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97.俺の邪魔をするなら……

 ユーロリア大陸の東南に位置する港町ウルレーゼ。ここは帝国との貿易が盛んなシュール国に属する地で、船舶乗船時と上陸時に関所と同じ様な確認が取られる。だが、ラストベルク王国との国境ほどシビアに行われているわけではない。精々身分証を見せ、犯罪歴がないか確認する程度である。


 この違いは、シュール国が帝国側に組する国か、王国側であるかの違いだ。つまり、ここシュール国は半帝国という事なのだ。それも帝国に頭の上がらないような、悪い言い方をするなら植民地。しかし、実情は危険の多いこの世界で帝国に守って貰う代わりに、ある程度の上納金を収めている協力体制にある国である。


「これはこれは、マーレシア様。ようこそいらっしゃいました。我ら一同ご到着を心待ちにしておりました」


 マーレシアより遥かに歳上の白ひげを生やしたこの街の市長が、わざわざ沢山の人を連れて出迎えに上がるぐらいには帝国に頭が上がらない。

 市長は出迎えの笑顔を携え白ひげを撫でる。それはまるで相手に媚びている様に俺の目には映った。


「ご機嫌よう。出迎え感謝いたします。この方達はクラーケン討伐に参加して下さった冒険者の方々です。丁重に迎え入れてくれますね?」


 おおっ、あの大人しそうなマーレシアが高圧的に見える。彼女も貴族の一角ってわけだな。

 貴族の一人として相手に舐められるわけにはいかないんだな。大変だなぁ、貴族も。


「それはもちろんですとも。クラーケン討伐を成し遂げた優秀な方々を当街でもてなせるのは、我が街の誇りとなりましょう。ささぁ、どうぞこちらへ」


 市長の後をマーレシアが続き、その後ろをお付きの二人、冒険者達と続く。そして案内されたのは、大きな建物。中からは美味しそうな香りが漂ってくる。

 パーティか?


「我が街自慢の料理人が腕によりをかけて調理した料理です。きっと皆様にもご満足頂けるものとなっておりましょう」

「ご配慮感謝いたします。冒険者の皆様、どうぞご自由にお食事なされませ」


 マーレシアがそう微笑みながら冒険者に呼び掛けた。すると、基本的に頭を回さない冒険者達はマーレシアの思惑に気が付かず皆こぞって料理に殺到する。普段余り食べる機会のない高級料理だからであろう。

 聞いたところによると、今回の討伐に参加したのは殆どがBランク冒険者。Aランクも指で数える程しかおらず、それ以上は皆無だったらしい。


 これだけ聞くと、よくもまぁこれでクラーケンを倒せたものだと思う。だが、あのお付きの二人が以外とやり手だった。特に可哀想な方の女騎士は冒険者ならばSランク認定されていてもいい動きをしていた。たぶんシャラ姉より強い。

 それと俺とシャルステナ、ハクの働きが大きかったのは間違いない。


「レイ、どうする私達もここで食事する?」

「どうしようか? マーレシアに上手く使われる気がしてならないんだが……」


 だって、そうだろう?

 もてなすなら彼女とお付きの人だけで十分じゃないか。冒険者をわざわざもてなす必要なんかない。報酬は十分貰ってるんだから。

 それをわざわざ要求したという事は何かあると見て臨むべきだろう。


 少し頭を回せば分かることだ。目先の欲に誑かされマーレシアの思惑に冒険者達は気が付いていない。

 確かにこれ程ジューシーでフルーティな香りの前に俺も誑されそうだ。だが、これ以上邪魔が入らない保証はない。ここは、我慢して……


「食うだけ食ってとっととおさらばしよう」

「食欲に負けたんだね」


 ーー30分後。


「レイまだ?」

「もうふこし(もう少し)」


 パパッと食事を済ませたシャルステナが、眠ってしまったセーラを背負いながら聞いてきた。しかし、俺はこの海鮮スペシャルに夢中で、中々食べ終わらなかった。

 美味い。海鮮ってこんなに美味かったんだ。


「堪能していただけましたか? レイ殿」


 ドキッ


 あちゃー。


「あ〜あ」


 シャルステナは私知らないよみたいな感じで一歩引く。


「ごっくん。まぁ堪能してるかな」

「それはようございました。実はレイ殿に折り入ってお話したい事がありまして」


 俺はどうしようとシャルステナに助けを求める。しかし、頑張ってと視線で返されただけだった。応援はしてくれるらしい。手は貸してくれないみたいだ。

 いまの俺は料理という罠に引っかかった間抜けなウサギだ。罠にはまった以上そう簡単には抜け出せない。


「……なんですか?」

「実はですね、この街の近隣に厄介な魔物が出たそうで、それの討伐をお願いしたいのです」


 なるほど。それを帝国が連れてきた冒険者が退治したという事実が欲しいわけね。それを何らかの交渉カードの一つに加えるつもりか。


「取り敢えず詳しく話してくださいよ」

「実は属性牛の変異種らしき魔物が見つかったそうで、並みの冒険者では手に負えないそうなのですよ」

「変異種? あぁ、あれか」


 前にバジルとシャラ姐と一緒に討伐した奴か。


「その様子ではご存知のようですね」

「知ってるけど、あれは無理だね。それに俺のランクじゃ受けれない。S級以上なのは確定だからね」

「いえいえ、ギルドを通さなければ問題はありませんよね?」


 通さなければ、な。けど、俺はギルドを通さない依頼は受けない主義なのだ。たった今から。


「問題ありますよ。ランクが上がらない。そんな依頼を受ける理由がないですね」

「報酬は色をつけさせて貰いますよ?」

「残念ながら、俺は二億ルトを空からばらまくような人間なんで」


 マーレシアさんだんだん笑顔が引き攣ってきてますよ?


「で、では、何か望む物を報酬に。何でもおっしゃってください。最高級の剣でも、防具でも好きな物を」

「じゃあ、遠慮なく。世界樹の雫を下さい」

「えっ? せ、世界樹の雫ですか? それは私共では……出来れば他の物に……」

「他に欲しい物はないなぁ」


 わざとらしくそう言うと、マーレシアは俺のやる気が全くない事を察した。顔色が曇る。

 しかし、そこで引けばいいものをマーレシアは作戦を変えてきた。すなわち俺のやる気を出させようと、


「私、自分でも結構いけてると思うんですよ。どうです? 歳上のか・ら・だ、味わってみたくありませんか?」


 そう誘惑してきた。ドレスの合間から見える双丘を強調し、座る俺にもたれかかる様に体を預けて。さらには、片手で俺の性欲を煽る様に首筋を撫でる。

 俺はバッと立ち上がると、叫んだ。


「あんたやっぱりルーシィの姉貴だよ‼︎ 妹と困った時のアプローチ同じじゃねぇか‼︎」


 こつらの家系はこんなのばっかりかッ!

 困ったら体で誘惑しましょうが家訓なのか⁉︎

 おい、それでいいのか、親御さん!


 そんな風に思わず貴族である事を忘れ、ギルク達の時のように突っ込んだ俺に女騎士が声を荒げた。


「おい貴様! マーレシア様に声をあらげるとは覚悟はいいのだろうな⁉︎」

「はぁ?」


 突然の展開に俺は思わず間抜けな声を出した。

 可笑しな事言い出しのはマーレシアの方だろ。何をキレてるんだこの女騎士は。忠誠心高すぎだろ。


「もう我慢ならん! 貴様ら冒険者のマーレシアに対する不遜な態度! 貴族に立て付けばどうなるか、貴様の体に教えてやろう!」


 黄髪の女騎士は同僚の女騎士の制止も聞かず剣を抜く。それを両手で構え、血走った目で俺を睨んだ。


 一体何なんだよ、他の冒険者の分も俺に向けるなよ。

 ……イライラする。どうしてこうも俺の邪魔をする奴が多いんだ。


 そんな事を思いながらも、穏便に済ませるために貴族に対しての態度を俺は改める事にする。


「ご無礼仕りました。…………これでいいか?」

「貴様不敬罪で捕らえられたいのか⁉︎」


 俺が一礼した後返事がなかったために、確認をとった行動がリミアに油を注いだようだ。

 ここまで来ると、抑えた怒りが再び湧き出してくるというもの。


 面倒くせぇ。穏便に済ませようとしてるこっちの気持ちを察しろよ。

 一々突っかかってきやがって。どうしたら満足なんだよ。


「貴様らもよく見ておけ! これは見せしめだ! 帝国貴族に立て付けばどうなるか、その目に刻み付けておけ‼︎」

「おい、やめろ! リミア!」

「リミア、落ち着きなさい!」


 マーレシアとレーナはこれはいけないとヒートアップするリミアを止めようとするが、それよりも彼女が手を出す方が早かった。

 派手な装飾が施された貴族仕様の高級品が俺の肩目掛けて振り下ろされる。


 そうか。

 こいつは俺のーーーー敵か。


 俺は素手で振り下ろされた剣を掴んだ。そして、ググッと力を込める。


 パキンッ


「なっ⁉︎」


 脆い剣だ。飾りに金を使い過ぎて、強度も切れ味も並以下だ。


「俺の邪魔をする奴はーー殺す」


 殺気が漏れた。その気に当てられた事などないであろうマーレシアは腰を抜かし地面に手を付く。さらに剣をへし折られたリミアは驚愕と共に、殺気に当てられ怖気付いたように後退りした。

 俺は、ゆっくりと彼女に一歩踏み出した。

 すると、そこへ入り込む様にレーナが割り込み、2人を庇うように立つ。


「レイ殿落ち着かれよ。部下の失礼は私が謝罪する。どうか殺気を収めてくれ」

「はぁ? あんたも俺の邪魔をするのか? なら、あんたも『バシヤッ』冷たっ! な、何すんだシャル⁉︎」


 手に魔装を纏おうとした時、不意に冷たい水が浴びせられた。突然の事に俺は驚き、殺気は霧散する。

 そして、水を掛けてきたシャルステナを問いただすように声を荒げた。


「レイ、頭冷やしなよ。ここで揉めてもいい事は何もないよ?」


 そう、優しく諭すようにシャルステナは言った。彼女の目は少し心配そうに俺に向けられていた。


「…………ああ、そうだな」


 俺は納得したわけではなかった。ただ、シャルステナの言い分もわかった。確かにここで貴族と揉めてもメリットはない。


「……悪かった。熱くなり過ぎた。今日のところは俺は失礼するよ」

「いや、非はこちらにある。こちらこそ、大変申し訳なかった。リミアには後でキツく言っておくので、どうか許して欲しい」


 俺はレーナに頷く事もせず建物を出た。その後をペコリと頭を下げてからシャルステナがセーラをおぶり付いてくる。


「ピィ」(親怖い)

「……怖がらせて悪かったな。もういつも通りだから」


 パタパタと俺の肩に飛び乗ってきたハクはペロリと俺の頬を舐めた。俺は片手でハクの頭を撫でてから、シャルステナに振り返る。


「シャルも悪かった。止めてくれて助かったよ」

「うん……レイ、最近どうしたの? すごく怒りっぽいよ?」


 シャルステナは心配する様な仕草で聞いてきた。

 怒りっぽいか……

 確かに言われてみれば、最近イライラする頻度が増えている気がする。


「ストレスでも溜まってるのかもな」

「ストレス?」

「日頃の不平不満が心に溜まる事だよ」


 この歳でもうストレスか……髪の毛が心配だ。


 〜〜


 昨日一悶着あった後、俺たちはこの港の宿屋で休む事にした。一週間程の船旅で、セーラが疲れている気がしたので、ゆっくりと休む事にしたのだ。

 そうして、穏やかな朝を迎え、特に何かするでもなく皆が起きてくるのを待っていた。暫くしてシャルステナが起きてきた。


「おはよう、レイ」

「ああ、おはよう。今日からはまた暫く野宿だけど、よく眠れたか?」


 余りゆっくり休憩している時間はない。シャルステナ達には少しキツイ旅かもしれないが頑張ってもらわないと。


「大丈夫。昨日はゆっくり休めたから」

「そっか。なら、そろそろセーラ達も起こして出発しようか」


 そろそろあの寝坊助達も起こさないとな。いつまでも起きてこなさそうだ。


「うん。…………あのね、レイ」

「うん? どうした?」


 少し話にくそうな顔をしているシャルステナに俺は顔だけを向けて聞き返した。


「きっとレイは溜め込んでるんじゃなくて、ぶつけてるんだと思うよ?」

「それはストレスの話か? そりゃそうだろ。溜め込み切れなくなってぶつけちゃうんだから」


 昨日の説明が悪かったのかな。無駄に考えさせてしまった。説明はキチンと正確に。これから気を付ける事にしよう。


「まぁ何にせよ、あの2人を起こしてとっとと出発しよう。時間は有限。今日一日に進める距離だって有限なんだから」



 〜〜


「あっ」

「むっ」


 バッタリ。

 昨日の今日で顔を合わせる事になろうとは……


「どうも。昨日はご迷惑おかけしました、レーナさん」

「いや……昨日も言ったが、あれは私の部下の躾がなっていなかったせいだ。リミアは貴族の出でな。ああいった事にはすぐ熱くなるのだ。申し訳ない」


 そう、開口一番に謝ってきたレーナさん。俺の中で彼女の評価が少し上がる。

 何だろう。この人とてもいい人な気がしてきた。昨日この人に剣を向ける事にならなくてよかった。止めてくれたシャルステナは感謝だな。後で高級デザートでも差し上げよう。


「いや俺も貴族に対しての態度じゃないとは思ってるんで。けど、どうしても長年の経験のせいで、つい……」

「長年? ああっ、ひょっとしてレイ殿は貴族の生まれだったのですか? それは誠に……」

「違います違います。俺はどこにでもいる平民ですから」


 俺の言う長年の経験とは、王族でも気にいらないときは手を出して構わないという、王立学院での経験の事だ。あの学校はほんとやりたい放題だったからな。

 王子もやりたい放題だったしな。いい学校を選んだものだ。


「そうなのですか? 私はてっきり、レイ殿の強さは幼き頃から修練に修練を重ねた貴族でしか到達出来ないものだと思ったのですが……」

「いや確かに、小ちゃい頃から修行はしてたけど、貴族ってわけではないですよ。何処にでもいる村人AとBの子供ですよ」


 めっさ強いという付属語が付くが……

 あ、何処にでもいねぇな、あの村人A、Bは。


「そ、そうでしたか。聞けばディクルド・ベルスレッドも貴族の生まれですが、村で暮らしていたとか。ラストベルクの村では何か特別な事をしているのですか?」

「あっ、やっぱあいつ貴族だったんだ」


 家名があるからそうじゃないかと思ってたんだよ。


「あぁ、そう言えば武闘大会に参加したとおっしゃってましたね。やはりディクルド・ベルスレッドは強かったですか?」

「そりゃもう。馬鹿みたいに速いし、力も強いし。あいつ手振っただけで、地面が吹き飛ぶんですよ?」


 そんな何処か要領を得ない会話を続けていると、シャルステナが何か言いたそうにソワソワし始めた。色々とおっしゃりたい事があるようだ。


「いやぁ、羨ましい。私も一度国を超えて天才と謳われる彼の戦いを見て見たいものですよ」


 あいつは国を超えてファンがいるのか。くそぉ、なんか負けたみたいで悔しい。いつか俺の方が有名になっやるからな。


「ところでレイ殿はもう街を出るのですか?」

「まぁ、急ぎの旅なんで」

「そうでしたか。では、途中まで一緒に行きましょう。私も街の外に用事があるのです。シャルステナ様も構いませんか?」

「えっ、あ、はい」


 突然話が振られ、少し焦った様子で答えたシャルステナ。彼女はまだ色々と言いたい事が溜まっているようで言うか言わまいか迷っている感じだった。


 〜〜


 七大秘境の一つ、世界樹の森はこの大陸の中心に位置している。そして、これまた森の中心、つまりはユーロリア大陸の中心を貫くように世界樹は聳え立つ。


 詰まる所、この大陸の中心を目指せば、世界樹の森にはいずれたどり着く。現在俺たちがいるのは大陸の東南。すなわち、北西に進路を取ればいい。

 その考えに基づき、俺たちは大まかに北西方向へ一直線に進んでいた。


「あのレイ殿? 街道を離れて久しいのですが、よろしいので?」

「いいのいいの」


 何処に向かうかもわからない街道を辿る必要などない。ディクじゃないが迷子になり兼ねない。出来れば地図が欲しいところではあるが、贅沢は言ってられない。元々測量技術などない世界だ。あっても本当か怪しい世界地図のみ。

 こんな世界ではその地に住む人に話を聞く方が余程安心出来るというものだ。ちなみにコンパスはない。


「ひょっとしてレイ殿は私を手伝ってくれようとしているので?」

「はい? そんなつもりはないけど……ていうか、レーナさんの旅の目的は?」

「旅なんて大それたものではありませんよ。単なる魔物狩りです」


 ピンッときた。つまりはこの人、俺の後始末を任されたわけだ。しかも、部下も連れずにあの牛に挑むとか無理がある。

 いやちょっと待て。この人がそんな勘違いを起こすという事はーー


 モォオォォオ‼︎


 牛がいる所に俺たちは向かってたわけだ。


「で、出ました! あの魔物です!」

「はぁ、どうしてこうも今回の旅は邪魔が多いんだ」


 人の匂いを嗅ぎつけたのか、牛は木々を踏み倒し、山の中から這い出てきた。まだ距離はあるため小さく見えるが、顔の数からして前回と同等の数がイリュージョンしてると思われる。


「レイあれは何って魔物? 前に戦った事あるんだよね?」

「正式名称不明。強いて言うならキング属牛ってとこかな。シャルはセーラを連れて下がっててくれ。あれに魔法はほぼ効かないから」

「わかった。危なくなったら私も加勢するよ」


 シャルステナとセーラを下がらせ、俺とハク、レーナさんが前に躍り出る。


「助かります。加勢して頂けるようで」

「あれが居たら俺たちも邪魔なんでね。あれの弱点は首です。首を全部落としたら動きが止まります」

「承知しました。首ですね」


 結局やり合う事になってしまったが、致し方ない。俺の邪魔をすればどうなるかこの牛に教えてやる。


「まず私がキング属牛に突っ込み、注意を引きます。レイ殿達は空からキング属牛を攻撃して下さい」


 俺の適当なネーミングを使ってくれるレーナさんはさておき、彼女一人であれを引き付けられるのだろうか?

 というか、別に人が引きつける必要などないよな。ドールにでもやらせて……というか、俺一人で十分なんじゃないか?


「では、お願い……」

「待った! レーナさんが引き付ける必要なんてない。俺がやる」

「ですが……恥ずかしながら私は空を飛ぶ事は出来ないのですよ。だから、レイ殿に攻撃して頂けると助かるのですが……」


 俺の待ったにレーナは自分の考えを示し、攻撃に回ってくれと頼んで来た。だが、俺はそれを無視し、1人属牛に走りこむ。


「魔人」


 前傾姿勢で属牛との距離を詰める俺の身体が赤薄く光る。

 前に戦った時には不完全過ぎて使えなかったこの技。しかし、これ程属牛向きな技はない。無属性の攻撃に、防御特化のこの技は巨大化した属牛のブレスであろうと防いでくれるはず。


「まずは足だ」


 全ての首が俺を注視する中、俺は狙いを足に。今、足が纏う属性は雷、火、水、風そして氷。

 どうも複数同時発動が可能な様だ。その辺の魔物事情はよくわからんが、前回の属牛戦では俺が相手の注意を多く惹きつけいた様だ。


 しかし、今回は全ての首の注目を俺が集めている。どれがどの属性かは知らないが、ごちゃ混ぜとなった属性攻撃が全て俺に集まる。

 俺はその爆発の様な属性嵐に自ら突っ込んだ。魔装が少しずつ削れていくのも厭わず、俺は片足の前にたどり着くと、飛び上がりながら右足を斜めに切り落とす。


 モォオォォオ‼︎


 片足を失った牛の悲鳴を聞きながらも俺は止まらず、次の足へ。途中地面から這い出てきた岩に虚を突かれるも、それを踏み台にして今度は蹴りで足を叩き切った。


 体重が乗った前方が支えをなくし、崩れた。俺は胴下から退避しつつすれ違い様に首を刈る。


 ドシャァァン‼︎


 何ケロベロスかわからない重い頭が地面に叩きつけられる。ここまでは前回と同じ。

 ならば次の行動も読める。


 前方へのブレス攻撃。それを俺は瞬動を使った飛び上がりで回避しつつ、ブレスを放った後で無防備な首に向けて両腕を振り落とす。スパンスパンと首チョンパされていくキング属牛。

 残る首はそうはさせまいと文字通り死に物狂いで次々充填を完了させ、ブレスを撃ってくるが、俺はそれを足で弾きつつ、確実に首を落としていった。


 そして、戦い始めて1分が経つ頃には全てを刈り終え、巨大牛はその姿を消していく。


 俺はそれを見ながら、打ち震えた。


 はははっ、やっぱり俺は強い。世界でもやっていける。負ける気がしない。

 もはやS級じゃ相手にならない。S級如きが俺の道を阻むからこうなるんだ。もう誰も俺の自由を邪魔させない。邪魔するなら消してやる。


 ーー俺は特別なんだ。


 この時、くすぶっていた何かが、俺の中で膨れ上がった気がした。

異夢世界を読んで頂きありがとうございます。


すいません、暫く忙しくて編集する時間も余り取れなさそうなので、週一にさせて下さい。

たぶん一ヶ月以上は続くと思います。

その後はまた週二回に戻りたいと思いますが、いつ戻れるかはまだわかりません。

更新を楽しみにして下さっていた方、本当に申し訳ありません。なるだけ早く、更新ペースを戻せるよう頑張ります。

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[気になる点] 「問題ありますよ。ランクが上がらない。そんな依頼を受ける理由がないですね」 「報酬は色をつけさせて貰いますよ?」 「残念ながら、俺は二億円空からばらまくような人間なんで」 通貨単位は…
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