Lo191.孤児院の孤児たちと仲良くダンジョンアタックです!
ここはエールちゃんが作った孤児院です。
身寄りのない子供たちがここに集まっています。
孤児になった理由は様々ですが、魔王が出現してから各地で魔物が活発化してることから、こういう子達もたくさん出てきてしまうのでしょう。
孤児たちの種族はさまざまです。人間だけでなく、獣人やドワーフ、エルフもいます。ここではドワーフ結構多めですね。そういえばドワーフの国(ドゥ・イルツ鉄鋼国)は魔王によって滅ぼされたと聞きました。そのせいもあるんでしょう。
この子たちはこの人間至上主義の国では奴隷扱いがデフォルトっぽいのです。
エールちゃんはそういう子達を保護しています。本人曰く、シャイナスさんの真似事らしいのですが、それでも立派だと思います。
「チーちゃんって言うんだー」
「かわいいー」
「しっぽさわらせて!」
私は今、少年少女たちに囲まれています。
なんだここは。幼女の楽園ですか?(普通に男子もいる
何十人もの子供たちがわらわら集まり、私をぶしつけに撫で繰り回します。
ちょっと乱暴なところも子供っぽくて良いですね。
「いくつなの? 5歳?」
「3歳じゃない? かわいいね」
「おててちっちゃい!」
「その人28歳ですよ。子供なのは見た目だけです」
「なんでバラすんですか!?」
私が子供たちと戯れてると、エールちゃんに年齢をバラされました。ちくしょう!
あ、でもドン引きせずになでなでをし続けてくれます。わぁい。子供だから話聞いてないだけなのかもしれませんけど、子供扱い続行です! やったー!
「それでは今日はグループに分かれてダンジョンアタックをします。1組は30階層、2組は20階層からスタートです。まだ初心者の多い3組は1階層からです。それぞれ引率がつきますので、指示には従ってください」
「はーい」「はーい」「わーい」「たのしみー」「えいえいむん」
エールちゃんは遠足に行くノリで【聖湖の迷宮】に子供たちをダンジョンアタックさせました。
私はエールちゃんに聞きます。
「うん、これ普通にやってますけど……結構スパルタじゃないですか? 3組の子なんて2、3歳児が混じってますよ?」
「以前語りましたよね。シャイナス様の孤児院が襲撃されて皆死んでしまったことを。私は学びました。何故あのとき……悲劇が起こってしまったのかを」
「はい……」
「つまり、みんなが騎士より強くなればいいのです」
まさかの脳筋解決法!?
大人は子供を守るとかそういうのじゃないんですね!?
「私は10歳です。大人じゃありません。でも強いから自分の身だけは守れます。この子達もそうなるべきです」
「まぁそうなのかもしれませんが、エールちゃん基準で考えても……」
「とりあえず、70階層までは行って欲しいですね。そこまで行けば神聖騎士ごときには負けません」
「ハードルが高すぎませんか!?」
忘れてはいけませんが、【聖湖の迷宮】は50階層からAランク冒険者レベルの難易度になります。
つまり孤児たちにナチュラルにAランク冒険者以上の強さを要求しているわけです。
こちらが階層別難易度早見表となります。
1階層~:G、Fランク
10階層~:Eランク以上
20階層~:Dランク以上
30階層~:Cランク以上
40階層~:Bランク以上
50階層~:Aランク以上
とゆーか聞くところによると神聖騎士団も普通にめちゃくちゃ強いっぽいんですよね。貴族の子息とかも所属してるから弱いかもと思ったのに。
エールちゃんが第三王子率いる神聖騎士30人くらいを一人でボコボコにしたのは、純粋にエールちゃんが強いからです。神聖騎士の強さは弱くても最低Cランク冒険者以上。アベレージはBランク。エース格になるとAランク級がゴロゴロいるそうです。
イーグレス神聖国内で一番強い戦力と言えば、神聖騎士団と言われるくらいです。威張ってるだけの実力はあります。
彼らに対抗する為に、この孤児によるダンジョンアタックの取り組みをエールちゃんは1年以上やってるらしく、そのおかげか孤児たちもCランク冒険者以上の実力を持ったものが出てきました。つまりこの子供たちもかなり強いんです。
その間の死者はなんとゼロ。現場猫もびっくりです。
死亡者ゼロの理由は、どうやら引率に元黒陽騎士団の人たちを当てていることが大きい気がします。彼らの多くは兵士からの叩き上げですが、その強さは一時期神聖騎士団を脅かすほどの勢いのあった猛者たちです。
ここで協力している人は聖王の指揮系統に入っておらず、あくまで『善意の協力者』という形らしいです。
私は元黒陽騎士団の人たちが引率をしてるのを見て思いました。
「ちょっと安心しました」
「何がですか?」
「エールちゃんには味方がいないと思ってましたが、ちゃんといたんだなって」
「城の中にはほぼいないですよ。全員が聖王派ではないですが、中立派も表立って私の味方をしません。完全に味方と言えるのは、聖王の指揮系統から独立してる人たちだけですね」
「大変なんですねぇ……」
まぁ、エールちゃんの求心力がゼロではないことは安心しました。ちょっと他の仕事でも見てて思ったんですけど、孤立してるのは城の中だけで割と民衆からは感謝されてるんですよ。混沌魔物倒したり、土地の浄化をしたりしてますしね。
もちろんめちゃくちゃ人気あるわけではありませんし、前特級聖女のシャイナスさんと比べられることも多いんですけど……
あ、書店とかでもエールちゃんの絵が売られてたりしますよ。まぁ、可愛いですからね。私もいくつか購入しました。
うーん、でも絵柄の可愛さがまだ昭和から平成初期って感じありますね。私の感性にはあまり刺さりません。
これは私が令和最新版の可愛いエールちゃんの絵を描いて公布する必要があると思います!
でも伝手が無いんですよね……仕方ないので、孤児院に描いたものを寄贈してます。子供たちには喜ばれてるし、まぁいいか。
さて、私達自身のレベルアップも孤児たちのダンジョンアタックと並行して行われています。
3週間後にあるという【聖王御前試合】で『勇者』の高橋くんを倒さなければならないですからね。
この日はきなこちゃんと幼い孤児たちと一緒に、私も1階層からダンジョンを挑むことになりました。
きなこちゃんはお外での仕事であんまり役に立たない子なので、こういう戦闘面で使われることが最近は多いです。
1階層でさっそくゴブリンが1匹出てきました。うん、何気に異世界では初ゴブリンです。
ハルテンでは絶滅してるんですよね、ゴブリン。なんかサクちゃんが滅ぼしたとかいう逸話がありますけど、本当かどうかは知りません。
ゴブリンの個体差は大きいらしく、1階層のゴブリンは特に弱いです。子供程度の腕力しかありません。しかも必ず素手で、武器持ちはいません。そして親切なことに1体ずつしか現れません。まさにチュートリアルって感じですね。
きなこちゃんが言います。
「Huuum、手本を見せろチーチャン。あの程度、オヌシなららくしょー」
「え、私がやるんですか!? 初戦闘ですよ!?」
「え、チーちゃんがやるの!?」
「ちーちゃんがんばえー!」
なんかやることになってしまいました。孤児たちの好奇と不安の視線が私に向けられます。まぁ、見た目5歳児ですからね、私。孤児たちの方が見た目平均年齢高いくらいです。
相手は最弱のゴブリン。しかも素手です。
対する私の武器は船の櫂。一部の人から大きなしゃもじだと思われてますが、これは剣豪宮本武蔵が使った立派な武器で……つまり強いです! 負ける要素がありませんね!!(確信
私は櫂を構えます。構え方はいつも適当。ですが後手に構えた方がリーチが読みづらいとか言われてるのでそれを多用してます。ユーくんもこの構えが多いですね。攻撃的な構えなのかもしれませんが、良く分かりません。
ゴブリンは警戒することも無く、無策で突っ込んできます!
ふっ、愚かですね! 私を子供と侮りましたか!?
こうみえて私はSランク冒険者でハルテンでは勇者としてその名を轟かせた存在ですよ!!(たぶん)
私は全身から白いオーラを発します!
ゴブリンはそれに怖気づいたのか、少し足を止めました!
勝機!
私は櫂を大きく横なぎに振り、ゴブリンの首に当てました!!
ほにょん
間抜けな音が響きました。……ノーダメージです。
ゴブリンが呆気にとられた顔をしています。ふっ、その気持ち、私も同じです。
流し斬りが完全に入ったのに……
きなこちゃんが呆れたように溜め息をつき、つかつかと歩いていきました。
そしてゴブリンの頭を雑に殴り飛ばしました。一撃。
ダメージを負ったゴブリンはそのまま消滅しました。
ほえ……
きなこちゃんが言います。
「そのホワイトオーラ出すのヤメロ」
「……え?」
「それがクッションになってて無傷になる。てっきり手加減してるだけと思ったが、もしやいつもやってるのか?」
「あ、はい。いつもやってます」
「……ざ・ふーる」
……な、なんと! ここに来てようやく私が弱かった理由が判明しました!!
このいつも気合を入れて使ってた神気が駄目だったようです!
しょぼーん……かっこいいと思ってたのに……
その後、神気無しでゴブリンを叩いたら普通に倒せました。
わ、私の今までの苦労は一体……!?(あんまり苦労してない
何気にチーちゃんは今回で初モンスター討伐です。(たぶん
悪神は倒したのに一般モンスターは倒してなかったという。




