Lo190.ガイナスさんの指名手配を解く為に?
私はエールちゃんにハルテンでのシャイナスさん達のことを話しました。
まぁ特に重要な話は何も無いんですけど。
「ぶっちゃけエールちゃんが心配するまでもなく、めっちゃ元気ですあの人たち」
「そうなんですか? シャイナス様は力を喪ってから色々と苦労してると思いましたが……」
「めっちゃ元気です。たくましいです。心配する必要が全く無いです」
まず、そこは強調しときました。あの人たちの心配をするなどおこがましいです。
そりゃもう、元気でやってますとも。むしろ弱ってた時期あったんですかシャイナスさん?
もしかしたら冒険者やりはじめた初期は苦労してたのかもしれませんが……めちゃくちゃ馴染んでますよあの人たち。
「で、シャイナスさん達は5か月前にはハルテンから大陸に出発してたはずですけど……エールちゃんは知らないんですか?」
「知りません……どこにいるんでしょう?」
「じゃあ多分そのうち出てきますよ」
まぁ、指名手配されてるらしいですがあの人たちならなんとかするでしょう。
心配するだけ無駄です。マジで。あの人たち強いので。
「しかしまぁ、エールちゃんの事情を聞くと……たぶんイーグレス国内にいますね、あの人たち」
「どうしてですか?」
「あれほどの人たちです。よその国にいると大活躍して噂になってるはずでしょう。でも行方は分からないとなると……おそらく隠れてるからですね。そして機を伺っているかと」
「機を……?」
「いつだって好機は混乱の中から生まれるものです」
「おお、それっぽいこと言ってて草」
うん、西蓮寺さんは黙ってましょうか。その草引っこ抜きますよ?
私は珍しく大真面目に推理してるんです。
「しかしまぁ、今することは……私の仲間との合流ですね」
「貴方の……?」
「え、チーちゃんに仲間いたの?」
「いますよ!?」
むぅ、私ってそんなに仲間いなさそうですか?
いや、知らないんですね。私がハルテンで幼女な勇者として過ごしたあの日々のことを……
……ほとんど漫画しか描いてなかった気がしますが。
「ガイナスさん達は指名手配で迂闊に動けない。なら自由に動かせる手勢を増やすべきです。まぁ、その後どうするかはノープランですが」
「やっぱりノープランなんですか貴方は」
「たぶん仲間が良い作戦を思いついてくれるはずです。良く分かんないんですけど」
まぁ、こういうのは出たとこ勝負です。私は続いて見解を述べます。
「とりあえずエールちゃんが孤立して頑張ってるのは現状あんまり良くない気がします。これ、多分国に散々利用されて、いらなくなったらポイされますよ」
「ちょっとチーちゃん!」
ルナ子ちゃんに止められますが、こういうのははっきり言っておいた方が良いと思います。何故なら、エールちゃんは直球派。ストレートを好むタイプですので。
「……そう思いますか?」
「そう思います。私、この国信用してないので。というか【勇者召喚】の儀式とかやったのもエールちゃんをポイするフラグなんじゃないですか? エールちゃんは【勇者召喚】に関わってないんですよね?」
「はい。全く関わってません。というか関わらせてくれなかったですね」
ふむ、やはりエールちゃんは関わってなかったっぽかったですね。召喚されたとき、あの玉座の間にいませんでしたし。私達を迎えに来たのも牢屋に閉じ込められてすぐではなく、翌日でしたし。
「……確かに。それを聞くと【勇者召喚】っていうのは『魔王討伐する為』とか言ってたけど、本当は聖王派の戦力補充が目的? 戦力だけは強いエール様に対抗する為に?」
「あ、そういえば思い出したけど……天恵に『聖女』というのを持った子がいたね……」
ルナ子ちゃんがボソッと言います。いやそれ初耳ですけど。
天恵が『聖女』? それめちゃくちゃ聖王派が欲しい手駒じゃないですか?
「なるほど……どうやら【勇者召喚】は聖王派にとってかなり都合のいい道具らしいですね。実力で排除できないこの私に対して優位に立とうとしたわけですか」
「いや、優位……立ててるんですかね? 結局こっちに来てる『天恵無し』2人の方が強くないですか?」
「まぁそれはそうです」
エールちゃん陣営も結果的には【勇者召喚】でちゃっかり強化されたわけでして。しかもそれが80階層初見クリアできるレベルの魔法少女。『勇者』や『聖女』の天恵を持つ子がどのくらい強いのかは知りませんが、こっちの西蓮寺さんを基準にすると……割と弱いのでは?
「でも聖王派は『天恵持ち』が17人。それに対して私達は4人……数では圧倒的に不利だよ?」
「……4倍の差……これは絶望的……もうここは勇者であるチーちゃんを頼るほかない……」
「わ、私ですか!? え、えと、じゃあ尚更私の仲間が必要ですね!?」
何故か私に期待をかけられましたが、戦力的には私の仲間の方が頼りになりますので期待しないでください!
「貴方の仲間は強いのですか?」
「えーと、私の仲間はユーくんとココッテちゃんっていう2人で、どっちも多分Aランク冒険者くらい?」
「ふむ……Aランク級が2人ですか。使えそうですね」
「あと二人とも幼女です」
「その人を不安にさせるだけの情報いります?」
当然いります! 幼女は最強なので! というかエールちゃんも幼女じゃないですか!!
……ウェダインさんもいたら良いんですけど、ケモ度の高い獣人が人間至上主義のこの国に来るんですかね?って疑問があったり。
「きっと二人とも私を探してるはずなので、そのうち来てくれます!」
「……それなら貴方が引きこもっているよりは積極的に表に出た方が良いですね。彼らに見つけてもらうために」
「……え、漫画描きながら待ってちゃ駄目ですか?」
「駄目です」
ですよねー。向こうに見つけてもらうには人前に出る必要がありますね。
あ、でも……
私はエールちゃんの見ていた書類を指差します。マル秘って書かれてる書類です。
そこには私の情報が書かれています。
「エールちゃん、あれに私の情報が載ってるんですけど……その情報が聖王派にも回ってますよね?」
「たぶんそうですね。私にも情報が来るくらいですから」
「つまり聖王派には私が勇者だってことバレてるんですか?」
「その可能性は低いかと。文字情報しかありませんし、こうして目の前にいても貴方が勇者に全く見えません」
「草」
それに関しては私も同意です。こんな可愛い子が『悪神を討伐』とか『Sランク冒険者』とか『実は勇者』とか言われても信じないでしょう。
というか私が信じていません。未だに。
「ふみゅ……確かに! ですがもしバレたらめんどくさそうですし、一応これからはメイド服着ておきますか」
「そうですね。貴方の服装は特徴的ですし」
念の為、初期装備のかわいいドレスは封印ですね。ハルテンではずっと着てましたし。
それにメイド服着ててもユーくん達なら気付いてくれるはずです。
あとは何かすることってありますかね?
きなこちゃんが手を挙げます。
「今の特級聖女はナメられすぎ。だから第三王子などという小物に喧嘩売られる」
「……一理ありますね。ではどうしましょうか」
「強さを見せつける。聖王派の権威を崩す。ですとろーい」
たまに意見だしたと思ったら物騒なことを言うきなこちゃん。ですが本質を突いてます。
「本来、特級聖女は聖王と同等の権威があるんですよね? でしたら、エールちゃん派が増えればガイナスさんの指名手配を解除できるかもしれませんね」
「……そうですね。私もそれを目指しています。お二人がこの国に帰ってこられるように」
「でもどうやって? 権威ってどうすれば大きくできるのかな?」
ルナ子ちゃんが言います。それに対して西蓮寺さんが答えました。
「……権威とは、エール様単体の強さではなく、エール様派のグループとしての強さ。つまり私達、【エールちゃん親衛隊】の出番」
「Huuum、起こす? クーデター」
「いや、そんな大それたものじゃない。もっと平和的に、穏便に力を示す場がある」
ふむふむ、そんなのがあるんですか? 西蓮寺さんは何か自信ありげです。
「……3週間後、勇者召喚された者たちの実力を衆目に知らしめるイベントが企画されている」
「なるほど。あれですか……」
いや、あれってなんですか? 全然わからないんですけど。
西蓮寺さんはドヤ顔で言います。
「【聖王御前試合】。私達はそれに『やられ役』として参加することになっている」
「え、そんなのあったんですか?」
全然聞いてませんけど、もしかして私も参加するんですかね? しないですよね?
私はあくまでイレギュラーですし、参加するのはこの子達3人だけですよね?
「だからその場で……最も強いと思われている『勇者』の天恵を持つ者……高橋をボコボコにする。『やられ役』の私達が」
西蓮寺さんが悪い笑みを浮かべました。悪役令嬢みたいです!
高橋さんごめんなさい。あなたには何の罪もありませんが、ボコられることになってしまいました!




