69.勇者のねじろ 前編
「遅い!! アクセリの奴め! 一体いつになったら俺に倒されに来るんだ?」
「ベナークさま、そう急かさずとも直に参りますわ。その際には、手土産をお持ちのことでしょう」
「……手土産? あぁ、あの女どものことか。何が賢者だ。それに気付かず一緒に行動しているなんてな!」
「ええ……たとえそうならずとも、あなたさまにはわたくしが付いていますわ。先ほどもお話しました通り、残念ながら、劣弱のままで仲間だけを育てたようでしたわ」
「何だよ、デニサの呪いも解呪出来ないくらい弱いのか。あれだけ威張っていた奴が! はっははは!!」
パナセと契りを結んだ後、俺たちは魔窟の中を、前後に注意を払いながら歩いて進んでいる。
ストレに竜と化してもらい、飛んで移動するのが早かったのだが、進むにつれて魔窟が細く狭くなっていったのは、不覚であり想定外なことだった。
その間、先に進ませていたロサからの伝心でベナークPTの場所と、メンバー構成を把握することが出来た。
「(……なるほど。デニサの本体はすでに戻ったわけか)」
「(本体? ではアクさまは影と戦いを?)」
「(あぁ、まぁな。戦ったのはオハードだが、竜人ストレに吹き飛ばしてもらった。お前は平気か?)」
「(もちろんですわ。少々の頭痛を感じますけれど、戦うに問題はありません)」
「(分かった。俺が着くまで待っていてくれ)」
「(いつまでもお待ち申し上げておりますわ!!)」
「(あ、あぁ……急ぐ)」
頭痛を起こしているということは、何かしらの呪術を辺りに施しているのか。
俺の方の戦力は、ストレとアミナス……そして俺の精霊要素になる。
薬師二人には後方で支援をしてもらうしかないが、俺が思っている最悪の予想では、薬師……特にパナセは敵側につく可能性がある。
俺と契ったからといって、深く眠る能力が全く干渉して来ないとは限らない。
「……ほえ?」
「ふ、つくづく可愛い奴だなお前は」
「はふぅぅ~~バカ正直ですねぇ、アクセリさまは」
「バカでは無いぞ!!」
「はひぃぃ! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」
パナセは相変わらずだが、ルシナは神妙な顔つきになっている。
ストレは俺に従い、アミナスは自分自身に危険を感じれば、戦力となるだろう。
「奥に進むにつれて、今は全く襲って来ない敵の姿も見えるはずだ。気を抜くなよ?」
「わ、分かってるってば! パナのことは任せてよね!」
「おっさん、心配なんてするな! なのだ」
「ヌシさま……理解済み」
パナセに注視しながら、俺自身の力を徐々に開放していくしかなさそうだ。




