再会
クラスには必ずしも、嫌われ者、人気者が出てくる。
嫌われ者以外はきっと思わないだろう。
自分の存在が、誰かを苦しめるということを。
突然、家に電話がかかってきた。
わたしの名前は、川原湖乃実。
電話の内容は、
3年前、高校2年生のときにクラスが一緒だった子が失踪したという内容だ。
その人のことを、わたしは知らなかった。
毎日、一緒の教室で、同じ空気を吸って、過ごしていたのに。
「もしもし....葵?」
高校生時代、親友だった葵からの電話だった。
(実はね、1ヶ月前から冬月瑛花が失踪したんだって)
「え..?」
わたしは、その電話の声に何も言い返せなかった。
その子のこと、何も知らないから。
(それでね、そのときのクラスの人全員で一回集まることになってさ)
「う、うん...」
(瑚乃実も来てくれるよね...?)
それで、わたしは来週の日曜日に、会食付きの会場に行く約束をしたのだった。
それからというもの、冬月瑛花がどんな人だったのかを毎日思い出そうと必死だった。
思い出せない。
彼女が、どんな人だったのかが。
日曜日
電話をかけてきた親友の葵と待ち合わせをして、二人で会場に向かった。
葵も彼女がどんな人だったのか、あまり知らないと言っている。
「瑛花ってさ、クラスでも目立たない存在だったから、あたしも分かんない」
「わたしも」
瑛花という彼女、確か中央委員会に所属していた。
中央委員会は、クラスの気づかない部分に気づけるような人がなる仕事ばかり。
わたしたちの知らない間に、クラスを支えていたのだ。
「実は~1年生のころに女子のハートを鷲掴みした水嶋先輩!湖乃実は覚えてる?」
「うん、中央委員会の委員長やってた人..だよね?」
クラスの女子がメロメロになるほど、イケメンと言うが、
わたしは、一度もときめいたりしない。
自分のためになる、それがわたしの人生で一番大切なことだと思ったから。
彼はわたしのためになんかならない。
わたし自体が冷めてる、なんて言われることも少なくはない。
「どうして、わざわざ大きな会場にしたの?会食まで、用意しちゃって..」
「インターネットつなげて、大きな画面で瑛花の過去を話せるのは、その会場しかなかったの」
いつの間にか、会場の目の前まで来ていた。
階段を上って、4階のホール会場のロビーに着いた。
やはり、誰もいない。
ロビーのいすに腰掛けようとしていると、一気にクラスのメンバーが集まった。
「久しぶり」
「久しぶり」
男子も女子も、19歳なのに子供の顔つきに戻っている。
わたしが目線を変えると、そこには楢澤がいた。
楢澤祈、高校1年生のころ同じクラスだったが、女子にモテていたため、
クラスメイトというよりは、存在がすごく遠かった男子だ。
わたしの隣に、葵が静かに近づいてきた。
「楢澤くんさ、卒業してから、一度も付き合ってないらしいよー?」
「..それが?」
「あーもう!ホント、湖乃実って何考えてるのかさっぱり」
両手をひょいと肩のところまで挙げて、頭を傾けたまま、別の女子のほうへ行った。
わたしは、プライベートと学校の区別ははっきりさせたい。
プライベートのわたしを見られたのは、確か1年半前。
家の近くの雑貨ショップで可愛い小物を見つけたとき、さがし求めていたものだったため、
ものすごくテンションが上がっていた。
視線を感じて、窓を見ると、そこには楢澤がいた。
「変わってないみたいだな..川原」
「そっちこそ」
お互い変わらないのは事実。
卒業してから何年か経ったが、毎日同じで、大きな出来事が何一つない状態だった。
こうして、また再開したのも、瑛花のおかげだ。
「今、何やってるの?楢澤は」
「大学に行って、授業終わったら、いつも大学の屋上で寝てる」
楢澤は、気さくなのだが、やはり男子だ。
授業中に、ノートに黒板の字を写してるかと思いきや、寝ていたり。
音楽の時間に大きな口で歌っているかと思ったら、口パクだったり。
「そうなんだ..」
「川原は?今、何やってるの?」
「えっと..」
「あ!」
突然大きな声を出した。
「え?」
「また雑貨ショップ行って、ニヤニヤしてるんだろ!」
「してないし。それに、楢澤に言われる筋合いはないから」
わたしだけは、どの男子でも女子でも差別なしに話しているはずだった。
けれど、瑛花だけは何の記憶もない。
彼女の失踪が、わたしたちの何かを動き始めているのにだけは、少しだけ気づいていた。
何かが..変わり始めていることに。




