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30、芽衣がメイド喫茶でテスト勉強します。ー文化祭編 F-

「スバスバっ!! 勉強を教えろ 」

 恒例のゆーりんの休憩室。休憩時間を中間テストの勉強で満喫しているところに芽衣が入ってくるなりそんなことを言う。突然すぎて言葉も出てこない。


「要するにだよ、赤点回避のために教えてくれってことだ。スバスバはそんなに成績は悪くないだろ 」

 まぁこの時期ということを考えると「勉強を教えろ」の時点で大体の察しはついていた。ついでに芽衣の成績が絶望的なことも知っているので赤点回避のためとか言われてもなんら驚きはしない。唯一驚くならいくら赤点回避のためとはいえ勉強をやろうという意欲があることぐらいだろうか。


「まぁ芽衣たちの先生を知らないからどんな問題が出そうとかまでは分からないけど分からない問題を教えてあげることぐらいはできると思うよ 」

 芽衣たちの通う山手高校は僕たちの通う凪沢高校よりかは一段階レベルが低い。加えて中でも成績の悪い芽衣の質問する問題なら十中八九解けるだろう。


「じゃあこの問1の(1)を教えてよ 」

 その問題とは直線のグラフが与えられていて傾きを答える問題だった。そしてその問題の上にある例題のところをみると数値を変えただけの同じ問題がある。そこまで複雑なものでもないし例題をちゃんと読めば分かると思う。というより中学でも同じようなものを解いた記憶がある。


「例題でも同じことをしてるけど要するに傾きってのはX座標が1進むのにY座標がいくら動いたかというものなんだ。だからこのグラフではX座標が2動く間にY座標が6進んでるから1動く間にはいくつ進むかってことだ 」

 芽衣の頭のことも考えてすごく丁寧に説明したつもりである。ここまでやれば後は割り算をするだけだし小学校2年生ぐらいで解けるのではないだろうか。


「次は(2)もお願い 」

「えーっとこれもまったく同じでX座標が3進む間に6進んでいるわけだから・・ 」

「ふむふむ次は(3)ね 」

「えーっとそれも同じで・・って全部聞いてるだけじゃないか! 教えた問題すら解いてないし!! 」


 しまった、場所を考えず大声で怒鳴ってしまった。幸いずっとスバルちゃんボイスで話してたしドアも閉まってるからお客様に聞こえたというコトはないと思う。

 それにしても数値変えただけの問題をすべて聞いてくるとはなかなかの度胸である。しかもあそこまで教えた問題を答え書かないとかいよいよ純なみの頭の悪さを痛感する。それともやる気がないだけか。どちらにせよここまで教えた問題を解けないとなると教えがいもない。


「よしもう芽衣は数学は諦めよう 」

「諦めよう。じゃあ次は日本史だ 」

 もう僕には無理だと思って教えるのを投げたが芽衣自身もなんともいさぎが良い。いさぎがいいのは大事とか諦めも肝心とか自分のできないところを自覚するのは大事とか言うけどまったくもってその通りだと思う。芽衣はどれだけやっても今の問題を解けるようにはならない。それならば自分は数学ができないと自覚して諦めたほうがよっぽど時間効率がいい。


「日本史か・・。まずはどの程度覚えているのかテストだ。問題出していくから答えてよ 」

 芽衣からテスト範囲のページを聞いて教科書を広げる。範囲としてはちょうど平安時代である。えーっとまずは芽衣でも分かる超基本的なことから。


「794年桓武天皇は長岡京からある場所に遷都しましたがそれを何京というか 」

「うーん・・・・・・ 」

 そこまで考える余地もない問題だと思う。何せ平安時代がテスト範囲だからそのまま平安京と答えれば良い。むしろ平安時代に遷都した場所で奈良京とか鎌倉京と答えらたらそれはそれですごい。


「ちょっと待って頭まで出てるんだけど・・ 」

 それを言うならこの辺まで出てるんだけど、だと思う。頭まで出てたらそれは単純に答えが分かっているってことだからね。

「あっ分かった! 平安京だ!! 」

「正解 」

「うっひょー!! やっぱ私天才っ 」

 僕も驚いたよ。あの芽衣の考えようからどうせ分かんないんだろうと思っていたんだから。

 この問題にあれだけ考えなきゃいけなかったんだから天才ではないが一つだけ訂正しよう。芽衣は純ほど頭が悪いわけではない。


「次いくぞ。十円玉にも描かれてる平等院鳳凰堂だがこれを建てた人物はだれか 」

 これは先ほどのより大きくレベルアップした問題である。答えは藤原頼道であるが少なくとも勉強してないとできない問題なので芽衣には絶対無理だ。

「スバスバ、私がこの問題を解けないとでも思っていらっしゃるのですか 」

「もちろん 」

「うぅっひどい 」

 即答してあげると涙目になって訴えてくる。そんなに悲しまなくても自分の実力を考えれば即答されることぐらい分かっていただろうに。それとなぜ一瞬敬語になったのやら。敬語をしってるとか芽衣らしくもない。


「まぁいい。とにかくだよ、私はこういう建物を誰が建てたかという問題だけは得意なんだ。ふふん 」

 ちゃんと「だけ」をつける辺りはわかっている。それにしてもこの自信は本当に分かっているのだろうか。建物に関する問題だけできるというのは珍しいというか怪しいがはったりならここまでの自信を持てるだろうか。これは期待してみよう。


「答えはねぇ・・ズバリ大工さんだよ 」

 期待した僕が馬鹿だった。芽衣がこんな問題を真面目に答えられるはずなんてなかったのだ。

 考えようによっては芽衣の言ってることが正論、つまり実際には頼道は命令しただけに過ぎないということではあるがこれは日本史である。そんな正論が通じる科目ではない。


「それじゃあ平等院鳳凰堂を大工さんたちに作れと命令した人物はだれ 」

 このままでは正論を述べられるだけなので言い方を訂正して再度問題を出す。もうこれで答えられるまい。ってかこうやってやってる以上答えてもらうのがベストなはずなんだけど。

「ひゅっひゅるひゅー 」

 案の定口笛で誤魔化そうとする。正確には口笛らしき音を喋って誤魔化そうとする。


「はいはい分からないんだな。答えは藤原頼道だ。じゃあ今の内に覚えとけよ 」

「よし、こういうのは語呂合わせで覚えると覚えやすいんだ。藤原が平等院鳳凰堂に寄り道する。藤原が平等院鳳凰堂に寄り道する。覚えたー! そうだこの調子で全部語呂合わせにしちゃえばいいんだよ 」

 なるほど語呂合わせとかは中々いい発想である。日本史みたいな覚えるのばっかの科目は人物名とかごっちゃになりやすいからな。藤原でも道長と頼道でどっちがどっちか分からなくなるのは経験にある。それに比べてこういう語呂合わせだと案外覚えやすかったりごっちゃにならなかったりするのだ。


「まずは一番始めに答えた平安京だね。桓武が平安時代に平安京。これで完璧!! 」

 それ事実を並べただけでなにも語呂合わせになってないぞ。有名な語呂合わせだと鳴くよウグイス平安京とかで794年に平安京に遷都したと覚えるけど。

「他に覚えることは 」

「えーっと・・ 」


 特にテストにでそうなところを探して教科書をペラペラとめくっているとぎーっと休憩室の扉が開く音がする。入ってきたのは金井さんだった。

「芽衣ちゃんじゃない! 偶然ねぇ 」

「金井先輩偶然ですね 」

 毎度毎度だが偶然でもなんでもないからな。一緒に働いている以上休憩時間重なるのなんて日常茶飯事だぞ。


「あら、すばるちゃんもいたのね 」

 完全に邪魔者だとでもいいたげな口調でそう言う。今回は無視をするパターンではなかったようだ。無視するパターンだと先輩を気遣う芽衣までが話してくれなくなるから悲しい。


「芽衣ちゃんは勉強してたんだ。偉いなぁー。で、すばるちゃんは日本史という暗記科目を教えようとしてるんだ。暗記するもんを教えるとかホント頭悪いねぇ。ホント頭悪いねぇ 」

 薄々は感じてたけど芽衣が一人でやったほうが効率がいいのは確かだ。覚えるべきところは太字にもなっている。でもさぁ僕なりに頼まれたからにはできる限り教えたかったんですよ。そんなに頭悪いとか言わなないで欲しい。それにこのこと言い出したの芽衣本人だからね。芽衣自身に頭悪いと言ってるのと同じだぞ。


「あぁそうだ。私のときの問題あげようか。科目によっては同じ先生だし参考になると思うんだけど 」

「マジですか!! よっしゃーこれで後一週間は遊べる! 」

 ここで赤点回避の救世主が出てくる。過去問とか反則でしょ。僕が教えてたのがまるで無駄じゃないか。金井さんがこちらを勝ち誇った顔で見てくる。金井さんと何かを競っているわけではないが負けた気分だ。


「はぁ・・ 」

 諦めた僕は再度自分のテスト勉強を開始した。

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