21.強制的な仲間入り ②
パナセが愉快な女というのは、天性のものだと信じて疑わなかった。
おかしな合成力があるのだから、普段もそれに負けず劣らずな言動や行動を起こしても、変だとは思わないはずだ。
それがまさか俺のせいにされているとは、この女はよほどパナセが大事ということらしい。
「さぁ、俺の名誉を傷つけた代償を償ってもらうとしようか」
「償うということは、私を傷つけるおつもりがあるのですね?」
「どうだろな。そうされたいのなら要素にそう告げておくが、加減をしてもいいぞ」
もちろんそんな気はないが、魔法の使えないパナセと違って好戦的にも思える。
こういう相手には言葉よりも、力を示した方が分かりやすい。
「要素? 賢者でありながら、精霊術と盟約を交わしておられるのですね。興味深い……」
「そこまで大層な相手でもないが、喰らってみるか?」
「いいでしょう……ですが、その前にエルフに邪魔されても面白くありませんし、民を傷つけたくありませんから、霧の結界を張らせていただきます」
「ほう……? ロサの気配も感じていたか」
ダークエルフでアサシンのロサには里と外の境界線上を見張らせているが、普通の者にその気配を気取られるような油断をする奴ではない。
それに気づく辺り、この女は気の類が強いとみえる。
この女を仲間にすることで、パナセの潜在能力というのが覚醒すれば、使えそうではあるが……。
「……民に仇なす可能性を断つ! 里と民……我らの幸を芽吹かせ、霧と成す! レサルフォッグ!」
「ふ……それが敵対への呪いか。面白い」
「心配ですか? ですが、霧はあくまで結界であり、攻撃する意思を持ちません。アクセリさまの精霊術が当たったとしても、霧を解くことはございません」
「大した自信だな」
この女の魔力は使えるかもしれん。
ただでさえ、俺の力は全てが弱くなり過ぎている。
魔法使いの薬師を加えれば、ハッタリでも勇者の一人くらいは引っ張り出せるかもしれん。
「……結界は成り立ちました。アクセリさまのお力をお見せくださいませ……その力を判断とさせていただきます」
「随分と上から言うではないか! 俺の力が偽だとして、それ以外でパナセを懐柔しているとでも?」
「あなたには見えない何かで女を囲み、弱くし続ける、魅了の術式を使用している可能性があります! そんな邪な者に、パナセを預けるわけにはいきません!」
何という酷い言い草だ。
ベナークの野郎にはその疑いがあったが、俺にはそんな虜要素を従う魅力が無いと自負出来る。
ルシナという女は相変わらずフードで顔を隠しているが、感情を取り乱すところをみると、相当自意識過剰な女だということが分かる。
「どうしました? 私に精霊をぶつけないのですか?」
「こう見えても俺は紳士でね。無防備な者に無意味な攻撃をするほど、悪者でもないのだよ」
「ではやはり、魅了の力でパナセを虜に……ゆ、許せない」
どうやら勝手な憶測と妄想で、パナセが縛めを受けていると思っているようだ。
「やれやれ……」
「こ、来ないのであれば、私が賢者もどきを去らせます!」
「もどき……か。今はそう言われても反論出来ぬが……」
ルシナという女の手元には、渦を巻いた風のようなものが見えている。
「喰らいなさい! 虚ろなる愚者! 霧散せよ、仇なしの彼方へ!」
――!?
霧と風を合わせたか……ちっ、ダメージそのものは大したことないが、切り傷が厄介だ。
霧には攻撃意思を持たせないと言いながら、きっちり霧を使うとは、この女は使えるかもしれん。




