Lo170.きなこちゃんの戦い方は……汚いな流石ニンジャ汚い
というわけで、特級聖女リュミエール様の有難いご指導で修行パートになってます。
さて、エールちゃんのご指導はいかほどに……!?
「とりあえず武器取ってお互いに殴り合ってください」
「雑!?」
はい、めっちゃ雑でした。こういうところが非常に幼女。
ルナ子ちゃんがおずおずと手を上げます。
「えーと、私達素人だから怪我しちゃうと思うんだけど……」
「なるほど……確かにそうですね。ならば経験者の私が胸を貸すことにしましょう。さあいつでもどうぞ」
「えええ!? そっちの方が怪我しそうですよ!?」
「たぶん大丈夫です。自信あります」
ま、全く信用できない……
エールちゃんの戦い方は今まで見てきて、なんとなく分かってます。この子、めっちゃ物理的に杖ぶんぶんしてくるんですけど、力任せで大雑把というか……戦い方も割と雑っぽさがあるんですよね。
「ならばワタシがエントリーしよう」
きなこちゃんがカラテのポーズで構えました。
「なるほど、先鋒は貴方ですか。勝ち抜き戦というわけですね」
「勝ち抜き戦じゃなくて訓練ですよ!?」
きなこちゃんが大地を蹴りました。姿勢は低いです! 這うように地面を走ります。
そしてエールちゃんの真正面に詰めてそのままチョップをします!
エールちゃんはそれを迎え撃つように杖を構えました。防御の構えです!
きなこちゃんは……攻撃すると見せかけてビタッと寸前でチョップが止まりました。今のはエールちゃんの防御の方が速かった。防がれると見て攻撃を止めたのでしょう。
しかしそこで妙手! きなこちゃんが親指で何かを弾きました! ほんの指先ほどの大きさの小石です!!
その小石はエールちゃんのガードをすり抜け、目をめがけていきます。
目潰しです! いきなり目潰しを狙ってます!! 幼女相手に!?
エールちゃんが思わず目を閉じると、まぶたに小石が当たりました。ほんの小指程度の石でしたが、眼球にあたったら目が潰れます。容赦ないですね!?
というかエールちゃんは片目隠しの幼女ですので、これで実質両目が塞がれた形になります!
そしてきなこちゃんは、エールちゃんの杖を持ってる小指に向かってチョップ! チョップ! チョップ!!
3回チョップをしました!? ひどっ!!!
「……っ!」
エールちゃんが目をつむったまま杖を振り回します! 小指をチョップされても杖は落としませんでした!!
ぐるんと回った杖をきなこちゃんが余裕でかわし……いや、風圧がやばいです!
杖の風圧がきなこちゃんをとらえ、パアンと空気が弾ける音がします!!
きなこちゃん、服が破れました! そして吹っ飛びました!!
ドンッ! ごろごろごろ……
きなこちゃんは直接攻撃が当たってないにも関わらず、10m以上吹っ飛びました!
KOです!!!
「……あいむるーざー」
きなこちゃんは倒れたまま言いました。あの、服破けてますよ。メイド服中破状態です。
「大丈夫!? きなこちゃん!!」
「油断と慢心を突いたつもりだった……無念」
「結構酷いことやってたよね!!?」
はい、きなこちゃんの戦い方は非常に酷いやつでした。目潰し狙いの小石投げ、小指に向かってチョップ連打。汚いな、流石忍者汚い。
エールちゃんはゆっくりと目を開けました。
「いえ……素晴らしいです。あそこまで正確に狙い撃ちされるとは……『天恵無し』とは思えない動きです。むしろ好ましいです」
「好ましいんですかあれ!?」
「ただ、惜しむらくは……全くのパワー不足です。あの小石はビックリしましたが、瞼の上からでもそんなに痛くなかったですし、小指もダメージを特に負ってません」
「そうなんですか!? エールちゃん丈夫ですね!」
「レベル差……というやつでしょうか。おそらく異世界に来たばかりの貴方のレベルは1。そして私のレベルは神聖国内で最も高いレベル9です」
なっ、なんですと!? レベル9!?
一般的に最高レベルとされてるのはレベル7です。それを2つも上回るとは……ハルテンでは聞いたことの無いレベルです。この幼女、【片目の怪物】と言われるだけありますね。
一方、他の人はピンと来てないようです。ルナ子ちゃんと西蓮寺さんが話してます。
「レベル9って……高いのかな?」
「……ゲームによる。私のネトゲでのレベルは136」
「西蓮寺さん、ネトゲやってるの!? 全く興味無さそうなクールな見た目なのに!?」
「……まぁ、全然ライト勢だけど。まだプレイ2000時間しかやってない」
「結構やってないそれ!?」
西蓮寺さん、クールな見た目なのにめっちゃゲーマーです。おそらくギャップ萌えを狙ってますね?
「今のままでは、キナコは私の敵ではありません……ですがレベル1でこの動きは驚異的です。戦闘経験があるのですか?」
「無回答」
「なるほど……」
何がなるほどなのか分かりませんが、きなこちゃんは結構有望株っぽいです。やはり彼女は……ニンジャなのですかね? あ、ニンジャは忍者とは違います。ニンジャはニンジャなので。
「さて、あとの3人も来てください」
「えええ……やっぱりやるんですか?」
「やだなぁ……」
「やる気なんてナッス……」
「嫌は許しません」
その後、私達3人はそれぞれ訓練用の武器を持ってエールちゃんに襲い掛かりましたが、特に見せ場なく普通にやられました。唯一の『天恵』持ちの西蓮寺さんもめちゃくちゃ弱かったです。
いや、彼女が弱いんじゃなくて……差がありすぎますね! エールちゃんがそもそも強いんです!!
しかし終わった後、エールちゃんが私に言いました。
「……えと、あなたチーちゃんって言いましたっけ?」
「はい、チーちゃんです……ぐふっ」
「私より小さな体なのにとても俊敏で驚きました。貴方がこの中で一番強いです」
「……はい?」
え、いや。私特に何もせず一方的にボコられただけなんですけど……? エールちゃんは何故か私を期待の目で見るのでした。
「あとサイレンジシズカが一番弱いです。一番背が高いのに一番すっとろくて、とにかく弱いです」
「知ってた。あまりにも酷い言われようで草生える……」
そう言って西蓮寺さんががっくりとうなだれました。あ、やっぱ弱いんですねこの人。




