第14話 初めての依頼
ギルドで薬草採取の依頼を受けた俺たちは、街の外へ向かっていた。
「レオン様、薬草の特徴は覚えておいでですか?」
「一応な」
依頼書には、採取する薬草の簡単な絵と特徴が書かれていた。
俺はその紙を見ながら歩く。
「葉の縁がギザギザしていて、茎に赤い線が入ってるやつだろ?」
「はい。よく覚えておられます」
「これくらいは覚えるさ」
門を抜ける。
街の外へ出るのは、これが初めてだった。
街道の先には草原が広がっている。
遠くには森も見える。
「思ったより普通だな」
「油断はなさらないでください」
リナが周囲を見回す。
「街の外には魔物が出ることがあります」
「分かってる」
俺も気を引き締める。
しばらく歩いていると、リナが足を止めた。
「レオン様」
「どうした?」
「あちらにございます」
指差した先に、依頼書に描かれていた薬草が生えていた。
「おお、本当にあった」
俺はしゃがみ込む。
「これで合ってる?」
「はい」
リナが確認する。
「では、根を傷つけすぎないように採取してください」
「分かった」
俺は慎重に薬草を抜く。
一つ。
二つ。
三つ。
依頼に必要な数を集めていく。
「意外と簡単だな」
「今回は採取場所が街から近いですから」
「なるほど」
俺は採取した薬草を袋へ入れた。
そのとき――。
草むらが揺れた。
「……レオン様」
「分かってる」
リナが俺の前に出る。
草むらから、小型の魔物が姿を現した。
「ゴブリン……?」
俺が呟く。
以前、話には聞いていた。
だが、実際に見るのは初めてだ。
ゴブリンは俺たちを見ると、手にした粗末な武器を構えた。
リナが一歩前へ出る。
「お下がりください」
「任せていい?」
「もちろんです」
次の瞬間。
リナの姿が消えた。
俺が目で追うより早く、ゴブリンの武器が地面へ落ちる。
そしてリナは、ゴブリンとの距離を一気に詰めた。
数秒後。
ゴブリンは逃げ出していった。
「終わりました」
「……やっぱり速いな」
「これくらいでしたら問題ございません」
リナは何事もなかったかのように戻ってくる。
「怪我は?」
「ございません」
「ならよかった」
俺は薬草の入った袋を確認する。
「依頼の分は集まったし、戻るか」
「はい」
来た道を戻る。
その途中、俺はふと思い出した。
《チャット》。
俺は周囲を確認してから、こっそり画面を開いた。
【レオン:エレナ】
すぐに返事が来る。
【エレナ:はい、レオン様】
【レオン:今のところ何か情報ある?】
【エレナ:まだ特にございません。ただ、昨日から商人の方々の間で少し気になる噂がございます】
【レオン:どんな?】
【エレナ:街の北側の街道で、最近魔物を見かけることが増えたという話です】
俺は少し考える。
【レオン:分かった。詳しく分かったら教えて】
【エレナ:承知いたしました】
そこでチャットを閉じる。
「レオン様?」
「なんでもない」
リナに聞かれても、それ以上は話さない。
《チャット》のことは、まだ秘密にしておく。
街へ戻ると、俺たちはそのままギルドへ向かった。
受付で薬草を渡す。
「確認いたします」
エレナが薬草を一つずつ確認する。
「はい。問題ございません」
「よし」
報酬を受け取る。
初めての依頼は、思ったよりあっさり終わった。
「これが冒険者の仕事か」
「今回は採取でございますから、比較的簡単なものかと」
「じゃあ次はもう少し難しい依頼にしてみるか」
「ご無理はなさらぬようお願いいたします」
「分かってるよ」
俺は笑った。
こうして俺たちの冒険者としての最初の依頼は、無事に終わった。




