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第25話 深層の分かれ道

 右の通路を進み始めてから、しばらく経った。




 神殿を出てから、魔物との戦闘も何度かあった。




 そのたびにリナは【死影】としての力を見せつけた。




 一瞬で距離を詰め、急所を見抜き、最小限の動きで敵を倒す。




 以前よりも明らかに強くなっている。




「リナ」




「はい」




「その【死影】って、どのくらい強くなったんだ?」




「正確には分かりません」




 リナは少し考える。




「ですが、以前なら数秒必要だった相手でも、今なら一撃で倒せる場合があります」




「十分すぎるな」




「ただ、力を使いこなせているわけではありません」




「まだ慣れてないのか」




「はい」




 リナが前を見る。




「ですが、戦っているうちに少しずつ分かってきました」




 その言葉通りだった。




 【死影】になってから、リナの動きは戦うたびに洗練されている。




 役職そのものに、何か成長する仕組みでもあるのだろうか。




「……俺の【????】にも、そういうのあるのかな」




「分かりません」




「だよな」




 俺の職業は、名前すら分からない。




 何ができるのかも、まだ分からない。




 ただ、ステータスだけは明らかに異常なほど上がっていた。




 それだけでも十分ありがたい。




 問題は――。




「食料、あとどのくらいだ?」




「まだ余裕はあります。ただ、地上へ戻るまでを考えると節約した方がいいでしょう」




「やっぱりそうだよな」




 俺たちは深層にいる。




 帰還できる保証もない。




 できるだけ早く上へ戻らなければならない。




 そのときだった。




「……止まってください」




 リナが突然足を止めた。




「どうした?」




「前方に何かいます」




 リナの視線の先を見る。




 暗闇で何も見えない。




「魔物?」




「……おそらく」




「何体?」




「一体です」




 リナが短剣を抜く。




「ですが、今までの魔物とは違います」




「強い?」




「分かりません」




 リナが少しだけ姿勢を低くする。




「気配がほとんどありません」




「気配が……ない?」




「はい」




 俺も剣を抜いた。




 その瞬間。




 暗闇から巨大な影が飛び出した。




「来る!」




 リナが動く。




 一瞬で俺の前に出た。




 魔物の爪とリナの短剣がぶつかる。




 ――ガキィン!




「っ!」




 リナが後ろへ跳ぶ。




「硬い……!」




 初めてだった。




 リナの一撃で倒れない魔物。




 姿を確認すると、四本の腕を持つ大型の魔物だった。




 全身を黒い甲殻が覆っている。




「こいつ、かなり強いな」




「はい」




 魔物が再び突っ込んでくる。




 リナが横へ飛ぶ。




 俺も剣を構えた。




 魔物の攻撃を受ける。




 ――重い。




「ぐっ……!」




 腕が痺れる。




 ステータスが上がっていても、真正面から受け止めるのは厳しい。




「レオン様、避けてください!」




 リナが背後へ回る。




 しかし、魔物の腕が一本、リナへ向いた。




「リナ!」




 魔物の腕が振り下ろされる。




 リナは紙一重で避けた。




 そのまま地面を蹴る。




「――《影歩》」




 姿が一瞬だけぶれる。




 次の瞬間には、魔物の背後。




「《急所看破》」




 リナの目が鋭くなる。




「そこです」




 短剣が甲殻の隙間へ突き刺さる。




 ――ザシュッ!




 魔物が大きく吠えた。




 だが、まだ倒れない。




「まだ……!」




 リナが距離を取る。




 魔物が怒り狂ったように腕を振り回す。




 俺はその動きを見ていた。




 四本の腕。




 それぞれが別々の動きをしている。




 なのに――。




 妙に動きが読める。




「……右」




 俺が呟く。




 魔物の腕が右から飛んできた。




 避ける。




「左」




 今度は左。




 また避ける。




「上!」




 爪が頭上を通過する。




「……何だ?」




 頭の中に、妙な感覚があった。




 次に来る攻撃が、なんとなく分かる。




 ほんの一瞬だけ。




 未来そのものが見えているわけじゃない。




 ただ、「こっちに来る可能性が高い」という感覚。




 俺はそれに従って動く。




「レオン様!」




 リナが叫ぶ。




 魔物が大きく隙を見せた。




「今だ!」




 俺は踏み込む。




 剣を振り抜く。




 ――ズガンッ!




 魔物の甲殻が大きく砕けた。




「今の……」




 俺自身が驚く。




 明らかに、さっきまでより攻撃の威力が高かった。




 魔物がよろめく。




「リナ!」




「はい!」




 リナが一瞬で距離を詰める。




 短剣が急所へ突き刺さった。




 魔物が崩れ落ちる。




 静寂が戻った。




「……倒したな」




「はい」




 リナが魔物を確認する。




「レオン様」




「ん?」




「先ほどの攻撃ですが」




「やっぱり変だった?」




「はい。通常の攻撃とは違いました」




 俺は剣を見る。




「俺にも分からない」




 すると――。




 頭の中に、突然文字が浮かんだ。




【スキル条件達成】




【新たなスキルが解放されました】




「……え?」




 俺は固まった。




「どうしました?」




「いや……」




 俺は自分のステータスを開く。




 そこには、今までなかったスキルが一つ増えていた。




《先読》




説明:


敵の行動に存在する僅かな可能性を感知し、攻撃や回避の判断を補助する。




「……これか」




 さっきの感覚。




 あれは、このスキルだったらしい。




「新しいスキルですか?」




「ああ」




 リナにも見せる。




「《先読》……」




「俺にもよく分からないけど、さっき敵の攻撃がなんとなく分かったのはこれのおかげみたいだ」




「なるほど」




 リナが頷く。




「【????】の固有能力でしょうか」




「たぶんな」




 俺は再び暗い通路を見る。




 まだ出口は見えない。




 でも――。




 少しずつ、この職業の正体が見えてきている。




「行こう」




「はい」




 俺たちは再び歩き始めた。




 その先に何が待っているのか。




 まだ、俺たちは知らなかった。




---




ステータス




レオン・アストレア




- 職業:????


- 役職:貴族


- レベル:6


- HP:350


- MP:305


- 攻撃:158


- 防御:126


- 魔力:145


- 敏捷:122


- 運:43


- スキル:


- 《チャット》


- AIとの会話


- 遠隔チャット


- 《剣術》


- 《???》


- 《因果視》


- 《魔力循環》


- 《異常耐性》


- 《????》


- 《先読》


- 称号:


- アストレア家の嫡男


- 貴族


- 冒険者




リナ




- 職業:死影


- レベル:12


- HP:210


- MP:89


- 攻撃:134


- 防御:54


- 魔力:34


- 敏捷:173


- 運:40


- スキル:


- 短剣術


- 隠密


- 気配察知


- 暗殺術


- 《急所看破》


- 《影歩》


- 《致命追撃》


- 《殺気遮断》


- 《影縫い》


- 《死影の一撃》


- 称号:


- レオンの護衛


- 死影


- 暗殺者

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