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ブルーストーン  作者: 海来
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最終話 本当の名前

瓦礫の中に立っている二人の元に、城中の人間が集まろうとしていた。

 シャンはガリアと共に最上階だった自分の寝室の残骸の上に立っていた。

「酷い有様だ……僕は、あまり覚えていないけれど……、どうして青の魔石はこんな事を……」

 自分の胸にそっと手を当てながら、シャンが呟いたとき、

「守護者さま、ご無事ですかっ」

 叫びながら、クラーツが崩れた階下からの扉の残骸を乗り越えてやってきた。クラーツに続いて、続々と人々が押し寄せてくる。口々に守護者さま、守護者さまとシャンを呼ぶその中には、明らかにシャンの家族であろうと思われる、王とその后に、妹も混ざっている。

 ガリアは、それが気に入らなかった、シャンはシャンだと思った。彼女の安否を気遣うのに、家族が守護者さまと呼ぶことに違和感を覚えずにはいられなかった。ガリアは、シャンの前にすっと立ちふさがった。

「シャンを気遣うなら、こんな時ぐらい守護者と呼ぶことはないだろう。自分の娘を娘として心配してやれないのか」

 ガリアの言葉を聞いて、王が答える代わりにクラーツが前に出て、膝を折った。

「青き剣士殿、我が城には守護者さまがいらっしゃるのみ……これまで、そうしてやってきたのでございます。先日、その事はご理解いただけたと思っておりましたが……」

 ガリアは、いいやと言いながらシャンの肩をそっと抱いた。

「シャンの心が悲しいと言ってるなら、俺はそれを守ってやらなきゃならない。シャンは守護者であることを拒んでいるわけではない。だが、シャンとして見てもらいたいと、愛されたいと願っている……なっそうだろう、シャン?」

 シャンの肩が、ガリアの手の中で震えていた。

「幼い頃から、皆に愛されたいと願ってきた……でも、それは……守護者として許されない事と……決まっている……守護者は、神に愛される存在だから……」

 ガリアは、シャンの肩を掴んでいる手に力を込めた。

「違う……古の魔法の言葉は、俺に違う事を教えてくれた……守護者は愛されていいんだ、全ての人に一人の人として愛されるべきなんだ。そして、守護者の心を守る者と結ばれる……皆にとって、シャンはシャンでいい」

「ガリア……本当なの?……」

 ガリアは顔を覗き込んでくるシャンに優しく微笑んだ。

「それを知りたければ、俺と一緒に古のトンネルを通って、ダルタの小屋に行こう」

 そう言うと、ガリアは剣で空を切って開けた空間へとシャンと共に入っていった。皆があ然とする中、空中に出来た亀裂から金色の蔦が吐き出され周り中を取り囲む。見る見るうちに、崩れていた城は何も無かったように元通りの状態を取り戻した。

「あの子の母が、先代の守護者が言っていた事がある……この城のどこかに古の魔法が隠れていると……自分も見た事は無いが、その力は凄まじいと伝えられているのだと……あの青年は、その魔法を使うのか?……いったい彼は……」

 アクアリスの国王は、呆然としながら閉じかけている空中の亀裂を見つめていた。クラーツの横に、シャンの妹のティナ姫が立っている。

「あの人は……恋人? 守護者さまの恋人なの?」

 クラーツが首を振った。

「いいえ、あの方はガリア、シャン様の恋人です。そして、守護者を守る青き剣士……」








「綺麗だ……あっ読める……この文字は魔術に使われる文字……今まで見た事も無いのに、なぜ読めるのかな……」

 シャンは、トンネルをぐるりと埋め尽くす魔法の文字を見つめながら、その煌めきの美しさに魅了されていた。同時に、それが読めて、理解できる事に驚いてもいた。

「シャンが、本当の自分の心に向き合ってるからこれを読めるんだ。そして、闇の力を抑える事が出来る」

「どうして、守護者の心と、闇と戦う事が関係あるのかな……」

「守護者の心が闇に飲み込まれたら、この世界は終わりだ。いつも、心は守られなきゃならない。シャンの心は俺が守る、安心しろ……もう、闇に付け込まれたりさせない」

「ガリア……あの、言いたい事が……言わないといけない事が……」

 ガリアは、シャンの肩をポンポンと叩いて微笑んだ。

「さっ、ダルタの墓参りが先だ。その後で、ゆっくり聞くよ、時間はたっぷりある」

「でもっ」

「でもはなし」

 ガリアは、シャンの手を引いて走り出した。










 シャンは、ガリアの作ったダルタの墓の前で手を合わせている。

 ダルタの墓は、大きな木が生えていた。その木の花は今が満開と咲き誇り、薄いブルーの花が甘い匂いを振りまいていた。

「この花、シャンに似てる……これなら、ダルタは淋しくないな……これさ、グロウが見つけてきたんだ。やっぱり、あいつは賢い馬だ」

 少し離れたところで、グロウがヒンっと自慢げに鳴いた。

「ガリア……ありがとう、きっとダルタは喜んでる。この森が、この場所が大好きだったから……、ねェ、また此処に来れるかな? えっと、一緒に……」

 ガリアは、シャンの唇にそっと自分のそれを重ねて、そのままシャンを横抱きに抱えた。

「ガッガリ、アっ」

 ガリアは、そのままダルタの小屋に入って、シャンが使っていた小さな寝台の上にシャンを下ろした。

「シャン……俺に、言いたい事があるんだろう……言って……」

 シャンは、あまりの展開に口をパクパクと動かすだけで、何も言う事が出来ない。

「言いたい事があるって言ったのはシャンだろ、言ってくれないと、俺は先に進めない……」

「先ってっ!!」

「口づけよりも先……」

 ガリアの瞳は熱っぽくシャンを見つめる。

「あっあの、えっと、僕……」

 ガリアは、シャンの指を持ち上げそれに口づける。

「僕じゃないだろう……シャンは男じゃない……まぁ、どっちでもいいけど……シャンはシャンだからな……」

 シャンは、ゆっくりと震える指をガリアの頬に添えた。

「ガリアを愛してる……ずっと一緒にいて欲しい……ずっと、私を見てて欲しい……守って欲しい、あなたを愛する私の心を……」

 ガリアは、ふーっと大きな溜め息をついて、シャンのからだの横のシーツに顔を埋めた。

「ガリア?」

 シャンが、不安そうにガリアの名前を呼ぶと、ガリアがガバッと顔を上げた。

「俺も、俺も愛してるっ、ずっと一緒にいたい……ついこの間まで、叶わないと思ってたのに……」

 ガリアは、シャンの上にかぶさる様にシャンのからだの両脇に肘をついた。

「愛してる……シャン」

 ガリアの唇が、シャンの唇と重なった。

 熱い唇の感触のあと、直ぐに侵入してきたガリアの熱い舌が、シャンの舌に絡んできて、シャンは息をつくことも出来ないほど苦しかった。

 やっと離れたガリアの唇は、二人の唾液で濡れていて、シャンは顔を背けたくなるほど恥ずかしかった。

「シャン、口付けをする時に息を止めてちゃ……死んじまうぞ」

「ばっばかっ、僕はガリアみたいに慣れてないっガリアがはじめ、て、だ、った……」

 もう一度、ガリアの唇がシャンのそれに重なり、優しく舐めたあと口づけを深くしていった。

「じゃぁ、これからのシャンは、全て初めてなんだ……初めてのシャンを俺に……くれ……」


「ガリア……ぁ……」


 ガリアの唇が、シャンの首筋に降りたときには、シャンの身体はすでにほの赤く染まっていた。


「シャン……この銀の髪も、薄いブルーの瞳も、白い肌も、細い腰も、柔らかい胸も……全て俺に……俺だけに……」


 シャンは、ガリアに縋りついた。


「私の全ては、ガリアのために……」


 二人は、お互いを確かめ合うように……優しくゆっくりと睦み合っていた。


 最後に二人が繋がった瞬間……


「ぁ……な、に……」


 シャンの胸の谷間の青の魔石があった所から、柔らかい青い光が発っせられ、二人を包み込んだ。


 青の魔石の声が聞こえた……

『心を守られし守護者、その名は、ブルー。守護者と青き剣士のみが知る名……』


「シャンの本当の名前……シャンと俺だけが知ってる……」


「ええっ、あなたと私だけ……」


 ガリアがシャンをその腕にしっかりと抱きしめる。


 シャンは、ガリアの背にその腕を絡めた。



 上り詰める二人の意識は、同じ方向へと向いていた。


「俺の……ブルー……愛してる……」


「ガリア、愛してる」




『願いは果された……世界は救われる……真の守護者現われ、闇を滅す。ブルー、世界を見守り続けるのです……それが、あなたの使命だから』









ご愛読いただきましてありがとうございました。

話の展開に、躓くことが多く、苦労しました。

もっと勉強しないといけないと反省しました。

拙い作品にお付き合いくださった皆様に、感謝しています。ありがとうございました。

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