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殺し屋JK、ターゲットは父親でした。  作者: 椿原菜湖
殺し屋JK、ターゲットは父親でした。大磯編
81/92

73五里霧中は敵を誘う

望みの可能性はほぼゼロに等しい。

だが行動するしかない。それが俺たち殺し屋という複雑な職業だ。

「いい返信が来れば勝ち」

来なければ俺たちでどうにかするしかない。今はその方向性で動いていこう。アルチュールにもこの案件は相談済みだ。

「うっし!」

一見白川家のことのようだけに思えるが、実は他にも大量の依頼が届いている。極力簡単な依頼は部下たちに任せて、優先順位が高いものから片付けていこう。今まで3人でやってたことを1人でこなさなくてはいけない。ロルバンは死亡。セレナは意識不明。もうどうしたものか。

ki殺し屋はいまが一番弱くて脆い。助け合える仲間もいなけりゃ、求める相手もいない。こちらから歩み寄らなくてはいけないことは分かってる。でもいまはそれどころじゃなくて。目の前の仕事で手一杯。

もう何日も寝てない。目の下にはくまがたんまり出来ていた。

「あぁ...もう!」

情けない。仕事をこなせない自分がクズみたいだ。他の部署の人間は各自やることがある。

「やらきゃ」

机を叩いた振動で何枚か資料が落ちた。一度立ち上がり、大きく背伸びをした。気分を切り替えていつもの仮面被りな自分に戻ろう。


トントントン


再び席につき仕事を始めようとしたとき、部屋の扉がたたかれた。こんなときに来客?誰だ。

「ほーい」

「.....おー!ニクラス見ろよ!あいつの言ってたことは本当だったぞ!」

「うぅ...あぁ.....」

「えっ———?」

そこには、元ラビットアサシン幹部、ヨナスとニクラスがいた。

ヨナスがニクラスの腕を引っ張り部屋に入れようとした。

「おい、お前らなんで」

「おぉ!コア久しぶり!」

ヨナスは弾けた笑顔を浮かべて机の上に座ってきた。続いてニクラスも部屋に入ってきた。部屋の床が軋む音がした。

「.....」

「なんか暗くなーい?」

いや、だって。

まさかこの2人がここに来るなんて、思ってなかったから。久しぶりすぎて、随分前には顔も見慣れたはずなのに、初めて会ったような気分になった。

「よく、ここが分かったな」

「うん。実は、ある人から連絡があってな」

「ある人?」

「このボイスメッセージ聞けよ」

ヨナスはスマホの画面を見せてきた。


『おいヨナス。理由は伏せておく。時間があるときにコアの元に行ってやってくれ』


この声って.....

「お前らが大好きなアルチュールだよ。なんかよくわかんねぇけど、来てやったぞ。何か役に立ったか?」

なんで、なんでいつもお前はそうなんだ。俺の中身全部把握してんのか?

「あぁ...お前らをいま、必要としていた———!」

「てめぇ泣いてんのかぁ!?子供かよ!」

「黙ってろよな。ニクラスも、来てくれて本当にありがとう」

ヨナスの真横に立っていたニクラスにもハグをした。

相変わらずまともな返事はないけど。手の感じでなんとなく前と変わらないな、って分かる。

「なんかあったのか?」

「.....荷が、重くて」

するとニクラスが大きな声で言った。

「手伝...うぅ!」

「ははっ」

なぜ敵だった相手がこんなにも頼もしく見えるのか。その答えはもうすでに出ていた。


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