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ワンダーティース!  作者: 梢田 了
白黒つけるぜ武闘祭!
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第五十七話 何処かで会ったことが? ~クランとランクとクンランと!~

 それらの訪問に気づいたのは、寝床の準備をしている時だった。

 リーダー・ヘイズの前に、四方から集まり何事かを小声で話す白外套の者共に、彼は警戒心を強めた。

 すでに陽は無く、キャンプ地の各所を火が照らしている。それを受けて、埃に汚れた薄黄色を見せるそれらの数は六。

 ひとつを先頭に、彼の前にやって来た者をヘイズは何事かと強めの口調で問う。

「我等は帝都から派遣された者です。この町の復興状況の進捗と、我等の労働隊の状況を把握する為に派遣されました」

「わざわざ、夜にか?」

「不手際がありましてね。本当に、役所仕事は困ったものです」

 肩を竦めるその者を鼻で笑う。

 後ろに続く白外套を引き連れているのは女だった。ヘイズはそれでもより一層に警戒心を強め、何故、自分に接触したのかを問う。

 ヘイズらは外部の人間だ。黒の集団の設置物に対して意見することはあっても、所詮は帝都の下に就く。それを、わざわざ彼等のまとめ役でもない自分の元に言葉をかけに来たのか。

 それに対しても女は肩を竦めて、偉大なるギルドマスター・ヘイズを知らない者などいないと述べるのみ。

「リーダーだ。ギルドマスターなんて肩書きを持った覚えは無い」

「それは失礼を。ところで、この地でなにか変わった物はありましたか?」

「何もない。異常も無ければ危険もないよう、あんたらの指揮官は上手く現場を回してくれているよ」

 それは結構。

 即座に答えたヘイズに、後ろに控える者らが怪訝な声を上げるのを女は押し留める。

「やはりランク違いか」

「あの方が読み違えるとも思えんが」

 彼等の言葉を耳にして、ヘイズが眉を潜めると同時に、彼等からクンランと呼ばれる女は背を向けた。

 そのまま去ろうとする相手に、何事かと顔を向けるレイニーらに気にしないよう指示を出すヘイズ。

 そこで彼は、思い出したようにクンランと呼ばれる女の名を呼んだ。自己紹介すらしていないその女は、気安く呼ばれた事を不快に感じたのか、表情が固い。

「何処かで会ったことが?」

「…………。申し訳ないけど、私の記憶が正しければ気のせいね」

「レノーラの名前に覚えは?」

「ありません」

 クンランの返答に、そうかとヘイズは短く答えて頷いた。閉口する男に用は終わったかと、クンランは事務的な笑みを浮かべて場を後にする。

 彼と出会う前に話しでもつけたのか、帝都から派遣された者らに接触しようとはしない。ヘイズはそれを見送って、誰か、自分の他にあれらと相手をした者がいないかと問いかける。問いに答えたのはノノムラだった。

「自分が」

「何を聞かれた?」

「帝都の人間だと聞いたので、復興作業の進捗と、俺たちの指揮官、つまりヘイズについてですね。所属ギルドと人数、それから復興場所に設置されていた何某かの阻害系マジックアイテムについても……話ましたが……」

 自分たちの情報で渡ったのは自分という男の風体と、グループの人数だけという事か。

 彼らに何かあるのかと不安げな顔をするノノムラに、ヘイズはすでに休もうとしている労働者全員を叩き起こしてでも、みっつのグループにまとまって寝るよう指示を出した。

「ノノムラはレイニーと組め。ダイテツとカンナは休んでいろ。俺と、帝都側のリーダーから見張りを数人入れる。交代制で番をするぞ」

「あいつら、何者です?」

「〝クラン〟の連中だ。あいつらを追って黒の集団が来るかも知れんし、あいつら自身が向かって来ないとも限らん」

 クラン。それは、亜人らの集うグループを指す言葉だ。常人たるプレイヤーらには分からぬ特別な条件をもって組織される彼らは帝都が警戒する勢力のひとつでもある。

 その帝都からの応援が到着するまであと二日。そのタイミングで現れた視察団の如き動きも気になるが、彼らの興味を引いていたのは例のマジックアイテムと見て間違いないだろう。

 亜人であると断定するヘイズに何故かとするレイニー。ヘイズは、ただ白外套が闇に紛れるのを見送ってから、ぽつりと呟いた。

 あの女、昔の連れだ、と。

 顔は変わっているが、その目には覚えがある。それはただの推察ではなく、確信を持つ言葉だった。レイニーとすれば、それが確定する確たる証拠があるものとばかり思っていただけに頭をかいて困惑しているようだ。

 が、この男が頑なにこれだと言うのであらば、そうなのだろう。ノノムラと共にリーダーの言を伝えるべく離れた彼女らと別に、ヘイズはダイテツに向き直る。

「ダイテツは陽が昇り次第、キャンディロードに向かえ」

「連れてくのは黒ちゃんでいいか?」

「ああ」

 ヘイズの返事にダイテツは嬉しそうに手を打ち合わせる。

 彼らの移動に使用するランナードラコと呼ばれる六足一角の獣は、以前、トバリらを乗せた荷車を引いていたように温厚な性格でプレイヤーらの輸送に適する。

 力はあるものの、普段は輸送の為にのんびりとした足取りであるが、走るとなれば荒馬のようだ。また背骨から伸びる中段の足には皮膜があり、これを使用して飛行することが可能だ。

 頭部の角や、空を泳ぐように飛ぶ姿と地を疾走する力強さに因んでドラコと名付けられた。が、その生態は竜を思わせるような爬虫類的なものではなく、牛や馬と似ており、全身にも体毛を持つ。個体によって模様に違いがあり、ヘイズらが連れる二頭の内、頭部に黒い模様があるものが黒ちゃん、首筋から背、尾にかけて白い体毛を持ち一本角に桃色のリボンの巻かれたランナードラコを白ちゃんと呼んでいる。

 特に黒ちゃんは体格が大きく、彼らのギルドである第一グループの中でも最高の速度と力を持つ。

 その分、速度を出した黒ちゃんの扱いは難しいが、ギルド内でも随一の乗術を持つダイテツとは相性が良かった。

「俺と黒ちゃんなら、二日で戻って来れるな」

「三日で構わん。瓦礫運びで疲れているだろうし、無理して怪我をさせる必要は無いからな」

「それだと、出発に間に合わないんじゃないか?」

 ダイテツの言葉にヘイズは思わず唸った。

 彼らが滞在する予定は明後日までだ。その日には帝都から先発隊の援護に派遣される後続隊が到着する。そしてこの日には町の瓦礫は運び出しも終る予定で、後の建造や各施設の復旧が行われ、彼らの役目も終えるのだ。

 その後は再びシート荒野を渡り今後の活動の方針を決める為にギルド、世界の剣と盾の会合が行われる〝霊峰ピーチランナー〟に挟まれた谷間にある〝アップルバレー〟へ向かう。このグループの中で会合に出席するのはヘイズ、カンナのみであるのだが、残りの三名は警護に回される予定で、多くの兵を指揮する立場にもある。

 穴を開ける訳にはいかず、かと言って、ヘイズはトバリを放って置くことはしないだろう。

「私が残りますよ」

 唸る二人へ声をかけたのはカンナだった。例の転移用マジックアイテムが使用可能になったのだと言う。ならば、ここに残って復旧活動に尽力し、ダイテツと合流次第、アップルバレーへ一足先に転移すれば問題ないだろうと。

 ダイテツはそれに同意し、ヘイズも了承した。

「カンナ、お前も魔力の消費が激しくなるだろうが、一先ずは堪えてくれ」

「構いませんよ。これもお仕事ですし」

 微笑むカンナにヘイズも笑う。

 ノノムラらに起こされて不機嫌な声を上げるプレイヤーらの移動を手伝いながら、ヘイズは夜空を見上げた。

 盟友の顔を思い浮かべて、胸に込み上げるものが体を熱くさせる。

(俺の選択は間違っていたのか、レオン)

 最早、嘆きも、後悔もただただ遅く意味を成さない。だからこそ、進むと決めた道を信じて進むしかない。

 会合にて、自らの出来うることを打ち出せねばなるまい。ヘイズは選択を迫られていた。

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