第5話 モーニングタイム到来です
冬の冷える朝方、私と蓮はいつも通り待ち合わせして大学登校中です。
ただ一ついつも通りではないことがあります。
「腹筋と別れて俺と付き合いません?」
「嫌です、蓮の腹筋と別れません離しません」
そう、昨日の講義中に私と蓮が金縛りに合いながら、モールス信号で蓮の腹筋に告白した私は、(強引に)腹筋と付き合うことになりました。
この事を妹に自慢気に話したら。
「意味わからん、もう一回言って」
と言われ説明すること三回。
結局理解出来なかった妹は、私が振られたショックで腹筋と付き合っている妄想に駆られているのではと解釈してました。
私の横で歩く寒そうな蓮は、ネックウォーマーから覗かせる口を開く。
「何で俺の腹筋にBSSを抱かないといけないんだ……」
「蓮は僕じゃなくて俺だから、俺が先に好きだったのにですよ」
私は凍えた手をハーハーしながら温めます。
白い息がふわっとする感じが冬感あって私は好きです。
「手寒そうだね、ほら」
わざわざ手袋を外した蓮が、私の赤くなった手を気にかけ手を繋いでくれるみたいです。
しかし残念ですね蓮、私は腹筋と付き合っているんです。
「私は腹筋と手を繋ぐのでいらないです」
「腹筋に手は生えてないけど?」
「……」
私は嫌がる蓮を無視して、冷たい右手を蓮のお腹に突っ込み。
「ツベタッ!」
「ヘッ朝からいい表情を見れました」
蓮の腹筋に私のキンキンに冷えた右手の平をくっつけます。
はあ、腹筋がポカポカでぬくい……毎日これが出来ると思うとニヤけが止まりません。
少し寂しく手袋を戻そうとする蓮に、私はちょっと待ってくださいと止めに入ります。
「どうした愛ちゃん? 俺の片方の手袋付ける?」
「……せっかくなので空いてる左手を温めてください」
と言いながら左手を蓮に突きつけます。これは蓮が可哀想だと思っただけです。
腹筋を触りながら蓮と手を繋ぐ欲張りセットをしたいだなんて、これっぽっちも思っていませんから。
「腹筋君の浮気にならないの?」
「腹筋が、ユルシマスーって言ってます」
「はははっなんだそれ」
目を線にして笑う蓮が私の手を握ろうとしますが。
「これなんか握りにくいな、愛ちゃんの右手が意外と邪魔で……」
「……もう一度アレが出来ますね蓮、盛大に喜ぶと良いですよ」
温かくなった右手を外に出し、私史上最低体温と化した左手を蓮の腹筋にピタッとくっつけます。
ツベタッの反応を楽しみながら、お互いの右手を繋いで両手ポカポカの私達は大学へ通ずる道を歩きます。




