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Battle Galaxy FullーDive  作者: ネムノキ


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31/36

イベント! 3

「善戦しているな」

 『巣』近傍一〇万キロメートル地点に『ジャンプ』した『JP1船団』の面々は、キャスタニカ連合艦隊の奮闘ぶりをそう評価した。

「二週間前は艦隊行動も怪しかったひよっこ共が。やれば出来る連中だな」

 『JP1船団』提督のタカノはニヤリと笑う。彼の中には、キャスタニカとかソルジャーとかワーカーとかいう括りは存在していない。『どれだけ人類に貢献出来るか』が全てだ。

 その評価に当てはめて。落第点以下だったキャスタニカの連中が合格点まで這い上がってきたことは、嬉しいことだった。


 だが、多くのソルジャーは違う感想を抱いた。

「もうあんなに動けるようになってやがる」

「俺達、いらなくなるんじゃねえか?」

 キャスタニカは味方だというのに、彼ら彼女らに恐怖したのだ。自分の存在理由が奪われることが、ソルジャー達は怖かった。

 そんな反応を予想していたタカノは、船団に通信を入れる。

『提督のタカノだ』

 その一言で、ソルジャー達の背筋が伸びる。

『我々の仲間であるキャスタニカ達が、舞台を整えてくれた。

 見せつけてやれ! 誰が船団を守っているのか!

 誰が人類の未来を開くのか!

 我々の誇りを! 見せつけてやれ!

 ……以上だ』

 たったそれだけの激励で、ソルジャー達の目から恐怖はなくなり。ソルジャー全員が、『英雄(ヒーロー)』の表情になった。


「『巣』からエネミー一〇万体、接近中! 第二波として五万体も『巣』から出現しています!」

「予定通り、第一波との距離六万キロメートルでグラビトン・カノンを放つ。焦るなよ?」

「はいっ!」

 エネミーは隊列を整えて、秒速五〇〇キロメートルで船団に接近する。

 同期をとうに済ませている船団は、突出しているステーション・ワンがグラビトン・カノンを撃った後の準備をしつつ、じっと待つ。

 そして。

「距離六万キロメートルです!」


「グラビトン・カノン、照射!」


 タカノの命令と共に、人類最強の『矛』が放たれる。

 光とほぼ等しい早さで放たれた濃紺のグラビトン・カノンは、船団に接近しつつあったエネミー第一波の大半と第二波の全てを破壊して。


 〇,三秒。

 『巣』に到達し、周辺に浮いていた護衛の超大型エネミーが消し飛ぶ。


 一秒。

 照射点から半径一〇〇〇キロメートル圏内の『棘』が歪み千切れて消滅する。


 二秒。

 『巣』の強靭な外殻が歪み、バラバラと剥がれ落ちるように消えていく。


 二,七三秒。

 ステーション・ワンの上部広域で連続した爆発が起こり、安全装置が働いてグラビトン・カノンの照射が止まる。


「被害報告!」

「上部排熱装置がオーバーフロー! 故障のち幾つかのプラズマパイプが熱で溶解し、複数区画が溶け落ちました!」

「ダメコンを送れ! 被害を拡大させるな!」


 ダメコン、この場合のダメージコントロールは、修理班のことを指す。隔壁閉鎖やプラズマパイプへの供給停止だけでは拡大を防げない損害も多く。また修理出来る場合は復旧作業も行う。ステーション・ワンのような大型艦艇では、非常に重要な仕事だ。


 ステーション・ワンの修理と平行しつつ、船団は動く。

「予定通り、船団本隊前進を開始。前衛防空球形陣に移行します!」


 前衛防空球形陣は、艦隊の前方に船をやや多く配置した、防空戦闘に特化した球形の陣形だ。普段の『JP1船団』も、この陣形を取っていることが多い。


「エネミーは!?」

「『巣』から続々と出現し、こちらに向かってきています! 数は……、一〇万、一五万、まだ増えます!」

「ほう」

 まるで巣を壊された蜂のようだ。いや、この場合はそのもの、なのか。

「『巣』からの出現が止まったら言ってくれ」

「はいっ!」




 エネミー第二波に突撃していたキャスタニカ連合艦隊は、エネミーの挙動が変化したことに気付いた。

「ディスラプターの砲撃間隔延びたか?」

「シールドの出力も落ちてるぞ!」

「陣形も崩れてないか?」

 一瞬で二〇万近いエネミーが崩れ消え。その中枢たる『クイーン』を守る『巣』に多大な損害が出たことで、『クイーン』は自分を守るべく、最大の脅威と見なしたステーション・ワンに意識を集中し。

 結果、連合艦隊と向き合っているエネミー艦隊に割り振られていた、『クイーン』の演算領域が大幅に削られ。その戦闘能力が大幅に低下したのだ。


「距離三〇〇〇キロメートルを維持! 砲撃を継続しつつ、ザコを送り込め!」

 損耗率三八パーセントに到達していた連合艦隊前衛は、エネミー艦隊から三〇〇〇キロメートル離れた『至近距離』で停止し。人型兵器『ザコⅡ』をエネミー艦隊に突入させる。


 研究段階で、そのあまりの弱さから『雑魚』と呼ばれていた人型兵器は、そのアダ名がそのまま公式の名称となり。量産型として二番目の型になって、ようやく実戦で使えるレベルのものになったものだ。

 戦闘機や艦艇ではどうあがいても勝てない程、突出した格闘戦能力に、近接戦闘すら可能な『ザコⅡ』は、艦隊内部での戦闘では尋常ならざる戦闘能力を発揮出来る、とシミュレータでは出ていた。

 ただ、損耗率はえげつないことになるので、キャスタニカしか運用出来ないが。


 そんな、思い思いに塗装された人型兵器一三〇〇機が、先に倒れた船の残骸と共にエネミー艦隊に突撃する。エネミーはディスラプターを放つも、砲撃間隔が延び、また集弾性も落ちていることからザコ部隊一〇〇〇機弱の接近を許し。

「ヒャッハー!」

「食べ放題だ!」

 その攻撃をまともに食らった。

 デブリの直撃により、エネミー艦隊の先頭集団が壊滅し。艦隊内に入り込まれたザコⅡの猛攻により、一体、また一体と一キロメートルを越えるエネミーが沈む。

 防空の戦闘機級エネミーが、その巨大な人型を破壊しようと迫るも、コンマ一秒以下で進路を一八〇度変えてしまう『化物』相手には敵わず。落とされたり、誘導されて戦艦級エネミーに突っ込んだりする。

 その間も、連合艦隊前衛は砲撃を続ける。


 キャスタニカ艦隊側の戦闘は、終盤に入ろうとしていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 巨大ロボットの晴れ舞台を無理やり作ったね [気になる点] 「雑魚」がそのまま制式名称? 自虐すぎる開発陣 [一言] きっと 「いきまーーーー」すとか 「当たらなければーー」 「悲しい…
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