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サイハテの村人たちは勇者がいなくても平気なようです 〜ただしご近所は魔王城〜  作者: 青咲花星


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第36話 貴方のせい

「いつもは普通のツインテールだけど編み込み付きの女の子がディナで、能力は強靭。男の子がヴィラ。能力は反発だよ」


エリーたちがトマト料理のお店に入っている間、ラピスはもふの追加でイダーテに子供たちの事を教えてもらっていた。

完全にヤケになっていた。


(殺されるわけじゃないからきっと大丈夫。この人猫姿にしか興味ないだろうし、ちょっと我慢すれば終わる!)


「それでエリーの隣にいるのが「知ってるわ」


剣術科だった威圧のシータ。

エリーの耳には入っていなかったみたいだけれど、魔術科にも陰でその噂は届いていた。


「それは悪い意味で?良い意味で?」

「……威圧のサイハテ。王族貴族勇者を所構わず威圧で屈服させ、男女構わず容赦無く切り捨てる剣術科のシータ。元騎士団長の教師でさえも怯えさせた男」


想像以上の悪評にイダーテは困った顔をする。

シータは同じ村の仲間であり、弟分みたいなものだ。

幼い頃からシータの事は知っているし、能力が威圧だから勘違いされやすいのもエリー関連以外とても温厚なのも知っている。


「シータの能力はアレだけど、根は全然本当優しい奴だからさー」

「わかっているわ。エリーから彼の事はよく聞いていたし、普段の彼はどう見てもぼんやりしてみえる害のない人間だったから」


それに、と青い目が少し揺らぐ。


「卒業式にエリーを助けてって言ったのは私だもの」

「卒業式って全学院失神事件?新聞一面記事にもなっていた」


「ええ、それよ。エリーが呼び出されて私は止めようとしたのだけれど、『ヴァルト先生が本当にサイハテが強いかどうかの真偽を見極める良い機会ではないか』っておさめるどころか焚き付けたの」


ラピスは苦々しげに、あの頃の事を思い出す。


「それでギャラリーが集まり始めて。お兄様まで、せっかくだから競技場でやろうって。私には発言力がないからこれ以上は止められないって思って。彼に助けを求めた」


シータを探してエリーの状況を説明したら、彼の能力が発動して私も気を失った。

目を覚ました時には、全学院失神事件となって大騒ぎになっていた。


学院で護衛や教師、全ての人間が昏倒していても、すぐにわかったのは私の倒れていた場所から競技場へと続く道の近くの人間が倒れていたからだそうだ。

彼は無意識に漏れ出る威圧を振り撒きながら、エリーを助けに行くことだけを考えていたのだろう。


「私が彼に言わなかったら、エリーが相手を倒してはい終わり。で済んだかもしれないのにね」

「いいやラピスのおかげで寧ろその程度で済んだんじゃないかな」


イダーテが考えるように言った。


「たぶん、そのままだったらサイハテから村長さんが、教会からエミアさんが、学院ごと消しに来てたよ。あ、シータのお母さん、エルダさんも参戦してたかもしれないな」


ぽかん、とした顔でラピスはイダーテをみる。


「後から聞いて変だと思ってたんだ。エリーが泣いても、学院が燃やされてないのってなんでだろうって。ラピスがシータを向かわせたおかげだったんだね。ありがとう」


とても爽やかな笑顔でイダーテは言った。


「僕もあの学院に通ってたからさー思い出の場所が無くならないでよかったなって思って」

「いや、あの、ちょっとよくわからないのだけど。私が彼をエリーの元へと向かわせた所為で大勢の人が昏倒したのよ?」


「えっと、気絶で済んでよかったって事だよ。うちの村長さん、身内の敵には容赦無くてしかも隠蔽が上手だからさ」


もしかしたら魔王の所為にして学院が真っ青な炎に焼かれ、土地は真っ赤に染まる大事件に発展していたかもしれない。


「そういえば昔エリーに卒業式大丈夫だったか聞いたら、青色のとても可愛い親友が助けてくれたのって自慢してたよ。ラピスの事だったんだね」


ぽろっ


「えっちょっとラピスさん!?」


ぽろぽろと、涙がこぼれ落ちてくる。

その様子にイダーテは狼狽だす。


「よかった、私、エリーの事、助けれてたんだ」

「いやいや何言ってるのさ、」


そう言いながらイダーテがハンカチを渡してきた。

水玉模様かと思えば全部猫のシルエットの可愛い柄だった。

思わず咽せた。


「シータも言ってたよ、学院でエリーに友達ができたおかげで元気が戻ったみたいだって。卒業式だけじゃなくてずっと前から充分助けられていたみたいだったし……って、さっきよりめっちゃ泣いてるじゃんなんで!?」


もらったハンカチで拭いても拭いても溢れ出てくる。

とうとう、涙が止まらなくなってしまった。


これはもう貴方のせいよ、イダーテ。

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