子に落ちるんじゃねぇぞ!」
「分かってます……!アキ、しっかり捕まっててね……」
「にゃお〜!」
アキは返事をするとがっちりと爪を食い込ませて頭の上に乗った。ちょっと痛いが、護朗は我慢して作戦開始の時を待つ。
……きっとこれからも、こんな形で自分だけで戦わなきゃいけないことが続くだろう。一瞬だけ、“ここにユナさんがいれば……”という想いがよぎった。しかし、ユナがいない今、自分が勇気を振り絞るしかなかった。これからの為にもここで引くことは許されない。
「強くなくたってやれることはやる……でも、ここで死んだらユナさんに謝れない。そんなのは……嫌だ……!絶対に生き延びる!」
「ドアを開けるぞ!」
「はい!」
おじさんが扉を開けた瞬間、アキと共に外へ体を乗り出す。すると、女性と目が合った。しかも鼻がくっつくかと思うぐらいの距離で。例のテケテケだ。
「うわぁああ!?」
「……っ!?」
護朗がビビって叫ぶと同時に女性は護朗の頭の上のアキの存在に気づくと間髪入れず後ろへ大ジャンプし、退散した。
「…………へ……?」
目をぱちくりする護朗。あんなにしつこくハイエースを追いかけていたテケテケはアキを見ただけで逃げたのである。
「「やったぁーーーー!!!」」
おじさん2人は喜び合う。護朗をすぐに車内に戻すと肩を組んで喜びを分かち合った。
「やるじゃねぇか!きっとお前の度胸にビビってテケテケの野郎逃げちまったんだ!」
「そ、そうなのかな……それなら良かった……。」
何はともあれ、めでたしめでたしである。
それにしても……あの蛇みたいな瞳、どこかで見たことあるような……
「……で、それはそれとして。」
「へ?」
おじさんは気持ちを切り替えて、護朗に再び悪い顔を見せる。
「ジョーカー!貴様は俺達の会社の為に働いてもらうぜぇー!!」
「ですよねーーーー!!」
再び誘拐のピンチが護朗を襲う!




