125.刻印の殺人鬼
ラスペガを出た後、本当にいつの間にか素知らぬ顔で俺とグールの会話に割り込んできたセシルに、一発ぶち込んでから、一先ず帝都を目指し出発した。
そんな折。グールが寝静まった夜。野営の火の番をしていた時に、セシルが突然話し始めた。
「『刻印の殺人鬼』。巷ではそう呼ばれているそうだ」
「は? 何が?」
脈絡どころか、会話がなかったのに急にぶち込んできたどこの誰とも知らない殺人鬼の話。俺は素でそう聞き返していた。
「最近、帝国支配地域で暗躍している殺人鬼の話である。先日のアレも、その者の殺人であったようだ」
「あいつか……物騒だな。しかも、タチが悪い」
あの殺人鬼は、恐らく本気を出せばかなり強い。俺が簡単に撒かれた。それは油断というより、逃げ出すとは微塵も考えていなかったというのと、空間が上手く発動しなかったせいでもあるが、それを踏まえても、あいつを捕まえるのは骨が折れる。
俺の攻撃を受け切っていたし、何より空間が上手く働かなかったのは、恐らくあの殺人鬼が何かしたせいだ。スキルを無効化するスキルでも持っているのかもしれない。
だとすると、魔王級に厄介な相手だ。
「ククッ、上手く撒かれたようだな」
「……まぁな。久しぶりにやられたって感じだよ。それで、その『刻印の』って言うのは、どういう意味なんだ?」
「およそ一年ほど前から、帝国支配地域で刻印を刻まれた死体が多数見つかるようになった。刻印1つ1つは似通ってはいるが、異なる紋様であるそうだ。しかし、帝国はこれを同一犯の犯行と考え、現在大規模な捜査を行っている。そして、その過程で、殺した相手の体に刻印を刻む殺人鬼という意味で、刻印の殺人鬼と呼ばれるようになったようだ」
刻印か……
聞いた事はないが、それで魔法か何かを発動させるつもりなのか? 悪魔召喚的な。
それとも、サスペンスで見た快楽殺人犯からのメッセージ的なやつか?
まぁ、その刻印を見てみない事には何とも言えないか……とまるでその思考をトレースしたか如く、セシルは刻印の書き写しを手渡して来た。
俺はそれを受け取ると、暇潰しついでに目を落とし……
「ッ……⁉︎」
戦慄を覚えた。
食い入るように、その紙に書かれた刻印なるものに目を落とす。
その刻印、一つ一つに目が釘告げになり、それを持つ手が小刻みに震える。
嘘っ……だろ……?
信じたくはなかった。けれど、信じざるを得なかった。
紙の上に描かれた決定的証拠を前にしては……
紙にはこんな刻印が描かれていた。
『95人目』
それはまごう事なき日本語。見間違いでも、読み間違いでもない。
そこには『95人目』と日本語で文字が刻まれていた。
「クククッ、主のその顔。これは思わぬ報酬だ。何か心当たりがあるのであろう? いったいどんな心当たりがあったのやら。実に面白い」
「……面白くねぇよ」
嬉々とした笑いに俺は冷めた言葉で返す。額には、薄っすらと汗がにじみ出ていた。
『刻印の殺人鬼』は日本人。
それは、もう疑いようがない。
そして、今この国には、日本人が30人以上いる。帝国の勇者として。
あの中に、殺人鬼が……
〜〜〜〜
季節は梅雨。この時期は理由がない限りは街に引き篭もるに限る。旅に出るのも依頼に行くのも、ぬかるんだ道を歩いてドロドロになるのは余り気持ちいいものではない。
旅というのは、自由気ままにやるから楽しいのだ。嫌な事をする必要はない。何せ急ぐ理由がないのだから。
一応俺たちは帝都を目指してはいる。しかしだ。それは、春樹達の修行の為にというもので、俺が急ぐ理由にはならない。
むしろ彼らの中にいる殺人鬼をどうやって見つけるか考える時間が欲しい。向こうは俺の顔を把握してるから、俺が近くにいれば何もしない可能性だってある。
どうにか犯人を特定する方法はないものか……
一方、魔人に関してもこの時期に動く理由にはならない。どうやって魔人を生んで、何を目的に、誰がやってるのか、何もわからない。手段に関しては色々と心当たりがあるが、どれかは特定出来ない。
正直に言おう。
誰かが魔人化してくれないと手が出ない状況だ。一応、セシルには何か情報はないかと調べて貰っているが、余り上手くはいっていないようだ。
せめて仇はとってあげたかったが、この調子では厳しいかもしれない。
そんな風に街の中で引き篭もっている俺だが、何もしていないわけではない。ダラダラと1日過ごすのも嫌いではないが、そう長くは続かない。
何より俺はグールの夢を応援したいと思った。だから、ここ数日はギルドの修練場を借りて、彼の修行に付き合っていた。
「違う! もっと相手を見ろっ! ただ型通りに動くだけじゃ当てられないぞ!」
「はい!」
元々根性のある子だった。ラスペガの街を出てまだ一ヶ月と経っていないが、一度も弱音を吐かずメキメキと実力を伸ばしていた。
『蛇の毒』にいた頃は、半分暇潰し程度に優しく教えていたが、今は厳しく教えている。その甲斐あってか、もう十分魔物と戦わせてもいいと思えるようにまでなった。
突然だが、この世界で強くなるには3つ方法があると、俺は思っている。一つは単純な身体能力の底上げ。次にスキルをひたすら磨く事。最後に日々の訓練。
この中で最も簡単なのは、一つ目の方法だ。後の2つは往々として時間がかかるもの。
つまり、手っ取り早く強くなるには、魔物を倒しレベルを上げるのが一番早い。
帝都に着くまでに魔物との戦闘を重ねさせるか。
そんな方針を自分の中で立てつつ、グールの剣を弾き返した。段々と弾きかえす手にも力が入る。重さが乗り、いい太刀筋になってきた。
まぁ、全部がそうではないけれど……
短い接触を続ける剣戟の音が、カンカンと鳴り響く。その音のリズムは一定で、聞いているだけなら心地良いと感じるかもしれない。
しかし、一定のリズムというのは、時に読まれやすく、また反撃されやすい。だから、俺は自らそのリズムを崩し、体でそれを教える。
ほんの少し剣の速度を上げたり落としたり。または、フェイントを入れて、出来た隙を狙うなどして、グールの動きに変則性を持たせる。
まぁ、グールはすぐに動きが破綻して、一撃喰らう。それを責めやしない。俺もそんな時期はあったし、時間がかかる事も身をもって知っている。俺の場合ディクとの勝負の最中にやってたから、結構いいのを貰う事もあったが、怪我をさせるつもりないので、威力は軽く痛い程度に押さえている。
まぁ、長い目でいこう。そのうち出来るようになるさ。
そんな風にグールの成長を手助けして2週間。ようやく梅雨を抜けた。
そろそろシャルステナと別れてから1年。彼女達ももう王都には着いた頃だろうか?
そんな思いに身を寄せつつ、俺達は帝都へと出発した。
帝都までどれくらいかかるのかは知らない。何せどこにあるのか知らないのだ。一先ずはこのユーロリアから脱出する事を目的に、港を目指している。
そこから船で海を渡り、帝国と王国のあるカルマン大陸へと入る。後は道すがら帝都がどこにあるのか聞いて進むだけだ。
その合間に、グールを強くする。それが彼の夢に繋がるかはわからないが……彼が拒否するまでは続けるつもりでいる。何せ、グール的にはまだどうしたらいいかわかってない様子だから、それまでは一つの道として教えるのも悪い事ではないだろう。
「グール、今度こそ初陣だ。敵はゴブリン。いけるか?」
「う、うん」
若干緊張している様子のグール。俺は、軽く笑いかけると安心させるように、声を抑えて言う。
「お前なら大丈夫だ。いつもやってる事を思い出せば、問題ない」
「……うん」
俺の目を見て少しだけ不安が取り除けたのか、小さく頷いて、グールは剣を抜く。すると、タイミングを見計らっていたかのように現れたゴブリン。あいも変わらず醜悪な見た目で、気持ちのいいものではない。殺して奪ったのか、手には錆びれた剣を持っている。
「丁度いい。どれだけ剣が上手くなったか、あいつで試してみろ」
「うん……ッ!」
細く息を吐き心を落ち着かせたグールは、気合いを込めて踏み込んだ。
グギャギャ!
ゴブリン語で何か言いながら、鈍い動きでグールへ剣を振り下ろすゴブリン。グールは半身を切りながら、その刃横を滑るように避け、ゴブリンの内側に入る。そして、ゴブリンの剣を持つ手を腕でグッと固定して、横薙ぎに手を振るう。追撃を抑え、確実にゴブリンへとダメージを与えたグールは、ゴブリンが痛みに悲鳴をあげると、すぐさま持ち手を返し、斜めに切り上げた。
「お見事。楽勝だっただろ?」
「………うんっ!」
ゴブリンが消えた後、自分の手を見詰め呆然としていたグールだが、俺が声をかけるとグッと拳を握り締め達成感を噛み締めていた。
それから出会うD級までの魔物は全てグールの経験値へと変えた。かなりレベルも上がったと思う。
そうして、グールの成長をちょこちょこと手助けしながら、俺たちはユーロリア大陸からカルマン大陸へと渡った。
「いやはや、久しいな。この大陸に来るのは何年振りか」
「俺は1年振りぐらいだな。っていうか、この大陸が久しぶりって……どうやって俺の事を知ったんだよ?」
「クククッ、それは後のお楽しみである」
海風に飛ばされない為か、最早トレードマークとなりつつある黒い帽子に手を当てながら、意味深なセリフを吐くセシル。俺はこの怪しい男に嘆息しつつ、懐かしい港町に下船した。
その港町はクラーケン討伐前に少しだけ足止めをくらったカールスの街だ。確かここには美味い魚を食べさせてくれる店があったな。そこで、シャルステナとここに居座るかどうか話したっけ。
そこまで思い返し、急に寂しさを覚えた。
早く会いたいなぁ……
「はぁ……」
「主よ、また悩み事か?」
「俺は悩み多き人間なんだよ。それはそうと、帝国への行き方、調べといてくれよ。セシルがやる方が早いだろ?」
「確かに、情報を集めるのは私の領分だ。既に調べは済んでいる」
「早えぇな!一体いつの間に……」
一度こいつの仕事をつけてみたい。どうやって情報を集めてるのか気になる。まぁ、気配隠されたら撒かれる事になるんだけど……
「ククッ、私を舐めてもらっては困る。情報に関しては私は誰にも負けぬ」
「えらい自信だな。俺の友達に情報を操るの得意な奴がいるんだが、そいつと勝負してみっか?」
「いやはや、ギルク王子とは協力関係にあるのでな。勝負する意味が余りないのだよ。ただ、私が誰にも負けぬという事を示す為なら、吝かではないがな」
「お前……いつからギルクと協力関係にあったんだよ……」
何となく俺を知っていた理由はわかったが、一体いつ頃から目付けられていたのかね……
てか、あのアホ王子、人の情報勝手に売ってたのか?
「まぁいいや……ひとまず帝都を目指すか」
〜〜〜〜
帝都までの道のりは、ユーロリア大陸でのものと代わり映えはしなかった。ただ、ユーロリア大陸より若干魔物が強いかなという印象を受けた。
まぁこれは断崖山の時の異常なんかではないんだけどな。
魔物は人を殺して強くなる。それは間違いない。パーティメンバーが殺されてすぐ魔物が進化したなんて話もあるくらいだ。
つまり、人が多い方が平均すると魔物は強いのだ。ただ、飛び抜けて強い奴は標的にされ易いから、S級以上となるとユーロリア大陸の方が多かったりするんたけどな。
「これが帝都か」
俺は感慨深く呟いた。
ライクベルクの王都とは作りも形も全然違う。なんていうか綺麗だ。美しい。
西洋風の建物は白く塗られ、全体的な調和が保たれており、美しい都というイメージがパッと浮かぶ。その中を歩く人々は、派手な格好をしているが、質素な建造物と相まって、広い箱に詰められた宝石のように輝いている。
帝都の中心には、存在感のある帝城が聳え、四方を囲むように建てられた塔の上から帝国兵が街を見張っているのが見える。そんな彼らの後ろには3つの剣が描かれた帝国国旗が掲げられ、風に煽られバタバタとなびいていた。国旗に描かれている三つの剣は、皇帝、勇者、貴族を表しているらしい。
「綺麗な街だな。正直、貴族が幅利かせて汚れてそうなイメージだったが……そんな様子はないな」
「ククッ、主が思い返している国が異常であったのだ。この国でも、貴族の力は強大なものであるぞ。それに奴隷も少なからずいる」
セシルの指摘にそれもそうかと頷き返し、絶賛訓練中であったグールに目を向ける。グールは背中に自分の体ほどの大きな岩を背負い歩いていた。
「それはそうと、これはもうやめた方が良さそうだな」
「それに今気がつくか? もう既に私達は注目の元であるぞ?」
「レイ兄、さっき兵士さんに名刺渡されたんだけど……後で相談に来なさいって」
おっと、それはまずいな。児童虐待で捕まるかもしれない。
俺は、苦笑いしながら岩を収納すると、リュックを手渡した。これは、前にアーシュ達を鍛えた時に使っていた重しの入ったリュックだ。これなら、見た目的には問題ないだろう。ただーー
「レイ兄、これ物凄く重いんだけど……」
「悪いな。それは大人用なんだ」
グールには重すぎるようだ。重りを減らすだけだし、後で軽くしてやろう。
「じゃあ、セシル、例の件頼んだ」
「ククッ、了承した」
と、セシルは姿を消した。
わざわざ気配消していなくならなくていいだろ。そんな突っ込みはしても意味がないのだろう。
「さて、まずは宿を探すとするか」
俺は帝城には向かわず、街中へと足を向けた。その後ろを、だんだん顔に血がたまり始めたグールが、必死についてくる。やっぱり重過ぎるようだ。
適当な宿屋を見繕い、部屋でグールに算術やらを教えていると、小一時間程でルクセリアが戻ってきた。レーナさんを連れて。
「レイ殿、お久しぶりでございます」
「こっちこそ。ルクセリア達は元気?」
「はい。ルクセリア殿は毎日のように帝国の街並を拝見なされています」
まだ帝国に下るという話にはなっていないのか。いつにも増して慎重だな。
「にしても、早かったな」
「ククッ、この程度の警備朝飯前なのだよ」
「ははは……」
レーナさんが物凄く微妙な笑顔で笑っていた。大方、気付かれる事なくレーナさんの前に現れたセシルに、言い返す言葉がないのだろう。この国の兵士の指導者の立場にある彼女にとっては、痛い問題なのかもしれない。
「……ところで、秘密裏に私をここに呼び出した訳をお聞きしてもよろしいですか?」
「ああ、もちろん。グール、外で素振りでもしとけ。まだ今日はやってないだろ?」
グールには聞かしたくなかったので、あからさまに追い出しにかかると、子供だからと舐めないで欲しいとばかりにグールは確信をついてきた。
「レイ兄、絶対僕に聞かせたくないだけだよね?」
「わかってるなら、話は早いな。行ってこい」
隠そうともしなかった俺は、欲しくもないジト目を頂戴しつつ、グールをしっしっと虫を払うように追い出すとさっそく本題に入る。
「勇者の中に殺人鬼がいる」
一変して急に重くなった空気。レーナさんはピクリと眉を動かし、目を細めた。
「それは『刻印の殺人鬼』の事でしょうか?」
真剣な表情の上に張り付く、困惑の色。半年以上彼らに教えを説いてきた彼女には、色々と思うところがあるのも当然の事だ。
俺はレーナさんの言葉に小さく頷くと、話を続けた。
「その名前の元になった刻印。あれは勇者達が来た世界の文字だ」
「それは本当ですか⁉︎ いや、しかし何故レイ殿がそれを…」
「俺には優秀な情報屋がついてるんでな」
俺が転生者である事は明かさず、セシルの方に顔を向けながらはぐらかした。セシルにも何も打ち明けてはいなかったが、俺の意を汲んでくれたのか、優秀なと言われたかからかはわからないが、いつもの不気味な笑い声を短く漏らした。
それがレーナさん的には確信を得るに足りたようで、疑いを持つ事なく、俺の言葉を信じた。
「なるほど……確かに、あの刻印が彼らの使う文字ならば、彼らの中に殺人鬼がいる事になりますね……」
悩ましい表情で俺の根拠に納得を示したレーナさんはどこか悲しげな目を浮かべる。
「で、どうにかそいつをあぶり出したいんだけど、俺の顔を見られちゃっててね。俺がここに来たのがバレると逃げられるかもしれない」
「なるほど。それで、犯人を特定しようと言うのですね」
「うんにゃ、逆に殺人を止めるかもしれない。それはそれでいい抑止力なのかもしれないけど、結局のところ解決にはならない。それに殺人鬼を強くはしたくない」
つまり、俺が言いたいのは、指導はしないという事だった。レーナさんはその意味を正しく受け取ったようで、少し顔色が陰る。
「……確かに、レイ殿の言う通りです。しかし、その1人を除いては、皆帝国にとって欠かす事の出来ない勇者です。その彼らの為にも、お願い出来ませんか?」
「誰もやらないとは言ってないよ。ただ、待って欲しい。俺が殺人鬼を捕まえるまでは」
「えっ……? やって頂けるのですか?」
駄目元であったのか、レーナさんはパチクリと瞬きした。
「まぁね。俺にも色々と思うところがあるんだよ」
「感謝致します、レイ殿! して、レイ殿1人でどのようにして殺人鬼を?」
「まぁ、それには色々と方法はあるさ。その為にレーナさんに色々とお願いしたい事があるんだよ」
俺がここにレーナさんを呼んだのは、わざわざ指導の延期を伝える為にではない。彼女にやって欲しい事があったのだ。
それを伝える為に、セシルに呼びに行って貰った。
刻印の殺人鬼は勇者軍の中にいる。そして、それを炙り出すには実際に殺人をやらせるのが手っ取り早く、確実な証拠を抑えられる。
無論殺させるつもりなどない。あくまで現場を押さえるのが目的だ。そして、俺にはその場を押さえられるスキルが幾つもある。
空間だけが俺の取り柄ではないのだ。知らぬ間に頂戴していた『オールパーフェクト』の二つ名の本領を見せてやろうじゃないの。
そして、その為には殺人鬼を自由にさせるのが一番手っ取り早い。
その上で、俺が彼女に頼みたかったのはーー
「勇者軍に休みを与えて欲しい。期間はできるだけ長く」
という事だった。
「休みをですか? それは構いませんが……」
「ありがとう、レーナさん。それと、この事は勘付かれない為にここだけの話にしといてね。この殺人鬼はかなりのやり手だから」
相変わらずお願いを簡単に聞いてくれる親切なレーナさんにお礼を言いつつ、内密にと釘を刺しておく。それは返せば、其方は何もするなという意味だった。
勘付かれて逃げられたら大変だからな。
「そうですね。我々も姿さえ確認出来ていないのです。察するにレイ殿ですら逃げられたのでは?」
「痛いとこつくね。そうだよ。だけど、もう逃がさない。その為の算段はつけた。この街の地理も頭に入れた。今度こそあいつを捕まえてやる」
俺が犯人逮捕に向けて気合いを滲み出させていると、セシルが自分も混ぜろと嬉々として言ってきた。
「ククッ、主。もちろん私も参加と考えて良いのだろうな? こんな面白いイベントに不参加は勘弁願いたいのだが?」
「何言ってんだ。当たり前だろ。俺とお前、ルクセリアで捕まえるぞ」
セシルに情報を集めて貰わないと作戦が破綻する。それと、ルクセリアは信用出来るし、強いからな。いざという時に力になってくれるはずだ。
「待ってろよ、殺人鬼。ちくわに挟まれたアスパラみたいにグルグル巻きにして豚箱に入れてやっからな」




