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19、お見舞いがなんでこんなことにー始まりの物語 後編ー

「ごほごほ、ごほごほ 」

 時間はもう4時で学校が終わった頃合い。ずっと寝ることができたので比較的体は楽になったがまだ熱はあるみたいで咳きも出ていて今はマスクをつけている。


『ぐ~ 』

 そういえば何も食べていないので異常にお腹が空いている。母は運悪く仕事で誰もご飯を作ってくれる人がいない。頑張っておかゆぐらいを作ろうか。

 空腹に耐え切れなくなりベットからだるい体を起こして立ち上がる。


『ピンポーン、ピンポーン』

 青のシンプルなエプロンをつけてキッチンに行こうとしたときインターホンが鳴った。宅配業者だろうか。ハンコをあらかじめ持って扉を開けて待っていたのは純、宅哉、コト、ほのかの4人。何とも珍しい組み合わせだ。


「よぉ昴。来てやったぜ見舞い 」

「やぁ昴。昴が風邪を引くなんて珍しいね 」

「それは僕が馬鹿だって遠まわしにいってるのかな? ごほごほ 」

「まさか、一言もそんなことは言っていないけど。それにしても昴に馬鹿の自覚があったなんて驚きだよ 」

「結局馬鹿だって思ってんじゃねぇか! 」


 純と宅哉はいつも通りの様子。一方女子お2人はというと。

 コトは僕のほうすらまともに見ずに頬がやや赤い。

 ほのかはほぼいつも通りだが微妙に機嫌が悪そう。僕を見る目が何だか恐い。


 コトは昨日の今日告白してきたばかりだから仕方がないが、ほのかについては見当もつかないのだ。今日学校で喧嘩したか。1人でお見舞いに来たかったが邪魔な3人がついてきたからとも考えられなくはないがそれも違う気がする。


「で、昴はどうしてエプロンなんてつけているんだ? 」

「作る人がいないからね。おかゆでも作ろうかと 」

「じゃあ寝ときなよ。おかゆとかは僕たちで用意するよ 」

「それじゃあお言葉に甘えて 」


 せっかく見舞いにきてくれたのに僕が色々してもかえって、来た意味がなくなって申し訳ない。僕は自室のベットに横になった。

 しばらくして話し声もありつつキッチンのほうでガチャガチャと料理を作る音が聞こえる。



「はい、すばっちできたよ 」

 おおよそ15分の経過。話し声がなくなってきたと思えば、ほのかがお盆におかゆを載せて持ってくる。


「ありがとう 」

 ベットから体を起こしてお盆を受け取ろうとする。しかしどうしてかなかなかお盆を渡してくれない。


「食べさせてあげようか 」

「えっ!? いや他の3人もいるし・・ 」

「へぇー他の3人がいなければいいんだ。安心して、飲み物が切れてたから色々買出しにいってるの。はいあーん 」


 僕はなすすべもなく口に第一投が放り込まれる。これをされるのは2度目になる。熱いおかゆにふーふーと息をかけて冷ますのは前回よりもドキドキするシチュエーション。

 それは風邪を引いているせいではなく簡単に表すならトキメク。やっぱリ僕は彼女が好きなのか。ほのかが続いて2投目を入れようとしていたのを僕は手で制して


「大事な話があるんだ 」


 自分が好きなのはほのかだ、そう自覚すると風邪を引いているにもかかわらずいてもたってもいられなくなって口が開いていた。


 言ってしまった。心の準備などまったくできてない。彼女はどう思うだろうか。この流れなら告白するのは必至だ。そして彼女自身もそれを待ち望んでいたのだから次の言葉を緊張して待つ、と思ったのにそれどころか来る時よりもさらに不機嫌な顔。

 これには拍子抜けというか理解不能というか・・。


「あのさ、すばっち。私が、すばっちのことが好きな私が説教するのもおかしすぎるけどこのまま告白されてもあんま嬉しくないからするね。すばっちって私のどこを好きだと思ったの? 神凪さんと比べて私のどこがいいと思ったの? 」

 ほのかは僕の言葉を遮るようにトゲのある口調でそう言う。


 彼女の意図は何だ? 僕の発言内容、告白すると分かった上での遮りかつどこが好きなのかの問い。まさかただの興味本位ではなかろう。だとすれば僕を試しているのだろうか? 答えによってはOKするし断りもする。

 引っかかるのはこのまま告白されても嬉しくないということ。どこまで僕のことを理解しているのかは知らないが好きな相手に告白されて嬉しくないことがあるだろうか。


 いずれにせよここ数日で分かったことを正直にそのまま伝えるまで。

「それは・・例えば一緒にデートをして手を繋いだりあーんとか? 今だってこうしてほのかといるのが楽しいと思える 」


 僕の答えを聞いたほのかはこれまでの怒りではなく悲しみに満ち溢れている顔をしていた。まるで失恋でもしたかのような顔だ。ますます分からない。


「すばっちはとことん愚かだね。そんなの優しくされて私をいい人だって勘違いしているだけだよ。優しくされて好きだと勘違いしているだけだよ。すばっちの好きに私のこういう性格が好きとかあった? 神凪さんよりいいと思えたところはあった? 」


 まさかこんな説教をされるなんて夢にも思っていなかった。でもほのかの意見は的を得ている。ほのかも体育倉庫で閉じ込められているのを助けてくれたりこうしてお見舞いに来てくれたり優しいところはあるがコトにも同じこと。たくさんの時間を過ごした分だけ僕の記憶はコトの優しさのほうがいっぱいだ。


 ほのかを可愛いと思ったことはある。上目遣いで見られたり無邪気にはしゃいだり。だがこれに関してもコトが同じようにすれば可愛いだろうし、幼馴染だからもっと他のコトの可愛さも知っている。


 結局のところ僕は数週間過ごして彼女を分かったつもりでいて知り尽くした気でいて全然知らなかった。彼女の甘さに思い上がってただけだったんだ。彼女と過ごしたのはたったの数週間なんだ。


 ほのかは僕の返答がないのをみてすぐに続ける。

「私はあるよ。まず8年前必死に探してもらえてそんなすばっちが私の目にはヒーローのように思えた。転校初日少しでもすばっちと話す機会を得ようと付き合ってるとか言っても私のことを思って決してクラスで嘘だって言わなかった。無理矢理デートに誘ったときも断れたのに付き合ってくれた。私の要望にはできる限り応えてくれた。すばっちはとても優しかった 」


 一旦深呼吸を挟んで


「だから私はすばっちがこれからどんなことを話そうとしているのは知らないけどあらかじめ言っておくね。・・・・・・私はあなたが嫌いです。すばっちのことが大嫌いです! 」


 最後のほうは叫ぶように悲しさや怒りを全部ぶちまけるようにしてそう言った。

 彼女の気持ちを僕が考えるのなんておこがましい限りだがそれでも考えてしまうとただただ罪悪感にかられる。これをほのか自身に言わせたなんてやっぱり愚か者だ。自分で気づくべきだった。


『ガチャリ』

「たっだいまー 」

 鍵の開く音と純の元気のいい声が聞こえる。


「そうそう最後に独り言。すばっちがいつか失恋をしたらそのときは好きになってるかもしれないなぁ。だからいつでも私はOKだよ。はい終わり 」

 まだ3人が僕の部屋に来るまでに「独り言」を呟く。本当にごめん。改めてそう思えてくる。


「何を話してたの? 2人で。怪しいなぁ 」

「何も話してないよ、コト 」

「もしかして好きなジャガポテチップスの味か? 俺は断然コンソメだぜ 」

「私はノリね。あのノリの香ばしい風味がたまらないわ 」

「純も雪前さんも定番だね。僕は関西限定北海道ジャがバター味だね。スバルはどうなの? 」


 話し声は漏れていたらしく怪訝に思う3人。おかしな純の解釈に先ほどまでの会話が嘘かのようにノリよくノリ味の話をするほのか。


 ってそんなどうでもいい親父ギャグは置いといて今大事なのはほのかについて。表面上ほのかからふったが実質は僕がふったようなもの。少なくとも落ち着いているはずはない。なにがあったかを知らない3人は気づかなくても僕には分かる。彼女の顔は暗い。

 今僕にできることはないので自身で復活するのを待つしかないだろう。そして僕もできるだけいつも通り振舞おう。


「僕は唐辛子かな。辛いのはわりと好きだし 」

 それにしても関西限定北海道ジャがバター味って突っ込みどころ満載の味だな。関西なのにどうして北海道? そういうギャグセンス溢れるところが関西らしいから関西限定ということかな。


「そう言うと思ってほら。唐辛子味。スバくんジャガポテチップスならいっつもこれ食べてたからついでに買ってきたわよ。それとスポーツドリンクも 」

「ありがとう、コト、みんな。がんばって明日までには治すよ 」


 そう、治して明日の放課後コトに告白の返事をする。だからこそ頑張って風邪を治す。


「ごほごほ。ふぇっくしゅん!! 」

 たぶん治るはず・・・・・・。

しばらくテストのため書けません。約2週間以上後になると思います。

次話はこの恋物語のエピローグ(この小説がおわるわけではありません)です。コトへの告白だったり風邪で倒れていた時のメイド喫茶風景だったり。

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