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サイハテの村人たちは勇者がいなくても平気なようです 〜ただしご近所は魔王城〜  作者: 青咲花星


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第2話 サイハテ式剣術稽古

サイハテ村は今日ものどかだ。

朝日が昇り暖かい光につつまれ、コカトリスの鳴き声が響く。


しかし、最近はこの時間になると村の外近くで少年の泣き声も一緒に大合唱していた。


「絶対痛いよおおお怖いよおおおやめようよおおお」


泣き虫少年ヴィラだ。


紫色の少年は一緒に剣術の練習をしていたはずのディナにフルボッコにされていた。

シータがげしげしと蹴り飛ばしている妹をヴィラから引き剥がすとそれは止まった。


「ディナ」


シータは嗜めるように名前を呼んだ。

ディナはむっとしながら言った。


「ヴィラが全然反撃してこないないから」


シータはダンゴムシのように膝を抱えて丸まっている少年をみた。

どれほど泣いたのか、袖口の色が変わっている。


少年は他人に触れに行くのが怖いのだ。エリーには気を許しているが、自分から誰かに触れに行ったりしない。

逆も然り、触れられることを恐れている。


「わたしは平気なのに」


ぽつりと言う妹の言葉になるほど、とシータはディナの頭を撫でてヴィラの前にしゃがんだ。


「うちの妹はヴィラが思っているより頑丈だ。だからこうして一緒に訓練をしている。母さんの鬼修行を笑いながら遊びと同じようにやるような奴だって知ってるだろ?」


恐れずにもう少しリラックスしてやっていいんだぞ、と言うとヴィラは鼻水を啜りながら頷いた。


「よし、再開だ」


ヴィラとディナが木の剣を構える。

シータが少し離れるとディナがヴィラに向かって走り出した。

ディナが剣を振り下ろすとヴィラは意を決してそれを受け、弾き返す。

風圧が発生したが、平気そうなディナにヴィラは安堵する。

二人の顔には笑みがこぼれていた。


「調子はどう?」


いつの間にか隣にエリーがいた。


「見ての通りもう大丈夫そう」

「あの子の相手は中々できる人がいないものね」


そう言いながら騒がしい周りを見る。

2人の剣が交わるたびに、風圧で木が倒れてゆく。

なかには木が根元からすっぽ抜けて森の方へと軽々と飛んでゆく。


あらまあ、とエリーは頬に手を当てた。


「うーん、もう少し丈夫な結界が必要かしら」


反抗しようとするとなんでも反発してしまうヴィラ、それに対して反発を受け流せる頑丈なディナ。

ディナの気が強い為ヴィラはいつも泣かされているが、元々2人の力の相性は良かった。

反発で他人を傷つけてしまう事をおそれて動かなくなってしまうヴィラの為にはじめたこの訓練は、成功したと言えるだろう。


「倒れた木は練習場用の板にでもしておこうかしら」


エリーは魔術で瞬時に倒れた木を割り板状にして、ふわりと浮かせて塀の近くに綺麗に積んだ。

そういえば今訓練場はヴィラが特訓した影響でかかしもボロボロだ。


「片付けなきゃなぁ」


エリーは視界が開けた夕暮れの空を眺めた。



〜魔王城にて〜

「魔王様、サイハテ村の調査にでていた者が戻って参りました!」


息を切らしながら広間に来た部下の表情はとても険しかった。


「現在集中治療を受けており、本人達はここに来られないとの事、お許しください」

「何があった」


嫌な予感しかしない。


「万が一のために魔術師エリーの攻撃に備え、何重にも魔術結界を施しながら調査を行なっていたのですが、村の近くで謎の風圧に見舞われ負傷した、との事です」

「結界があったというのにか?」


結界は小さければ小さい程強固となる。

それさえも破られたとなれば大問題だ。


「魔術結界は魔術や魔法を防ぐ事はできますが、空気を通す事と同じく風を通すことができます。飛ばされ物理結界に切り替えたのですが、大量の岩や木が丸ごと飛んできて対処しきれなかったと。……そこで彼らは気を失いました」


魔術や魔法ではなく物理。


「物理?あの村は翼が強靭な上位のドラゴンでも従えたのか?」

「それが……遠くから発生源を確認したところ、2人の子供が剣術の練習をしておりました。木剣で」


発生源が子供の剣術訓練 with 木剣?


「2人の子供の剣が交わる度に風圧が発生し、木が薙ぎ倒されていくのを使役獣のビジョンからも確認されています」


子供の、訓練でできた風圧で


「あの村は子供達も規格外なのか?」

「続きがあります」


ごくりと唾を飲み込む音がすると、部下は続けた。


「子供2人の近くに見守る青年がおりました。高度な結界を張っているのか風圧の影響は全く受けていない様子で。その後しばらくすると村から一人の娘がやってきて……倒れていた木を全て木の板に。一瞬の事でした」


部下は声を震わせる。


「そして、こちらをみて娘は『片付けなきゃなぁ』と」


「そ、それは倒れた木を片付けるという意味では」

「その時点でその場はすでに綺麗さっぱり片付いておりました」


また空気が重くなった。


「……もしやその娘が、魔術師エリーなのか?」


まさか彼女は村の子供ですら訓練させて、魔王城を片付けようとしている?

わからない、彼女は何が目的なのだろうか。


「物理結界の向上もすすめるとしよう。近くにいた青年とやらも気になる。引き続き調査を頼む。くれぐれも気をつけるように」


魔王は部下が広間から出て行くとゆっくり立ち上がり、先代の魔王達の肖像画の前で願った。

これ以上この城に、部下に、魔界に被害が出ないようにと。


だがその願いは届かずエリーのいつもの魔力放出が結界をぶち破り、今度は第一研究場が大破した。


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