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34.賢者のゆく道へ  ③


「うぅぅ……おかしい、おかしいぞ! おっさん、外をどこに隠した?」

「おかしいのはお前の方だろう。岩屋の住人が何故岩窟に出たとたんに迷いだす? 外を隠すとは、滑稽な思考だ。面白いのは認めてやるが……案内役が迷う時点で、勝負にならないぞ」


 アミナスと威勢よく名乗った召喚少女は、ルシナたちを岩屋に残して俺だけを連れ出した。


 それは何の問題も無く、力を得る俺にとってはその方が得策と承知していたのだが……


「案内役が道迷いとは、まさかと思うが岩屋の外を一人で歩いたことがないのではあるまいな?」

「な、何を言うかー! あたし……わ、我は強いのだから他の者に任せることが多かっただけだ!」


 小柄な種族がどこかに動く時、単体ではなく集団で動くことが常識とされているが、恐らくこいつは一人で外に出たことが無く、せいぜいが岩屋が見える所だけだと判断出来る。


 赤茶色の前髪を片側に分け後頭部に髪をまとめ上げ、額を広く出し、碧色のつり目をしているアミナスと名乗る小娘は、可愛らしく、それでいて凛々しくも見えるが、態度だけが先行して可愛げが失われている。


 召喚士は薬師のように、顔を隠せるフード付きのチュニックを纏う者が多いが、コイツはその逆で顔を出して派手に見せ、装飾品を見せつけながら進みまくっている。


「アミナスとやら、その装飾品は飾り……いや、魔力の安定を求めたものか?」

「ほう! おっさんのくせに詳しいじゃないか。その通りだ! 我のように魔力も力も強い召喚士は、そうそういないのだ! 我だけが呼べる獣だってあるんだからなー! ふっふふー!」


 力は確かにありそうだが、力よりも精神が不安定のようにも思える。


「珍しく見えるが、お前は顔を出す召喚士か。親に咎められなかったのか?」

「アミナスと呼ぶがいいぞ! 親……親は召喚に食われてすでにいない。素顔を出さなければ、獣との信頼を得られない時があるのだ。賢者のくせに知らないのか? おっさん」

「アミナス……アミでいいな。なるほど、信頼か。確かに俺の要素も機嫌を得られない時があるからな。だからといって、親は食われないが」

「何だ、同情しないのか? おっさんは案外、冷酷なのだな」

「ふ……されたかったのか。その手の話を容易にする時点で、俺を試しているのだろうがそう容易くは落ちないぞ」

「うがー! むーむーむー! そ、外はどこなのだー! 賢者、お前が案内しろー」


 どこまで真の話かは分からないが、小娘の信頼を得るには信じることも大事なのかもしれん。


「……アミに頼むとするが、案内の獣を呼び出せ! 光の生物カーバンクルならば、宝石の光を成して外へと導き出すはずだ」

「賢者のくせに、知っているのか! そ、そういうことなら呼んでみる……」

「あぁ、頼む」

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