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相笠さんは金縛りくんにイタズラしたい  作者: おりみみ


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第6話 お食事タイム到来です 前編

「あ、カップルのご登場ですぅ」


 と教室に入った時に増野さんに言われるのも最近はテンプレになっています。もうムカムカすることも無くなりましたが、昨日の増野さんの件は別。増野さんの頭を手で鷲掴みして低い声で言ってのけます。


「今日のお昼の食堂パンは抜きです」

「ふええ!? パン食べれなかったら私は何を食べればいいんですかあ」

「愛ちゃんそれは可哀想すぎるぜ、せめてよく余ってるパサパサのメロンパンでも」

「それはそれでですぅ」


 モールス信号で告白誘導させた罰ですよ、それともわさび入りの方が良かったでしょうか。あとメロンパンは揚げパンより価格が高いので絶対嫌です。


「そこら辺の草でもムシャってください」

「大学内に草なんて生えてませんよぉ」

「どうでしょう、ほらあれを見てください」


 私は増野さんの頭をくいっとズラして視線を変えさせます。そこの視線の先には。


「付近に腹筋迫って復帰不可思議ッ!」

「はいはいおもしろいねー」

「すっごおーい」

「そうか? ハハッーそこまで言われちゃあもう一発」

「「そこまで言ってない」」


 教室のホワイトボード付近の三人ガールズ。あの空間だけ特殊な草がたくさん生えてるじゃありませんか!


「面白くないので草なんて生えませんよぉ」

「一周まわって草が生えるんです」

「周っても枯れ草が限界ですぅ」


 あの謎の韻を踏んでるのかダジャレなのか意味不明怪文を振りまく及川さんじゃダメでしたか。


「ではあれならどうでしょう」

「もういいですよぉ」


 私は増野さんの頭を再度くいっとズラして視線を変えさせます。そこの視線の先には。


「はい、今日のパクチーですよ!」

「お、おおサンキュー亀石(かめいし)……い、頂きます」

「うッうめえ……涙が出るほどうめえよ」

「へへっ美味しいですよねパクチー、僕は死んだら棺にパクチーをいっぱいにして火葬されるのが夢なんですよ~」


 教室の窓側付近の三人ボーイズ。あの空間だけ特殊な草があるじゃありませんか!


「あれは大学に草を持ち込む変人なだけですぅ」

「ほら手提げバックからいっぱい草が生えてますよ」

「物理的にですぅ」


 あの棺とか物騒なことを言ってるパクチー美少年亀石さんじゃダメでしたか。あ、そんな美少年がキラキラした笑顔でこっちに向かって来ます。


「目が合いましたね」

「ひいいいぃ! 何ですか対戦ですか!?」

「皆さんにもパクチーをお裾分けです」


 増野さんビジョンだと、亀石さんが目を赤く光らせたエフェクトで来たように映ってることでしょう。さあ草を食すのです。


(そう)くん俺は朝ごはんをたらふく食べたのでパクチーはいらないよ。いやー残念無念」

「わわ私もお腹ぽんぽんなんですぅ」

「そうですか……なら仕方ないです」


 その残念そうな顔が今朝の蓮の顔が重なってしまい、思わず。


「じゃあ私は少し貰います」

「うええ!? 相笠さん食べるんですか!?」

「えへへ~どうぞ~」


 顔を明るくさせた亀石さんから渡された、パクチーを口に入れてパクリ。分かってはいましたが独特な風味ですね。


「愛ちゃんどう?」

「一周まわってこの不味さが美味しいです」

「私は何周しても食べませんよぉ」


 私はもう一枚パクチーを口に咥えて蓮の両手を掴み接近。顔を私より背の高い蓮に合わせるように上を向き。


「ん」

「え、どゆこと」

「パクチーを半分こしましょう、少しくらいは食べれるでしょう?」

「……愛ちゃんの咥えてるそのパクチーを?」

「早くしないと食べちゃいますよ~」

「わわわわ! 相笠さんいけませんよぉ!」


 顔を赤くする蓮はあたふたしていて面白いですね。覚悟を決した蓮は、蓮の両手を掴み離さない私に口を寄せ───


「講義始めるぞー」

「あ~残念でしたね蓮、時間切れですよ」


 パクチーを口の中に引っ込ませ食べ切った私は何事も無かったように椅子に座ります。ここまで計算通りです、日頃の仕返しは金縛り中だけでは留まらないのですよ。

 隣に座る蓮が、まだ気持ちの整理がついてなさそうな表情で話しかけてきます。


「……なんか珍しいじゃん、積極的な愛ちゃんも悪くないけど心臓バクバクだわ」

「腹筋と付き合った私は機嫌がいいだけです」


 顔が予定より近くまで来た時はどうなるかと思いましたけどね。その所為で私も多少心臓バクバクしているのですよ?

 講義が始まってからの金縛り空走距離ならぬ空走時間二十分間で、この心臓の仕返しを練ってやります。さあ今日は何をしましょうかね……


「ぅ……なんかもう眠気が……」

「え、ちょっと蓮まさかですか?」

「いつも通り頼んます……」


 講義が始まって一分もせずに、蓮は長机に顔を突っ伏した。

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