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サイハテの村人たちは勇者がいなくても平気なようです 〜ただしご近所は魔王城〜  作者: 青咲花星


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第4話 フライングマザー

「母さん」


「初めまして、エリーです!こちらこそいつもシータとディナに助けられています!お会いできて嬉しいです!」


ああ、と頭を抱えるシータと目を輝かせるエリー。


「変な噂を聞いてたし、村長が言い淀むから一体どんなか弱い子かとは思ってたけど、芯が通っててすごく可愛らしいお嬢さんじゃないか」


エルダははっはっは、バンッバンッとシータの背中を叩く。

微かに、バキッバキッと音がする。大丈夫だろうか。


「変な噂、学院のですかね?」

「落ちこぼれだって?そうは見えないね」


エリーはエルダに席をすすめ、さっとお茶を入れて差し出す。

ああ、ありがとうとエルダは熱いお茶を躊躇うことなく飲み干した。


「さあ、どうでしょう。父と比べたら本当に落ちこぼれかもしれないです」


「村長、あいつは、名前なんだっけ、まあいいや。村長は元々の能力値が高すぎて現在まで何も努力していないからな。今なら勝てるんじゃないか?」


それはないと思う。

村長であるエリーの父はサイハテの最強とも言われていて、一度先代の魔王と相対したこともあるという。

現在の魔王がどのくらいの能力を持っているのかは未知数だが、先代魔王の時代にサイハテは半壊しかけたことがあるらしい。

それを食い止め、護ったのがエリーの父親だ。


「でもあれだな、エリーは母親似だな。村長に似なくてよかった」


エルダがあいつは愛想がなさすぎる、毎日ニコニコしてるダーリンを見習ってほしいくらいだ、と言い出したところで、さっきから気になっていた事をシータが切り出した。


「母さん、村長さんと父さんは」


「ん?」


そう、到着は明日になると聞いていたが、何故かエルダだけがここにたどり着いている。


「村長とダーリンは……」


エルダさんが首を傾げ、そうだ!と手をポンと叩き思い出したように言う。


「慰霊祭の為の下準備に嘆きの谷を少し調査するっていうから、ダーリンのバンジーを手伝って……そのままだ!」


_____


「ヴィラ?」


エリーの家を飛び出し、隠れられる場所はないかと走り回っていた所をディナに呼び止められていた。


「なんで泣いてるの?」


いつもヴィラが泣いているのはディナ自身に原因があることは自覚しているようだ。

今日会うのは初めてだから原因はディナではない事に、誰かにいじめられたの?と詰め寄った。


「なんでもないよ!まだ(ディナに)いじめられてないし!」


じゃあなんでよ、とディナは口を尖らせる。

ヴィラは言って良いものだろうかと少し躊躇したが、このまま黙っていても詰め寄られ続けてしまうだろうし、どのみちイダーテお兄さんかシータお兄ちゃんから話が行くだろうと意を決して言った。


「……帰ってくるって」

「誰が」


思い出す、あの遊びという名の拷問。

豪速球すぎて反射できても痺れと痛みが残る程の恐怖が勝るボール遊び。

猛烈な速さで走り走らされ捕まればタッチが力強すぎて吹き飛ぶ鬼ごっこ。

訓練という名のバンジージャンプ in 嘆きの谷。


「ディナのお母さん」


ぱああっと明るくなるディナの顔。

そしてやったやったぁ!とぴょんぴょんと可愛らしく跳ねはじめた。

こうしていると本当に、本当にただのかわいらしい女の子なのだが。


「ヴィラ!やったね!またお母さんと一緒に遊べるよ!」


満面の笑顔。キラキラした瞳に、思わずたじろぐ。

そう、本来は喜ばしいことなのだ。

ディナのお父さんお母さんにはお世話になっている身だし、とやかく言えることではないことは分かっている。


でも、やっぱり怖いし僕は遊びたくない。


どうにか安心安全な避難所、もしくはディナのお母さんに対抗する手段はないかと、思案する。

ふとディナを見るとその横で母親と何をして遊びたいかを考えていた。

本当におとなしいと普通に可愛い女の子なのだが。

少年は長いため息をついた。


「結局付き合わざるを得ないんだろうなぁ」


心臓が持つかどうか。

恐怖もはじけたらなぁと、少年は己の能力の使い勝手の悪さに嘆いた。

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