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龐統が転生したら、諸葛亮は中原を統一できるのか?  作者: 鳳啼西川


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第二章:西川の雪と荊襄の書状

成都の初雪が蜀王宮の新たに塗装された軒先に降り積もり、三か月前の血と火の気配を優しく静かに覆い隠した。祝勝の宴の喧騒は去り、偏殿の炭火はパチパチと音を立てるが、一部の人の心に刺さる氷柱までは温められない。


劉備は額を揉み、面前に二冊の名簿が広げられていた。一冊は褒賞を待つ古参の功臣たちで、関羽の功績上奏の書状が冒頭に置かれ、文面の隅々に「文官が軍務を督する」ことへの微かな軽蔑が滲んでいる。もう一冊は西川から帰順した士族の名簿で、法正・李厳を筆頭に、帰順の惶恐と値踏みする打算が瞳に隠されていた。張飛の荒々しい声がまだ耳に残る。「兄上!西川は俺たちが打ち取ったのだ、当然俺たちの者が地位に就くべきだ!李厳など何者だ、関二兄と並ぶ資格があるのか?」


「主公」清らかで僅かに嗄れた声が響いた。龐統は黒色の大氅をまとい、姿はまだ細身だが歩みは穏やかだ。彼の視線は名簿を掠め、すべてを見抜いていた。「翼徳将軍の言は同士の熱血であり、法正・李厳の憂いは身の前途である。いずれも冷遇してはならない」


「士元に何ら良策があるか?」劉備は身を乗り出した。


「良策とは言えぬ。ただ三つのことを行うのみ」龐統は指先で机を軽く叩く。「一、爵位と俸禄を明らかにし、古参功臣の功績を定め、我が軍の心柱を固める。二、府庫を整理し、旧来の賦税の弊害を是正し、蜀の民の望みに応える。三……」彼は言葉を詰まらせ、殿外に舞い散る雪を眺めた。「頑固な鉄を選び、火で鍛えて刃となす。悪党を畏怖させると共に、天下に示す――我が主の麾下には、才ある者を限りに広く迎え入れる」


彼の指す「頑固な鉄」とは、今殿外の雪道に二時間もひざまづいている征西将軍・馬超のことである。

馬超は帰順して以来、傲慢さが拭えず。かつての錦馬超は雍涼を威震し、曹操と潼関で血戦を交え、人下に甘んじるはずがなかった。今回の西川平定では己の武勇を恃み、軽んじて進軍したため張魯の残党の伏兵に遭い、数百騎の涼州鉄騎を損なった。劉備は仁厚で罰することなく、ただ自省を命じた。馬超はこれを深く恥じ、更に荊州派に軽んじられていると感じ、憤怒の炎が胸を灼いていた。


「彼を入れよ」龐統は侍従に命じた。


馬超は殿に踏み入り、甲冑に霜が宿り、剣の眉を引き締め、ひざまづいて言葉を発さず、背筋は折れない槍のように真っ直ぐに伸びていた。


「将軍は罪を知るか?」龐統の声は穏やかだ。


「馬超は軽んじて伏兵に遭い、兵を損なった。軍法に従い処罰を受ける!」馬超は頭を上げ、口調は硬い。


「否である」龐統は首を振り、ゆっくりと彼の前まで歩み寄る。「将軍の罪は兵を損なったことにあらず、智を失ったことにある。西川の残敵を芥のように見做し、山川の要害と民情の複雑さを知らず、雍涼の平原と異なることを悟らぬ。これ智を失う第一。かつての威名を心に留め、功を立てて己を証明せんと焦り、逆に罠に落ちる。これ智を失う第二。敗北した後ただ意地を張って罪を請うのみで、敵が如何にして進軍路を知り得たか精査したか?張魯の残党と地元の豪族が結託していないか思量したか?これ智を失う第三」


一問一問が氷の锥のように馬超の怒りの殻を突き破り、核心に刺さる。彼の顔色は紅から白に変わり、冷汗が雪解けの水と混じり、鬢から滴り落ちた。


「超…… 軽率であった」彼は歯を食いしばった。


「軽率な猛虎は、狡い狼の群れに敵わぬ」龐統は身を屈め、眼光は炯々として声を更に低くした。「将軍は恥を雪ぎたいか?この蜀の地で、かつての名将の虚名ではなく、智謀と武勇で自らの天地を切り開きたいか?」


馬超は全身激しく震え、勢いよく頭を上げ、すべてを見通すかのような龐統の瞳と見つめ合った。その瞳には軽蔑も慰めもなく、才幹に対する冷酷に近い評価と期待が宿っていた。


「軍師に…… ご指南を請う!」この拝礼で頭を深く地に着け、甲冑の葉がカランと音を立てた。殿の隅にいる関羽の侍従は冷ややかに眺め、鼻から僅かに鼻鳴らしをした。


三日後、雷霆のような粛清が成都を震撼させた。龐統は軍資の流転を徹底調査する名目で、張魯の残党と内通した数名の蜀の小役人を炙り出し、糸を辿って瓜をたぐるように、地元の豪族が漢中の残党に城を献げようとする陰謀まで引き当てた。馬超は精鋭を率いて神の如く現れ、龐統の授けた方略に従い、刀兵を動かすことなく、時刻まで精密な包囲と人心攻略で一味の者らを悉く捕らえ、大量の往復の密書を押収した。


祝勝の宴で劉備は自ら馬超に杯を勧めた。馬超は杯を持ち、直ちに隅の龐統の元へ向かい、片ひざをつき両手で杯を捧げた。「超は武夫に過ぎず、昔は世間を眼中になかった。今軍師のご教示により、将たる道は勇だけでなく、智謀と洞察にあることを知った。この酒をもって軍師の再造の恩に感謝する!今後、超は軍師の先駆けとなり、命じられれば万死も辞さず!」


声は屋根を揺るがす。関羽は髯を撫でて言葉を発さず、張飛は愕然とし、法正・李厳らは複雑な視線を交わした。龐統は平然と酒を受け一気に飲み干し、淡く言った。「将軍は主公の剣であり、統はただその塵を払ったのみ」。しかし誰もが、この鋭い涼州の名剣の柄が、密かに鳳雛の手に握られたことを見抜いていた。


夜更けて人が散じた後、龐統は灯の下で白い絹を広げた。馬超を服従させたのは、内部を粛清し派閥を均衡させる一手に過ぎない。彼の心に宿る「未来を知る」由縁の日増しに重い切迫感が、今唯一理解し得る者に吐露する必要に迫られていた。


彼は筆を執り「孔明吾兄、拝啓」と書き、西川が平定され人事が落ち着いたことを略述した。筆鋒はすぐに転じた。


「…… 然るに統は毎夜星を観るに、紫微星の側に客星が東南を侵し、その光は晦げで定まらぬ。荊州は要地であり、関侯は华夏を威震するが、剛直で自負する。東呉は狙うように虎視眈々として久しく、盟約は蝉の翼のように脆い。愚弟は愚考するに、江陵の要害と君侯の勇だけを恃めば、砂で堤を築き滔々たる波を阻むようなもの。早く有能な将を江岸の要害に増派し、商旅と水路に諜報網を張り巡らせ、更に孫劉の亀裂を無形に補う者を必要とする…… これは統の杞憂ではなく、近日反逆者を尋問して得た断片的な言葉は、いずれも東呉の動きが不穏であることを暗示しており、警戒せねばならぬ」


彼は筆を止め、「尋問により得た」の文字を何度も丸で囲んだ。これは精妙な嘘で、時代を超えた予見に合理な衣をまとわせたものだ。続いて天下の情勢の推演を書き記し、曹操の死後曹丕が速やかに漢を簒奪することに触れ、北方の情勢に変動が生じるため、諸葛亮に「西は戎狄と和し、南は夷越を撫する」策を密かに計画し、未来の隆中対の「奇兵」とするよう勧めた。更に李厳に対し「才は高いが性は偏屈で、功績で磨き、地位で拘束せねばならぬ」との見解を慎んに記した。


最後に彼は無意識のうちに、絹の隅に極小の文字で書き記した。「昨夜、落鳳坡に夢見、李逸が血衣をまとい立ち、東南を指して笑う。目覚めると雷鳴が頭上を過ぎ、天の啓示か?兄は天文に精通されるが、蜀の星象に異変はあるや?」これは探りであり、時空を超えた孤独な魂の助け請いでもあった。


使者は密書を携え夜を従い東へ向かった。


荊州の冬の雨は冷たく湿って骨に沁みる。諸葛亮は龐統の書状を開き、平安を知り眉尻を緩め、荊州への警鐘を読むと神色が急に険しくなり、北方の政局・南中の策への予測、更に李厳への評語に至っては、手が僅かに止まった。これらの見解は深遠で老獪で、昔の才気は露わだが幾分焦りがちな龐士元とは全く別人である。更に心を驚かせたのは、数箇所の計略が、彼が近来独りで推演し誰にも語らなかった方略と奇しく一致することだった。


彼の視線は最後の夢と雷鳴に関する小さな文字に長く留まった。立ち上がり窓を開け、西北のどんよりした夜空を眺めた。そこには本来客星が位置するはずの場所に、今や新たな星が清らかで堅固な光を放ち、密かに己を示す星と輝き合っている。


机に戻り長く沈黙した後、ついに筆を執った。


「士元殿:書状が届き、暗室に光を得たが如し。西川の事はすべて弟の采配に委ね、亮は心から安堵する。示された荊州への憂慮は火を見るように明らかで、亮が近来憂えることと糸を紡ぐように一致する…… 東南の事は既に子龍・伊籍に密かに措置するよう嘱んだ。天象については」諸葛亮の筆先は宙に浮び、墨が滴り集まりついに落ちた。「紫微星は晦んでから明らかになり、将星は移動して固まる。落鳳坡は絶地ではなく、涅槃の場所か。弟の見た夢は幻ではなく、天机の前兆ではあるまいか。亮は弟の『新たな解釈』を待ち望む」


直接問いただすことなく、最大の信頼と開かれた問いかけを与えた。この書状は単なる戦略の伝達ではなく、山水を隔てた智者同士の天命と人事に関する秘めた対話となった。


書状が成都に届いた時、龐統は新たに建てられた「観星台」に独り立っていた。足下は平定されたばかりの西川、東南は風雲が蠢く荊州、北方は間もなく変動する曹魏。彼は諸葛亮の返書を開き、「涅槃の場所」「天机の前兆」の八字を読むと、口元に複雑な笑みを浮かべた。


彼は紙を灯火にかざして燃やし、灰が黒い蝶のように舞い散るのを眺めた。手には馬超が今日献上した、精緻に描かれた「漢中の地形と曹军の布陣図」を撫でていた。


「孔明よ、孔明、お前は信頼の礎を与えてくれた」龐統は東南を眺め、低く囁いた。「ならば、あの滔々たる大火を変える第一歩を、この漢中の棋盤から着手しよう」


冷たい風が巻き上がり、灰と囁きを共に更に深い夜空へ吹き飛ばした。そして歴史の奔流は、この時の默契の中で、密かに方向を変えたのである。


(第二章 完)

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