89あの日の裏側
コンコンコン
「大丈夫だったか?」
先ほどの部屋から少し歩き、ヨナスとニクラスがいる部屋に着いた。本棚の裏に2人を隠していた。もうすでに2人は中から出ていた。
「そこのコーヒーメーカーで勝手に作っちゃったぁ」「はいはいどーぞ」
俺は自分の椅子に座った。そしていつものようにパソコンを開いた。
「それで、クララと保険金が関係してるって、どういうことだ?」
「クララ、というか、白川家が関係しているかもしれない」
「白川家?」
「あぁ。話は、お前らが白川家に侵入した時に遡るんだが———」
『もう刑事はいないな?』
『あぁ....うぅ』
『よし、いくぞ』
俺はニクラスと一緒に裏口から敷地内に入った。裏庭には大きな木が2本と、花壇に花が植えられていた。
『庭は......特に大丈夫だな』
一周辺りを見回して違和感がないか探した。
『失礼しま〜す』
ここでは先日、何者かの侵入事件が起きた場所。そして、何人もの刑事が死んだ。
俺たちはつま先を立てて歩いた。
『うわぁ....』
入った途端に血の匂いがした。辺りを見回す限り、床には証拠となる死体の枠線が引かれていた。
『殺人現場だな』
『血が.....いっぱいだ』
ニクラスはもの珍しく枠線を見つめた。
『先行ってるぞ』
俺はニクラスを置いて2階に続く階段を登った。
ここにも、1人の刑事の枠線があった。
ガチャ
『おっと〜』
ある部屋の中に入ると、荒らされた形跡があった。
ほとんどの棚の引き出しは開けられており、大量の資料が散らばっていた。
『こりゃあ探すの大変だぞ.....』
俺は腰を下ろして1つ1つ棚の中を確認した。
まず最初に見つけたのは、”白川家 食事管理表”と表紙に書かれたもの。
これは大して重要じゃないが、念のために持って帰ろう。
次だ次。
『おっこれは?』
次に見つけたのは、”各メンバーの詳細記録”だった。ファイルをペラペラとめくり、中身を確認してみると、ナハトやフーリン、勝地に関する個人情報が書かれていた。
『必要だな』
これは重要だ。
次は....
『白川悠仁 仕事記録?』
中を開けて見ると、月ごとに行った仕事が記載されていた。
2010.5.4 法律事務所訪問
2010.5.8 幹事部での報告会
2010.5.11 博覧会人事部と飲み会
仕事の記録、というよりも、悠仁に関する行動範囲の記録だった。
これまた重要じゃなさそうだな.....
『ん?練馬区内の保険会社から現金を下ろす?』
ひとつだけ、気になる文面を見つけた。
白川家はもともと地主で、金には困っていない。なぜわざわざ練馬まで行き金を下ろす必要がある?家にいくらでも貯金はある。
『却下.....じゃないな』
俺は資料をカバンの中にしまった。
行動範囲の裏面に、詳細が書かれていた。
日記?のようだった。
『白川くんには、随分と昔から世話になっている。このまま関係を切るわけにはいかない。俺には君が必要で、君には俺が必要なんだ———鬼嶽より』
鬼嶽?
初めて聞く名前だった。
「それって.....」
「おそらく、てか絶対、練馬統合のことだろうな」
「鬼嶽ってやつ、練馬統合のトップの人間だ。鬼嶽からって、なんで白川家宛てに手紙を書いてるんだ」
パソコンの字数は、増える一方だった。




