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悪役令嬢、予算書を叩きつける  作者: 南蛇井


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第二話『壁ドン税、導入される』 シーン1 「制度化」

王都中央省庁区画。


 その片隅に。


 急造された建物があった。


 元は倉庫。


 現在は。


『王国財政再建委員会』


 という、

 あまりにも物々しい看板が掲げられている。


 しかもその下。


『恋愛イベント対策部門』


 通行人が二度見する。


 三度見する者もいた。


「何だあれ……」


「恋愛を対策するのか……?」


「災害扱いでは?」


「実際災害だろ」


 否定できない。


 建物内部。


 そこは完全に戦場だった。


 書類の山。


 魔力計測器。


 徹夜組。


 疲れ切った官僚。


 壁には、

 学園崩壊被害マップ。


 もはや行政機関というより、

 災害対策本部である。


 そんな中。


 壇上へ立った

 レオノーラ・ヴァレンシュタイン

 は、

 静かに資料を閉じた。


 そして。


 落ち着いた声で言う。


「感情は自由です」


 職員たち、

 神妙に頷く。


「ですが」


 一拍。


「公共インフラは自由ではありません」


 拍手。


 しかも妙に力強い。


 一部職員、

 泣いていた。


「やっと言ってくれる人が……!」


「噴水爆発の申請処理、

 もう嫌だった……!」


「橋崩落を恋愛カテゴリへ分類する作業、

 本当に苦痛で……!」


 重い。


 国家の闇が重い。


 レオノーラは、

 淡々と次の資料を開いた。


「よって」


「本委員会は、

 新制度を導入します」


 空気が引き締まる。


「第一」


 紙を掲げる。


『壁ドン税』


 沈黙。


 職員たち、

 一瞬理解が止まる。


 レオノーラは真顔だった。


「壁面損傷リスク対策として、

 壁接触型恋愛演出へ課税を行います」


 完全に真面目。


「なお」


「石壁は高税率」


「木壁は禁止です」


 後方で修復班主任の

 バルド

 が、

 深く頷いた。


「妥当ですな……」


 経験者だった。


「第二」


『告白演出許可制』


「花吹雪」


「噴水演出」


「人工夕焼け」


「幻想魔法」


「その他視覚効果は、

 すべて事前申請制とします」


 職員たちが高速でメモを取る。


 もはや戦時法。


「第三」


『大規模恋愛魔法届出制』


 空気がさらに重くなる。


「一定以上の魔力演出は、

 国家許可が必要です」


「対象例」


「空中薔薇庭園」


「人工流星群」


「天候操作デート」


「浮遊シャンデリア」


 途中から、

 普通に兵器規制みたいになっていた。


 しかし。


 誰も否定できない。


 実際に王都が停電したから。


 数日後。


 制度は新聞へ掲載された。


 王都中、

 大騒ぎである。


 新聞見出し。


『壁ドンに納税義務!?』


 国民、

 爆笑。


「そんなわけあるか!」


「恋愛に税金!?」


「頭がおかしい!」


「次は告白免許制か!?」


 なお。


 修復班だけは真顔だった。


 用務員たちも真顔。


 保険組合も真顔。


 建築業界も真顔。


 花屋組合も真顔。


 むしろ。


「遅かったくらいだ」


 という空気だった。

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