めぐりプロムナード(1)
まぁ、そんなこんなで昼休みになったんだが...。
「やぁ、私のフィアンセ。昼休みになったし、その霊のところに案内するよ。」
果南と言ったら、ずっと僕をこう呼んでくる。冗談ならツッコんで終わりなんだが、もし本気だったらと思うとそうはいかない。その場合、確実に僕の命は無いだろう。まったく返事に困るものだ。
「あ、あぁ...。よ、よろしく頼むよ。」
「ぎこちない。」
「は?別にそんな事ないけどな。僕はただ事務的に端的に冷静に、決して動揺することなくさらっと返事をしただけだが?」
「動揺しすぎだよ。というか、動揺してもそこまで早口になる人って珍しいよ。1.5倍速の塾の映像授業の速度を軽く超えてきてるよ。」
「そのよくわからない例えのおかげで冷静になれたよ。どうもありがとう。」
「よくわからないのは帰さんの学がないからだよ。一度土に還ってやり直したらどう?」
火力が高すぎる...。しかも結構核心を突いてきている...。
「大丈夫だよ。私はそんな馬鹿なあなたでも、愛してあげるから。」
やっぱこいつ馬鹿にしてるな。今まで気を遣っていた自分が馬鹿らしいよ。
「帰さんが馬鹿なのは置いておいて、その子のいる場所に案内するよ。」
「僕が馬鹿だってのは置いておけないが、一回はなかったことにしてやるよ。ほら、早く案内してくれ。」
「わかった。馬鹿は休み休み言う事にするよ。」
「二度と言うな!あとその馬鹿ってのは文字通りの馬鹿じゃない、馬鹿な事っていう意味だ!」
「完璧なツッコミだね。こっちもボケのしがいがあるってもんだよ。」
「舐めやがって...。」
「発言が弱そう。噛ませ感が半端ないね。」
「もういい!さっさと案内しろ!」
それから1分程歩くと、1人のランドセル姿の女の子が立っていた。名札には、小学3年生、奥野巡と書いてある。
「やぁ、巡ちゃん。この人が帰さんだよ。馬鹿な人だけど、仲良くしてあげてね。」
「うん!わかった!」
「僕は馬鹿じゃない!てか受け入れるのが早すぎるだろ!そんな簡単にわかってたまるかよ!」
「馬鹿は馬鹿だから、自分が馬鹿だという事に気付けないんだよ。帰さんはそろそろ自分の馬鹿さを自覚した方がいいよ。」
果南こいつ...。しかし言っていることは理にかなっている。なんか馬鹿って言われ過ぎて、ちょっと自信なくなってきたな...。
「いや、流石にそんな事ないと思うんだけど...。」
「ちょっと自信なくしてるね。やっぱり馬鹿だなぁ。」
「は?」
「なんでもないよ。それよりこの子をないがしろにしてしまったね。この子は奥野巡。まぁ名札にも書いてあるけど、一応私の口から紹介するよ。」
「こんにちは!奥野巡です!巡って呼んでください!」
「うん、よろしくね。」
なんか馴染みのある声だなぁ。なんて僕は思って、巡にお願いをしてみた。
「なぁ、巡。1回でいいから、『よろしくニャン!』って言ってくれないか?」
「?。まぁいいですよ。いきますよ〜」
「よろしくニャン!」
「次、チョコボー食べたいニャン!」
「チョコボー食べたいニャン!」
やっぱり!明らかにあれだ!
「果南。分かったか。」
「うん。わかったよ。某大人気ゲームの地縛霊系猫妖怪だね。」
「あぁそうだ。めちゃめちゃ似ている。多分本物と変わってもばれないレベルだ。」
「そりゃそうですよ。私ジバニャンですから。」
「え?マジ?本物だったの!?」
「嘘です。詐欺に気を付けたほうがいいですよ。」
「マジで気をつけよ...。」
「帰さんは馬鹿だし、巡ちゃんは躊躇なく名前出したね。だめだよ安易に名前使っちゃ。」
「わかった!」
ここまで来ると、僕も自分が馬鹿だと理解せざるを得ない。というかこの子たちが賢すぎる気もするが。そんな事を思っていると、果南が言った。
「じゃあ、そろそろ本題に入ろうか。」
「あぁ、そうしよう。」
「では、私から帰さんに話しますね。」
そう言って、巡は話し始めた。




