シーン4 「王子、反発する」
午後。
『王国財政再建委員会』
その入口扉が。
バァン!!
勢いよく開いた。
職員たち、
ビクッと肩を震わせる。
嫌な予感しかしない開き方だった。
そして現れたのは。
アルベルト・ルクレール
である。
金髪。
美貌。
無駄にキラキラした背景光。
王子として完璧。
ただし今、
ものすごく怒っていた。
「レオノーラ!」
委員会室へずかずか入ってくる。
後ろでは、
護衛騎士と官僚が青ざめていた。
「止められなかったのか……!」
「相手が王子ですので……!」
無理である。
アルベルトは、
机の前まで来ると、
真正面から叫んだ。
「恋愛を規制する気か!?」
室内静止。
職員たち、
固唾を飲む。
対する
レオノーラ・ヴァレンシュタイン
は。
書類から視線すら上げなかった。
「災害を規制しております」
正論だった。
あまりにも正論。
アルベルト、
一瞬詰まる。
「だが!」
「感情は自由だ!」
王子らしい。
実にロマンチックな主張だった。
だが。
レオノーラは、
淡々とペンを置く。
そして。
静かに顔を上げた。
「自由には責任が伴いますわ」
完全に行政官の顔だった。
「壁が崩れれば修復費が発生します」
「停電すれば商業損失が出ます」
「噴水が爆発すれば負傷者が出ます」
「感情は自由です」
「ですが」
一拍。
「請求書も自由に飛んで参りますの」
後方で、
クラリス・エヴァレット
が、
静かに頷く。
魂の頷きだった。
アルベルトは、
言葉を失う。
彼は悪人ではない。
むしろ善良だ。
だからこそ。
実害を数字で突きつけられると弱い。
「俺は……」
「皆を楽しませたかっただけだ」
その声は、
少しだけ小さい。
その時。
王子の後ろから、
おずおずと顔を出した人物がいた。
ミレイユ・フェルナン
である。
彼女は、
申し訳なさそうに周囲を見回した。
委員会室。
積み上がる修復報告書。
医療費一覧。
災害記録。
疲弊した職員たち。
全部、
見覚えがある。
全部。
自分が関わったイベントの aftermath だった。
ミレイユは、
ぎゅっと手を握る。
「……ごめんなさい」
小さな声。
誰へ向けた謝罪か、
本人にも分からない。
レオノーラは、
そんな彼女を見て、
ほんの少しだけ表情を緩めた。
この少女も。
被害者だ。
一番近くで、
この狂った世界を浴び続けている。




