60.魔王城への寄り道 1
「わわわぁ! ストレちゃんだぁ~……んん? ストレお姉さまと呼んだ方が?」
「好きなように呼んでいい。パナセ……?」
「うんうん! わたしより大人っぽいけど、ストレちゃんだ!」
「パナセ……変わった?」
「ほえ? ううん、わたしはそのままだよ?」
ストレに乗ってしばらく経ち地上に降り立つと、目を覚ましたパナセが興奮しながら、ストレに話しかけまくって来た。
ルシナを含めた他の者は、竜人を初めて見たらしく、ストレを警戒してしばらく近付かなかった。
しかし緊張感のないパナセの姿を見て、危険では無いと判断出来たらしい。
「――それで、アクセリよぉ? その竜に乗って乗り込むのか? 勇者が世界の悪ってんなら、魔王ってのはどうなんだ? 俺はリルグランから出たことがねえから分からねえことばかりだ」
「そうだな……ここに来るまで、俺の知っている勇者が一人だけじゃないことにも驚いているが、ことごとく悪に染まっていることにも興味が失せない」
「悪の勇者ぁ? 単に自称しているだけじゃねえのか?」
「いや……俺の知っている勇者は、俺を追放した時点……それ以前から、魔族との繋がりを持っていたかもしれないからな。正しき勇者と呼べる者ではないのかもしれん」
俺とパーティーを組んでいたベナークは、本性を隠していた。
黒のデニサなる女がそうであったのなら、一緒に行動をしていた時から、企てをしていたに違いない。
「ルシナとロサ! 俺の元へ来てくれ」
「う、うん。何?」
「フフフ……公開お仕置きをされますか?」
「いや、真面目に聞け。いいか、真面目に答えてくれ。この世界の勇者の名前は?」
「勇者の名前……?」
「フフ、アクさま……いよいよですのね」
ロサは何か知っていても、オハードと同じく隠居していた身だ。知らなくても不思議はない。
だがルシナに至っては、たとえ隠里に居続けたとしても、世界を知る長として生き続けて来たはずだ。
以前にパナセが答えた時は4人いて、その内の一人は女の勇者ということだったが……。
「アクセリはずっと眠っていたって聞いているけど、この世界の勇者は2人のはず……」
「何ッ!? 4人では無いのか? パナセの勘違いか? 自称の2人は倒したから合っている……か」
「あれ、違うかな? ……2人いて、一人は勇者ベナーク。もう一人は、魔王側についていた――」
「魔王? 魔王なら倒したが違うのか? いや、魔王も勇者と同じ数だけいるんだったか?」
「もう一人は血を分け与えた関係で、名前は確かシュニーシア・デニサだった気がするけど」
「デニサ……なるほど。そういうことか」
それならば、なおさら確かめに行くしか無さそうだ。
「アクセリ?」
「お決まりになりましたのですわね?」
「そうだな。魔王が君臨していた城に向かう」
「え? で、でも、アクセリの賢者としての力は? いくらパナとか、ロサさん……オハードがいてもやられてしまうんじゃ……?」
「心配するな。ルシナはオハードの背中に隠れていればいい」
「え、うん……」
決戦というほどの戦いにもならないが、魔王の城に立ち寄れば大体のことは、分かるだろう。
ストレが戻って来た……その時点で、小さな町や国に寄る必要など無くなったも同然。
そしてストレとロサにはすでに分かられているが、精霊要素の力は問題なく発揮出来る。
後はパナセに変異の力を使わせることなく、事を運べばいいだけのことだ。
「よし、夜が明けたら行くとする。洞窟の中で休んで、体力を養え!」
「あ、うん。じゃあ、パナに伝えて来る」
このPTが勇者と戦えるかといえば、何とも言えないが、これ以上の成長を望んでは贅沢というものだ。




