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難攻不落彼女  作者: 斉凛
第3章 短編集
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秋波 後編

 それからの日々は想像を絶するものだった。

 ほとんど睡眠もとらず、授業も出席しているだけで、意識は常にパソコンの中。

 FXだけでは短期間で利益をだせないので、株と平行でデイトレをする日々。


 約束通り紫は毎日お弁当を作ってくれるが、パソコンを見ながらマウスから手が話せず、せっかくの弁当も流し込むだけだ。

 ああ……ゆっくり味わいたいのに……そろそろこの株買いだなぁ……あっだし巻き美味って……ヤバい下がってきたから売りだ……唐揚げ肉汁一杯で幸せ……何!ドルが売りの気配、おいおいまだもう少し持ってくれ……

 とまあ、忙しすぎて余計な事を考えてる隙がないのだ。

 過労と睡眠不足とストレスで胃の調子も悪いし。


「先輩お弁当です」


 紫がいつもの時間に弁当を持ってきてくれたが、顔を見る余裕もなくパソコンの中と格闘中だ。


「何かリクエストありますか?」

「さっぱりしたもの」


 最近食欲なくて、紫の弁当しか食べてないと思う。

 しかしそろそろ彼女の愛情弁当でも揚げ物とかはきつい。


「せっかく秋ですし、旬のサンマの梅煮や、サンマのほぐし身と紫蘇とゴマの炊き込みご飯とか」


 思わず唾を飲み込むほど美味しそうだ。……ああ、いかん集中、集中。


「うん。任せるよ」


 その後も紫は弁当にそうめんという荒技を繰り広げたりした。ごま油を絡めて一口ごとに小分けにしてあったので、固くならずゴマの風味が食欲をそそる。

 柿と大根のサラダなど一風変わっていながら、旬を忘れない心使いに癒される。


「松茸ご飯が食べたい……」

「高いから無理。舞茸ご飯にしますね」


 うん。そういう所はしっかり倹約家だよね。弁当の材料費ぐらいだすのに。


 そうして秋が終わる頃なんとかメドがたった。


「約束通り、損失の半分は挽回しました。残りは長期的に利益が出そうな株やスワップポイントのいい通貨にしましたから、市場を見ながら無理せず、投資してください」

「ありがとう。柾木君」


 葛西准教授はすがりつかんばかりに、感激しながらお礼を言った。


「もう二度と怪しげな情報に惑わされないでくださいね。次何かあっても、絶対協力しませんから」


 釘を差す事も忘れず言い切って、意地で足を動かした。

 今すぐ眠りたい、このまま倒れてしまいたい……。教授室を出たところで紫は待っていた。


「お疲れ様です。柾木先輩」


 毎日会っていたはずなのに、まともに顔見るの久しぶりな気がする。


「大丈夫ですか?」


 不安げに下から見上げる紫に気持ちが緩んでいく。ちょうどいい高さだな……紫の頭の上に顎を乗っけてもたれかかった。


 紫の華奢な体で俺を受け止めきれず、倒れそうになりながら紫が慌てた声をだした。


「先輩! こんな所で寝ないでください」


 紫の可愛い声は子守歌のようで、睡魔に襲われたが、紫に支えられながらなんとか、どこかにたどり着いて、そのまま俺は眠り続けた。


 後から聞いたら、『朝比奈昼寝御用達場所』の一つで寝ていたらしい。

 なんでそんな所を紫が知っていたのか? 聞いてみたら、「古屋教授に頼まれて朝比奈先輩をよく探しにいくんですよ」との事。

 昼寝に消えた朝比奈先輩を見つけられるのって、上條先輩だけだったのにな……。

 朝比奈と紫が仲良さそうなのが悔しい。



 その後約束のコスプレをするというので、人気のない公園に呼び出された。しかも何故かスーツ着用と指定される。

 何着るんだろう。ナースとかメイドとか癒し系なコスプレがいいな……。でもそんなの公園じゃ目立つし……。

 高校の制服とか?去年までは着てたわけだから、お金もかからないし、公園で着ても違和感ない。

 紫の高校ってどんな制服かな? ブレザー? セーラー服?

 他人が見れば不審者極まりない表情で、俺はニヤニヤと笑っていた。


「お待たせしました」


 紫の声が背後から聞こえ、喜んで振り返る。今まで何度も紫には驚かされてきたが、今回が一番驚いた。



 ミ、ミニスカポリス……。


 紫は半袖とタイトなミニスカートから、針のように細い手足を露わにしていた。

 小柄なため長くはないが、色白で折れそうに華奢な足は十分に魅力的だ。

 嬉しくないわけではないが、それ以上に何故婦警コスプレ?


「ど、どこでそんな服手に入れてきたの?」

「葛西准教授のコレクションをお借りしました」


 どんだけ変態教師だ……あのオッサン。


「先生のお目に私が叶えば楽だったんですけど、あいにく先生は足の長いモデル系美女がお好みなんですよね……」


 いやいや、まてまて。変態オッサンの毒牙にかけてなるものか……。


「先輩。スーツのジャケット脱いで貰えますか?」


 そう言われて、秋の終わりに半袖、ミニスカは寒いだろうと思い至った。

 動揺しすぎてどうかしてる。こんな些細な配慮もできないとは。


 俺はジャケットを脱いで紫に着せようと手を伸ばした。


 カシャリ。


 へ? 自分の手首に着けられたものを、理解できずにまじまじと見つめた。

 紫はニコニコと俺の両手に手錠をかけた。そして、俺の手から奪ったジャケットを俺の頭にかけた。


「なんで?」

「変質者サラリーマンを婦警が逮捕プレイです」


「そんなプレイ嫌だー!」

「先輩犯罪者予備軍なんですから、予行練習です」


「その犯罪者予備軍認定止めて……」


 俺の願い虚しく、紫は意地の悪い笑みで、しばらく手錠を外してくれなかった。

長くなりました。

投資に詳しくないのでいい加減な描写で申し訳ありません。


紫のコスプレとヘタレな譲司のカッコいい活躍を書きたくて書いたお話です

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