表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/78

39.召喚士と黒騎士の対峙


 何ということだ。隙の無い黒騎士に対して、初めて油断を生ませたというのに。


「パナセッ! おいっ!!」


 暴風に曝されている黒騎士は、しぶとさを見せながらその場に踏み止まっているが、姿の見えないパナセからの返事が返って来ない。


「くそっ! 俺としたことが……」

「くくく……どこにいるかまではこの俺でも分からなかったが、薬師の女だけが飛ばされてしまったようだな。女の声で一瞬だけ力を弱めただろう? その隙に我が槍で全身を固定させてもらった」

「ち、ちくしょう……パナセ……」


 無風の岩窟であれば、手練れな相手でも吹き飛ばせるのは確実だった。


 しかしパナセの動きを予期出来なかったのは悔やみであり、敗北を意味するのは明白だ。


「……俺の負けだ。好きにしろ」

「そうさせてもらうが、貴様がそうまで生き続けるのは何故だ?」

「何のことだ?」

「勇者に裏切られ追放された挙句、劣弱賢者の成れの果てとなった。それがどういうわけか、使えもしない女どもを引き連れて各地を彷徨っている。貴様の目的は何だ?」


 劣弱賢者を知った上での情けのつもりがあるようだが、知らせたところで黒騎士とは分かり合えないだろう。


「目的は勇者を世界から消すことだ。その為に、弱かろうが成長に望みをかけられる者と、戦える者を連れて旅をしているだけだ。お前も知っての通り、俺だけでは戦えないのだからな」

「……ふん、弱体しても賢者らしく動くか」

「変わりようがないからな」

「……」


 俺の話を聞いても情けをかけるほど甘くもないようだ。


 パナセを失い、俺もここで果てるのか。


「さっさと始末したらどうだ? 劣弱賢者に用など無いだろう?」

「……勇者を消す、か。面白い」

「俺を奴隷として生かすつもりか?」

「それも悪くないが、俺の”目当て”がようやく姿を見せた。貴様は薬師の女の所にでも行け!」

「なにっ!?」


 処されると思っていたが、黒騎士は体の向きを変え、俺ではない何かに敵意を向けている。


『うーうー!! ガンネアに手を出すのは許さないのだー! そういうことだから、大地の神蛇(ミドガルズオルム)さまに飲まれちゃえーなのだ!』


 聞こえた声は、外で泣きじゃくっていた召喚士アミナスであり、怒りか何かで呼び出した大蛇を黒騎士に向けている。


 どうやら泣き止みと同時に、召喚士として何かを悟ったか。


 そうでなければ制御の効きそうにない荒れ狂いの大蛇を、容易に御する事など出来るはずも無い。


 大蛇を呼べる程のスキルを秘めていたとは正直驚きではあるが、やはり俺の慧眼に間違いなど無かったようだ。


 黒騎士とアミナスに目を向けた時だったが、目の前を影が覆いかぶさった。


「――ぬっ!? ん……むっ!? な、何?」

「プハー! えへへ……アクセリさまの息吹を頂いてしまったです~愛の力は不滅なのですよ」

「不意打ちにも程がありすぎる……一体、いつから俺の前にいた? というより、失ったものとばかり思っていたぞ……」


 暴風で吹き飛ばし、てっきりコイツ(パナセ)を失ったとばかり思って落胆していたが、召喚士に救われたか。


「それがですね~不思議なことが起きまして、吹き飛ばされたと思っていたら、モフっとした何かに包まれていたのです! そのまま連れられてここに戻って来たというわけなのです。えっへん!」

「良かった……お前を失ったかと思った」

「ア、アクセリさま?」

「傍にいると言っておきながら、許可なく俺の傍を離れたパナセの罪は深いぞ……」

「えええええ!?」


 思わず思いきり抱き締めてしまったが、今は召喚士の強さを確かめておくとする。


「え、あれ? 力強く抱きしめて頂けたのに、もう離れられるのです?」

「いや、お前……どこか生臭いぞ。モフっとした感触と言っていたが、お前を救ったのはアレじゃないのか?」

「ひぃええええ!? へ、蛇……蛇だったのですか!?」

「ふっ……はははっ!」


 黒騎士の妙なる情けと召喚士の怒りで、九死に一生を得たようだ。


 おまけにパナセの幸運を手にしていたことで、果てる機会も失わせたとみえる。


「パナセは俺にしがみついたまま、戦いを記憶して閃きを生み出せ。出来るな?」

「閃きですか? やってみますです~」


 黒騎士の狙いは召喚士……いや、呼び出す獣にあったようだ。表情は俺の時とは比べ物にならない激変ぶりを見せている。


 アミナスの意思が獣に伝わっているかは分からないが、大蛇のうねりによる猛進は明らかに黒騎士に向いているようだ。


『劣弱賢者と薬師は獣をほふった後に、下してやる! 逃げるなら逃げてもいいが、すぐに追い詰めてやる』


 狭苦しい岩窟内で大蛇に対峙していてもなお、気を緩めることは無いらしい。


 召喚士と黒騎士の戦いで俺の運命も変わるか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ