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五葉松 ゴヨウマツ

 先日お散歩中民家の庭先に面白いものを見つけました。

 鉢の中に松を植え奇妙な形に仕上げてゆく。

 そう盆栽です。


 ほぼ毎日その家の前を通りがかって居る筈ですが、見る気で見たのは先日が初めてでした。

 40センチくらいの鉢の中に不釣合いな幹の太さの五葉松を植え形を整えてあります。

 見る人が見れば名品かもしれませんが、見る目が無い自分には只の植えてある松です。

 正に猫に小判状態です。

 

 ですが、猫にも判ることがあります。

 それは樹木が只まっすぐ伸びているより、所々ぐにゃりとひん曲がり所々枯れたように中の芯が出ている方が見ごたえがあると言う事です。


 タダまっすぐなら一見みて「はぁ、そうですか?」と一瞬で飽きてしまうでしょう。

 丁度100金で売っているお皿のように全部が全部同じなら見る価値無いですしね。

 遠くからぱっと見ればそれで用が済みます。

 ですが、ひん曲がったり枯れた様な景色が有れば色々想像力を掻き立てることでしょう。

 もしかしたら風雪に耐えながら育ったから曲がったとか、もしかしたら落雷のような事故トラブルに巻き込まれても尚耐えて生き延びている……など等。

 そして自分の生きざまに投影して心を揺さぶられるかもしれません。

 木材用のヒノキみたいにまっすぐな木なら風情もへったくれも有ったものじゃないです。

 

 小説も同じだと思います。

 キャラが葛藤し傷つきそして戦いながら成長してゆく。

 これはストーリーの王道です、これを外して書いている人はまずいないでしょう。

 出会い、別れ、再開、裏切りなど等、そのブロックを(ロジック)をくみ上げ失敗なく最小のルートで結末まで導けば破たん無く黄金のルートでストーリーは出来上がる筈です。

 

 これが実際の人生に置き換えればどうでしょうか?

 実際の生活では完璧なものはありません。

 失敗して、更に失敗して、そして躓いて起き上がっても成長するとは限らない……。

 其処に苦悩し、葛藤しそれでも尚前に進んでゆく。

 そこが人間臭さ、キャラの個性になっていくと思います。

 ごく一部のエリートは別なのかもしれませんが、自分を含め大多数はそうだと思っています。

 ――不完全なものだから人間……――だからこそ完全なのだ。

 某小説であった言葉ですが真実だと思います。

 全部が成功して破綻無く進めば見た目は良いでしょうが、そこに居るキャラ達に人間臭さを感じる事は無いと思ってます。


 完璧な答えは機械でも出せる。

 でも、不確定要素一杯で不完全でお間抜けな答えは人間にしか出せない。

 ――だからこそ、その行動が人間臭く……そして愛おしい。


 鉢の中で健気にひん曲がった松をみてそんな事を感じました。


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