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夜なのか。


視界不良の中、俺は手探りで何かを探す。何なのかはわからないが、とても大切なもの。そして軽く扱ってはいけないもの。


そして、失ってはいけないもの。



「……ぇ……ょぶ……じょうぶ……大丈夫?」


「はっ!!!」


そんな暗黒の道に松明が現れた。まだ暗く、一歩手前も照らせない、萎れた炎だ。しかしそんな火に俺は惹かれ掴んだ。彼女には何かを持っているような気がした。


「だ、だ…れ?」


「それは私のセリフなんだけど?」


ようやく視界が点滅から逃れ、状況を把握することを可能とした。そして俺が今手を握っている彼女は一体誰なのであろう。ヤハーナさんではない。ここまで歳は若くないからだ。そんなことを言ったら消されるが。


俺の目の前に膝をついてこちらを見下ろすようにしていたのは幼げな少女だった。服は見窄らしくところどころが解れて、破れている。そんな容姿も気にせず、泥に汚れたピンクの髪の毛を持った少女は俺と手を合わせていた。


「ぼ、ぼくは、てるまっど!君は?!」


慌てふためき、いかにも少年を思わせる言動。練習した甲斐があったかもしれない。


「うん?私?…私はウィンターよ。……で、手離してくれない?」


彼女は見た目に似合わず流暢な言葉を話した。

そしてウィンターと名乗る少女は俺たちが合わさっている手を見て、離せと要求する。


「あ、ああ。うん、ごめんね。」


「いいのよ。あと、なんであなたここに来たかわかる?」


俺が素直に謝り、ゆっくりとその手を離す。暖かかった両手が不意に冷たくなる。

それでもウィンターは正座して質問する。


その質問に俺は答えることができない。ここはどこ?村にはこんなところがなかったし、俺がここに何故いるのかもわからない。


そういえば最後にヤハーナさんの叫び声が……


「ヤハーナさん!?」


「っ?!……びっくりしたわね。驚かさないでよ。」


ウィンターが驚いたように俺から体を遠ざける。


「あ、あの、もう1人ここに来てませんか?」


「来てないわよ。この檻に来た時のあなたは1人だけだったわ。」


ウィンターはそれが?とクエスチョンマークを掲げて表情に俺に応答の意を込める。

しかし、そんなことは全く気にならなかった。何故こんなところに入っているのかわからないし、目の前にいる子を信用できるかといえばそれもない。


周りを観察する。この薄暗い部屋は独房のように狭く、照明はない。

薄っすらと外から月明かりが差し込みウィンターの右半分の顔を照らす。とても可愛い顔立ちで、日本に入れば芸能界入り確定だ。


右手を見るとそれは彼女が言った通り、檻だった。何本もの鉄格子が俺の行く手を塞ぎ、監獄のように圧迫感を放っている。しかし壊せないわけではない。


「ここが何かわからないけど先に僕はここでる。じゃあね、ウィンター。」


彼女に別れを告げ、立ち上がる。そして魔力の流れを感じ、雷属性魔法『激雷の(エクスカリバー)』を展開する。周囲に放つ電圧で、暗かった部屋が一気に煌々と光を浴びた。


それを鉄格子に向かって精一杯の力で振り切る。


正確には振り切ろうとした。

なぜなら振る寸前で背後から俺の服を摘み、ぐいぐい引っ張るウィンターがいたからだ。


「危ないよ?離れてないと一緒に切れちゃう。」


俺は忠告するが一向に彼女は動く気配がない。

それならと切る角度を変えて再び剣を下ろそうとする。


その時だった。


「私も連れてって」


小さなその手は微かに震え、その声も同じく震えていた。目には涙を溜め、髪の色と同じく桃色の眼球が電光と涙を反射により輝いている。


《何かの決意》


そんな何かを彼女から感じ取った俺は立ち上がったウィンターの目を見る。俺より少し身長は大きい。だがあまり年は離れていないはずだ。綺麗な目をしている。あの時の母のような…


「わかった。それじゃあ、少し離れてい……」


最後まで放てなかった言葉に俺は体を倒しながら疑問を抱いた。地面に接吻する頃には俺の意識が再び暗黒へと戻っていった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「おはよう、テルマッド。」


「ん、おお、おはよう、ウィンター。」


朝の日差しは俺の体をふんだんに照らし続けた。ポカポカとした太陽の匂いで俺は目を覚ます。目の前にはウィンターがいて、昨日の涙がなんだ。と言わせるような顔でこちらを見ている。


「もうすぐ朝食よ。しっかり食べないと死んじゃうから。」


そう彼女が述べると何処かの扉が開き、黒のマントを身体中に巻いた何かがこちらへ歩いてきた。

俺はそいつに危機を感じ魔力を練る。いつでも魔法が展開できるように手を広げ魔力を集中させる。


「物騒な手は下ろせ。朝食だ。しっかり食べろ。あとで呼びに来る。」


そう言って軽い食事が男からこちらへ渡される。その時使ったのは小さな鉄格子の隙間だ。それを利用し、食事を中へ入れるらしい。その隙間は俺やウィンターでさえも出れそうにない。


再び扉を開ける音が聞こえ、ここはまた静かな空間へと変わる。


「さ、朝食を食べるわよ。」


沈黙を破ったのはウィンターだった。


「ね、あの人誰?あとで呼びに来るって何されるの?」


「食べながら話してあげるわ。」


食事を早く取りたいのか俺を少し黙らせる。

その朝食はパンの上に鶏肉を乗せたものだった。


「ね、あの人は?」


「わかんないわ。でもあの人がいつも朝食を持ってくる。」


口のものをすべて飲み込むと彼女はまた喋り始める。


「これからするのは太陽の儀式。私達は生贄。魔力を連中に収めるの。ボケた話よ。でもそれで何人もが死んだわ。」


彼女の目は暗く曇った。すべてに諦めをつけた目。その目を俺はどこかで見たことがあった。小さい頃の話だったからあまり覚えていないし、喋りたくもない過去だ。


しかし昔とは違う。体は小さくなれども彼女を助けることはできる。だが、まだだ。陽が出ているうちは目立つ。彼女の話から察するに太陽の儀式とやらは一度で死ぬことはないはず。様子を見て、今晩脱出しよう。


「私もここから出ようと捕まった時は四苦八苦したわ。でもね、魔力を捧げるたびに疲労が私を襲うの。これまでしてきた鍛冶業なんて屁と思うぐらいにね。」


この少女はすでに頭までイッてしまったのか。この歳で鍛冶業?そんなはずがない。第一そんな特殊な子供は俺だけで十分だ。


しかし何かがあるはずがして、しかたない。この少女には。



♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢



ウィンター・リャヌバ Lv.173


ステータス : 鑑定不可


職業 : 鍛冶職人


所持スキル・所持魔法・称号 : 鑑定不可



♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢



俺はその画面を閉じて唖然とした。

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