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Battle Galaxy FullーDive  作者: ネムノキ


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イベント前哨戦……の会議1

 BGFD初のイベント『アギタリア星系争奪戦』の一週間前になって、イベントの詳細が公式サイトに掲載された。


 人類初のコロニーが建設されていた、アギタリア星系。

 新天地は、エネミーに蹂躙され滅亡した。

 その地からエネミーを駆逐し、船団の資源を確保するのだ!

 前哨戦は既に始まっている。

 君の船団への貢献を期待する!!




「事前にプレイヤー(キャスタニカ)で集めた情報の方が細かいよねー」

「確かに」

 ステーション・ワンの大会議室に呼ばれて。先に座席に着いていた、『マミヤ輸送艦隊』の提督の犬コーディ男、リンゾーの隣、部屋の後ろの方に座って。私達は、会議の始まりまでの雑談に興じていた。

「アギタリア星系への移民は『ステーション一型』、船団のステーション・ワンの元になった船一隻で行われたのよね」

「増えすぎた地球の人口を減らすための棄民だったからな」

「そうそう。で、『アギタリア・ワン』への移民途中に、移民船団は人類として初めてエネミーと接触。防衛戦力が戦闘機しかなかった移民船団は一方的に蹂躙されて。地上でゲリラ戦に移行したら星ごと破壊されましたとさ」

「移民出来る星が残っていないから『資源を確保』なんだよなあ」

「土星クラスの水素型惑星はあるし、砕けた星の残骸もあるから、占領さえ出来れば資源はウッハウハなのよねー」

「公式サイトに『第二陣』の募集があったからな。恐らくこの星系を奪取出来れば、第二陣が船団に増える」

「たぶんだけどそうだね。『JP1船団』は鯖人口も少ないし」

「……ここの運営、真面目に会社経営する気あるのか?」

「だよねえ。こんなマゾゲーやりたがる人なんて小数だし」

 グダグダ話をしていると、マサトミがやってきた。なんだかしんどそうだ。

「ようマサトミ。副官はどうした? お前んところの艦隊規模だと、副官同行必須だろ?」

 リンゾーが尋ねると。

「それがな」

 とため息混じりにマサトミは言う。

「他のメンバーはリアル事情で来れなくてな。特に、エネミーシールド搭載したエースが身内の不幸でイベント自体やれそうになくて、な。

 俺も、イベント期間中その葬式に出るので、本当は別の奴が来るべきだったのだが。タイミングが悪かった」

 そんな状態なのにログインしてくるなんて。真面目というか、融通がきかない、というか。

「悪い。気分の悪いこと言わせたな。手伝えることはあるか?」

「いや、大丈夫だ。引き継ぎの準備もしてあるし、最終日の『お祭り』には参加出来る」

「そうか。無理すんなよ」

「ですよ。何なら私が資料まとめとくんで、今日はログアウトしたらどうですか?」

「いや。…………すまん、頼らせてもらっていいか?」

「はいな。私視点で画像と音声も撮っておくんで、編集版と無編集版も渡しますね? 副官のリーシャさんに送ればいい?」

「そうだな。恩に着る」

「恩はジャンクかエネミージャンク売ってくれたらそれでいいです」

「分かった。ありがとう」

 フラフラと、マサトミは大会議室を出ていった。

「全く、クソ真面目なやつだ。もっと頼ればいいのに」

「しんどい時、って頼る発想自体思い付かなかったりしますからねー」

「だとしても、だ。ところで、録画機能、ってボディのか?」

「ですです。アンドロイドはデフォルトでそういう機能があるので」

「便利よなあアンドロイド」

「でも、特殊能力系のスキル一切覚えられないんで。戦闘向きじゃあないんですよねー」

「確かに。特殊能力強いからなあ」

「【共振】持ってるだけで船体にステータス乗るようなるからねー。しかも乗算で」


 特殊能力系スキル【共振】は、乗って操縦しているモノと共振して、ステータスの倍率を乗せる強力なスキルだ。前提条件として『一〇〇〇時間同一の船を操船する』必要があるけれど、裏技があって。

 人型兵器なら、一〇時間乗っただけで【共振】を習得出来るのだ。しかも人型兵器だと乗る倍率も大きい。

 そのため、イベント前は他のキャスタニカから人型兵器を借りて【共振】獲得を目指していた人が結構いたけれど。獲得する前にイベント前哨戦が始まって。獲得出来なかった人が多かった。

 ただ、デメリットもあり。【共振】している船がダメージを受けると、最大でみぞおちを軽く殴られた程度の苦痛を味わう、らしい。そんなスキルばっかり実装するから不人気なんだぞこのゲーム。


「俺は痛いの嫌だから【共振】持ってないけどな」

「ま、そんなもんですよねー」

「で、すっごい今更なんだが。なんでお前、この会議に呼ばれたんだ? リックスとレミュエルは呼ばれてないみたいだからジャンク関係ではないだろ?」

「私は『まるゆ』関係で呼ばれたのよ」

「まるゆ?」


 まるゆ、と愛称の付いている『次元潜航輸送艦』は、カーゴが少ないことと持てる攻撃手段がクソザコナメクジなことから、乗っているキャスタニカは少なかった。

 私以外だと、『カール・オーヤッツ潜航艦隊』の補給艦な四隻の他、特に艦隊に属していないのが二人いた、はず。

 ちなみに『艦隊』とは、他のゲームでいうところの『クラン』や『ギルド』といったプレイヤーの集まりであり。その長である『提督』になるには『艦隊への献身的な貢献』が必要となるそうな。

 リンゾーはBGFD始まってすぐに。マサトミは船にエネミーシールドを乗せた時に。『提督資格』を得たらしいので、その『資格』の条件はよく分かっていない。


「まるゆって次元潜航艦には間違いないが、輸送艦だろ? 何に使うつもりだ?」

「それは私も知りたい」

 と言っている間に、照明が薄暗くなり。正面に青白い船団の紋章『太陽系を包むオリーブの葉』が空中投影された。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 惑星を破壊したって地表面を焼き尽くしたとかじゃなく惑星を砕いたのか アステロイドベルトが出来そう [気になる点] 身内のご不幸で艦隊不参加 妙にリアル [一言] リンゾー艦隊とかユニー…
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