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22.強制的な仲間入り ③


 今まで数々の敵と対峙して来たことを生かすべきなのは今なのか、それともそこまですることでもないのか。


 霧そのものからは痛みを伴うものは来ていない。


 しかしルシナという女が風と霧を混ざり合わせたことで、手足には無数の切り傷を負ってしまった。


「霧に紛れて、真空の刃を仕向けるとはやるじゃないか!」

「本当の魔法士じゃありませんから。敵を欺くには、集中させるべく所を変える必要があるんです。それより、賢者であるあなたは、これでも攻撃をして来ないのですか?」


 この女はどうして攻撃をされたいのか、あえてパナセに危険な男だと説くためなのか。


 このままチクチクと細かい傷を作るのは割に合わん。


 いつまでも顔を隠したままで調子に乗られても困るし、仲間に出来るか試してやるとする。


『凍てつきの大気、我が問いに応え、冷たき眼差しを以って問いただせ!』

 

「――きゃあっ!? さ、寒い……こ、凍え――」


 あんまり使うつもりは無かったが、顔も見せぬ礼儀知らずな女の姿を露わにするには、身にまとっている装備品全てを凍らせて、粉々にするのが手っ取り早い。


グラースエンド(氷の終末)を放ってやった。お前のような聞き分けの無い女にはこれがいいだろう」

「……うぅ……」

「おっと、一歩でも動くと身に着けているものは、全て砕けて消えるぞ」

「こ、こんなことをして、そこまで女を弱くするつもりですかっ!」

「違うな。ルシナとやら、お前こそ素性を隠したままではないか。俺の力を拒むようなら、辱めを受けることとなるが、どうする?」


 もっとも霧の結界をしている時点で、たとえ衣服が砕けて裸を晒したとしても幻で済んでしまうが。


「あぁ、もうっ! もういいですっ! わたしの負けでいいです! だから術を解いてください」

「それがお前の素か。だいぶ、マシになったではないか。パナセほどではないが……」

「は、早くしてくださいっ!」

「お前が霧の結界を解けば、俺の要素など無意味となる」

「え……」


 本格的に攻撃するやり方なら、まどろっこしいことはしない。


 だが相手も霧という結界を守りに使った以上、俺もそれを利用しない手は無いだろう。


「ず、ずぶ濡れ……ひ、ひどい」

「俺の責任では無いぞ。霧と氷の相性が悪かっただけだ。さて、顔を見せてもらおうか」


 ただでさえ霧で濡らしていたチュニックは、水を吸い込んで重みをつけていた。


 そこに氷を付け足したこともあり、術を解いたと同時に、薬師の女の全身はずぶ濡れとなった。


「……わたしの顔なんて見ても面白くないですっ!」

「――いや」


 目は口程に物を言う……よく聞くものだが、ルシナという女の瞳はそれ以上に綺麗に輝いていた。


 薬師でありながら魔法の類を使う時点で、この女も神秘的な何かを感じていたが、オッドアイだとは思わなかった。


 耳も多少尖っているように見えるが、水に濡れた赤色の長い髪の鮮やかさで気になるものでもない。


「その瞳、耳はパナセとは違うが……魔法が使えるのはそういうことか?」

「パナセとは姉妹です! でも、わたしはハーフエルフと呼ばれている。もういい?」

「パナセのような妹で大変かもしれんが、長として里を守っていたということか」

「わたしが妹! パナセが姉なの!」

「あぁ、出生の違いによるものか。なるほどな……」


 中々興味が湧く女だ。


 ハーフエルフの力が関係しているのか定かではないが、敵に体を傷つけられたことで、俺の力は以前より強くなった感じを覚えた。


 Mではないのだが、魔法による痛みを受けることで、力を得られるということかもしれん。


『ルシナちゃーん! 出来上がりっ! なのだー!』


「あはは……あの子は本当に変わらない。わたしより姉のはずなのに、幼く見えるのはあなたに優しくされているから?」

「それは知らん。だが、俺は救われた。パナセに声を掛けられなければ、土に還っていたのかもしれん」

「ふーん? 元々は全てを操れた賢者が、劣弱に……ね」


 ルシナという女がハーフエルフであるのなら、パナセもその可能性があるが、間近で顔を見たことが無い。


 この女の言う通り、潜在能力を隠し持っているなら普通の人間ではないということになる。


 しかし種族が違うからと言って、PTから追い出すような愚かなことはしない。


「アクセリさま~! 見てみてっくださいっ!」

「何だ? 何か出来上がったのか?」

「これをお飲みくださ~い」

「うぐっ!? ごほっ!? な、何をする……」

「大成功~! アクセリさまが消えた~! わーいわーい!」

「な、何!?」


 喜ぶパナセの傍らで、ルシナは口に手を覆って青ざめているようだ。


 パナセについて回っていた里の民たちも、どうすればいいのか右往左往している。


 俺はどうなったんだ。


 まさかパナセに消されてしまったのか?


「アクセリさま~! えへへ、この機会にどんどん見つめて欲しいのです! わたし、わたしをですよ~」

「パナセをか?」

「ですですっ! ルシナちゃんばかりずるいのです! さぁさぁ!」


 底抜けに明るすぎるパナセが、俺に何を飲ませたかはこの際、気にしないことにする。


 まずは言葉通り、パナセの全てを確かめてやる。


 それが済んだら、薬師の女……ハーフエルフを加えてやるとするか。

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