101.囚われし者
深い深い闇の底。
そこにあるのは、終焉へと繋がる出口と、広大な世界へと繋がる入口だけ。そのどちらもがあってないような一方通行の扉。そこはただの通過点に過ぎない。ただ終わりを迎えた者にとっては。
そんな何もない世界に1人の男が佇んでいた。その男は、唯一の例外。
男には足りなかった。どちらの扉に進む事も許されない。彼だけがこの世界に取り残されていた。
死と生の狭間で、不確かな存在として。
男は見る。
生者を通して。
そんな彼は、1人の生者の眼に映る少女を見て、哀愁を漂わせた。
「お前は、その道を行くのか?」
答えはない。彼の声は誰にも届かない。
「俺がお前を、お前が俺を、これも一つの運命か……」
男は案じるようにゆっくりと瞼を下ろした。彼が再び目を閉じると、暗い夜道を進む光景が広がった。見えるのは、それだけ周りには誰もいない。
「そうか。その道を選んだか」
ゆっくりと眼を開けて、夜より暗い深淵に眼を向ける。
「崩壊が先か、覚醒が先か。どちらにしろ、好ましくはない。苦しいだけだぞ、お前も、あいつも」
そう何処か未来を見通したかのように男は呟く。
「…………」
だが、一方で男はその未来を迷い、口を噤んだ。
「創世の神よ、俺の選択は間違っていたか?」
彼はどこまでも続く闇を見上げ、問い掛けた。答えが返って来る事はないと知りながら……
「……だが、もう引き返せない。これが、最後だ」
男はもう一度固く眼を閉じ、視界を通じて語り掛ける。
「お前は果たしてここに辿り着く事が出来るか? 世界が終焉を迎えるその日までに」
男の言葉は深淵の彼方へと飲み込まれ消えていく。その声が誰かに届く事はなかった。




