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龐統が転生したら、諸葛亮は中原を統一できるのか?  作者: 鳳啼西川


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第一章:天の涙と涅槃

建安十六年、落鳳坡の矢の雨は鳳雛の命を奪わなかった。時空を捻じ曲げた一筋の稲妻が、幾本もの矢を負った龐統を血の海で目覚めさせ、副官の李逸が身代わりとなって死んだことに気づかせる。かくして、「先知」の視点を持つ謀士は、三国志の歴史を完全に覆す征途に足を踏み入れた。


このパラレル時空において、龐統の生存は最強の変数となる。彼はもはや歴史における功を焦る謀士ではなく、沈着で深遠な知略をもって、西では益州を平定し、北では漢中を奪取し、さらに夷陵の戦いで窮地を救い、蜀漢を支えるもう一つの天を支える巨柱となった。

建興十二年、春。上方谷。


炎の竜が咆哮をあげ、谷の中のすべてを飲み込んだ。魏軍の鉄甲の寒光が火の海で歪み、溶けていく。凄まじい悲鳴と木材の爆ぜる音が、司馬懿の葬送曲を奏でていた。山頂の諸葛亮は、羽扇を止めていた。その深遠な瞳には、一挙に中原を定めんとする破壊の炎が映っている。平静の奥底では、中原を平定し、再び取り戻すという星辰が、まさに再び輝き出そうとしていた。


その時、何の前触れもなく、一滴の冷たい水滴が彼の額を打った。


続いて二滴目、三滴目……瞬く間に、滝のような大雨が天から降り注いだ。天地開闢の頃のような無慈悲さで、燃え盛る火の竜を消し去り、蜀漢が最後に上げた国運をも消し去った。雨水は谷底から立ち昇る焦げ臭い煙を混ぜながら、諸葛亮の鶴氅かくしょうに降り注ぎ、重く、まるで鉄のようだった。


谷口では、ずぶ濡れで無惨な姿の司馬懿が、親兵の必死の護衛の下、雨に立つ山頂の影を一瞥し、馬を駆って生への迷い道へと逃げ去った。


山頂では、すべての将兵が泥人形のように沈黙していた。雨が岩を洗い流す音だけが、この理不尽な敗北を無情に大きく響かせていた。諸葛亮はゆっくりと顔を上げ、冷たい雨をその痩せた頬に受け止めた。怒号も、足を踏み鳴らすこともなく、ただ二筋の清らかな涙が、雨に混じって静かにこぼれ落ちた。


「悠悠たる蒼天よ……」その声はかすれ、風に途絶えそうなほどか細く、それでいて雨の幕をはっきりと突き抜け、聞く者の心に刻まれた。「何ぞ我に薄からん?」


この問いは、変わりやすい風雨に対するものではない。彼が重責を背負い、歩けども歩けども終わりが見えない生涯への問いだった。先帝の託孤の重み、荊州の喪失、関羽・張飛の死、夷陵の火……数々の遺憾が走馬灯のように彼の胸をよぎる。そしてその尽きることのない遺憾の絵巻の中で、風采は異なるが、睥睨へいげいとして飛び立つような一人の男の顔が、突如として鮮明に浮かび上がる。


龐統、龐士元。


彼と並び称され、水鏡先生に「伏龍・鳳雛、二人の内一人を得れば、天下を安んずべし」と絶賛された鳳雛である。もし士元がまだいたなら……もしあの年、落鳳坡の狭い道に入ったのが、彼ではなかったなら――


記憶は突然、建安十六年の夏へと引き戻される。凶報が届いた時、彼は荊州で政務を処理していた。筆が手から落ち、墨が竹簡に染み込み、それは固まらない血の塊のようだった。彼が失ったのは、最高の謀士だけではない。理想と戦略を託せる片翼をも失ったのだ。それ以来、北伐の重責、内政の細事、戦術の立案、ほとんどすべてが彼一人の肩にのしかかった。その骨の髄まで染みる孤独と疲労が、上方谷での功成らずして敗れたという極致の落差の中で、滔々たる大波となって彼を飲み込んだ。


「士元……」諸葛亮は目を閉じ、呟いた。「もしお前がいたなら、天下の格局、どうしてここまで及ぼうか?この茫漠たる前途、亮は歩き疲れたぞ……」


まるで彼の悲嘆と問いかけが、冥冥たる中の何かの力の共鳴を引き起こしたかのようだった。

その声が消えた刹那――


「轟隆!!!」


かつてない紫色の霹靂が、暗雲から落ちるのではなく、彼の足下の大地の奥底から炸裂した!電光はなく、ただ神魂を揺さぶり、時空そのものが嘆くかのような大音響だけがあった。諸葛亮は天地がひっくり返るのを感じた。周囲の雨、山、人々が瞬時に引き伸ばされ、歪められ、無数の渦巻く奇怪な色彩と化した。ぼんやりと、先帝の笑顔が見えた。託孤の時に涙をためた先帝の眼が見えた。落鳳坡で最後に振り返った時、少しばかりの誇りと決然とが入り混じったような眼差しをする、龐統の姿が見えた……


――建安十六年、夏。雒城近郊、落鳳坡。


痛み。


芯を刺すような、全身に広がる痛み。千本万本の焼け焦げた鋼の針が、すべての毛孔に同時に突き刺さるかのようだった。龐統の意識は、その果てしない痛みの深淵から、辛くも、少しずつ浮上してきた。

耳元には騒がしい人の声。泣き声と極度の恐慌を帯びて。「軍師!軍師!しっかりなさってください、軍師!」


「早く!金瘡薬きんそうやく!傷口を押さえろ!」


「軍師が矢に当たられた!軍師をお守りせよ!」


矢に当たる……落鳳坡……張任の伏兵……


記憶の欠片が押し寄せる。自分が主君の的盧馬てきろばに強引に乗り換えたこと。この木々が生い茂り、地勢の低い狭い道に入った時、心をかすめた不安。あの梶棒はんぼうの音の後、四方八方から蝗のごとく襲い来る矢の雨!的盧馬が悲鳴をあげて立ち上がり、自分は落ち葉のように巨大な力に打たれて馬上から投げ出され、世界は闇に落ちた。


私は……死んだのか?


これが死の味わいか?想像していた虚無とは違い、なんと痛く、そして……現実的なのか?


彼は全身の力を振り絞り、重いまぶたに抗って、ようやくわずかに隙間をこじ開けた。ぼやけた視界の中に、血と埃に汚れた、見慣れた親衛たちの顔があった。彼らの顔には生き延びた狂喜が浮かんでいる。

「軍師がお目覚めになった!天が軍師を守られた!」


龐統は口を開こうとしたが、喉からは「ひひっ」という擦れる音しか出なかった。必死に眼球を動かし、自分の体を見下ろす。確かに何本かの矢が刺さっていた。痛みの元ははっきりしているが、急所を外れているようでもあった。さらに彼の魂を震撼させたのは、囲む侍衛たちの向こう、少し離れた場所に――

額に白斑がある駿馬が斃れている。その傍らで、今の自分とまったく同じ臙脂色の文士服を着た者がうつ伏せに倒れている。その背中に刺さった矢は、針鼠のように無数で、とうに絶命している。そして横を向いた、青白く血に染まった顔は……


彼の書類を整え、よく「頭が回らない」と叱られていた副官、李逸ではないか!李逸が彼の服をまとい、的盧馬に乗っていた!


電光石火のうちに、龐統はすべてを理解した。乱軍の中、この忠実で朴訥な若者が、生涯で最も大胆で、最も決然とした「機変」を成し遂げたのだ。自らを餌とし、身代わりとなることで、張任軍が目標を達成したと思って攻勢を緩めた瞬間、親衛たちは必死に真の彼を矢と屍の海から救い出したのだ!

天の定めで我が龐士元がここで死ぬ定めではなかった!


忠魂が血を以て、この天命を我が為に書き換えてくれたのだ!


言葉にできない激流――悲しみ、狂喜、怒り、そしてかつてない悟りを交えて――が、激しく龐統の心臓を打った。出発前に、諸葛亮が懇切に利害を述べた書簡のことを思い出した。その時は、煩わしさを覚え、一蹴した。「亮、夜、天象を観るに、蜀中の将帥、多く凶あり。まことに謹んで行うべし」と。孔明よ、お前のこの星観の術は、まさか虚言ではなかったのだな。そしてこの「凶」兆は、まさにこれほど惨烈な形で、他の者が代わりに背負ったのか!


「はぁ……うっ……」彼は必死に散らばりかけた力を集め、血に染まった手で最も近くにいた親衛の腕を掴み、爪は皮甲に食い込まんばかりだった。その目に灼熱の光が輝いた。重傷者のものではなく、「鳳雛」龐統の持つ、峻烈で鋭い知性の光だった。


親衛は意を解し、急いで耳を震える彼の唇に近づけた。


龐統は最後の一片の清明さを使い果たし、歯の隙間からいくつかの途切れ途切れでありながらも極めて明瞭な音節を絞り出した。


「急ぎ……主君に報ぜよ……諸葛軍師の手紙の中の第二の策に従い……進軍せよ……雒城の囲みは……道を……仮借してもよい……」


言い終わらぬうちに、彼は再び激痛によって闇に引きずり込まれた。しかし今度の闇は、決して絶望させるものではなかった。彼は果てしない落下の中で、ゆっくりと開かれる扉を見た。扉の向こうには、まったく別の、波瀾に満ちた歴史の奔流が広がっていた。

そしてこの奔流の彼方、上方谷の山頂では、時空を超えたあの雷鳴の残響が、まだ完全には消えていないようだった。


――三か月後、成都郊外、大軍の陣営。


中軍大帳の中は薬の香りが漂うが、もはや濃くはない。龐統は寝台に寄りかかり、顔色はまだ青白いものの、両目はすでに鷹のような鋭さを取り戻していた。肩には白い麻布が巻かれ、動きはまだぎこちないが、それでも彼が戦略を練る妨げにはならなかった。


「報――!」斥候が素早く入ってきた。「申し上げます、軍師!張任の奴め、やはり計略にかかりまして、我が軍の主将が新たに亡くなり士気は低いと思い込み、自ら精鋭を率いて雒城を出、雁橋にて待ち伏せいたしました。しかし黄忠、魏延両将軍の逆襲に遭い、大敗!張任は魏延将軍に生け捕られました!」

帳中に侍る将たちは喜びの表情を浮かべた。しかし龐統は微かにうなずくだけで、すべては掌握の内にあるかのようだった。


「主君お見え――!」帳外で大きな声が響く。


劉備が早足で入ってきた。顔には抑えきれない興奮と気遣いが浮かんでいる。「士元!体は大丈夫か?前線の大捷、すべてはお前の神機妙算のおかげだ!」彼は龐統の傷ついていない手を握り、真摯な気持ちがあふれ出た。この三か月、龐統は臥せっていたが、親衛を通じて伝えた一つ一つの計略が、西川の戦局を完全に覆した。急進をやめ、着実に戦い、劉璋の内部を分化させ、敵を誘い出して打つ……どの一歩も、劉備が当初焦って思い描いた構想とは異なるものだったが、その一歩一歩は、最も堅実で、最も強烈な急所を踏んでいた。特に、諸葛亮が以前に述べていたものの、龐統が当時は取り上げなかったあの手紙の中の「第二の策」が、戦局を打開する鍵となった。


龐統はほのかに笑った。その笑顔には、生死を経験した達観と、鳳凰の涅槃のような輝きがあった。「統、命を辱めず。少々の矢傷、大事にはなりません。」彼は西川の地図に向き直り、指で雒城を指す。「張任を捕らえたからには、雒城は胆を潰した。令を伝えよ。三方を囲んで一方を開け、心を攻めよ。同時に、主君より劉季玉(劉璋)に書を送り、利害を説き、富貴を以て終老することを許すようお願いします。」


その指示は明瞭かつ果断だった。かつて自分を証明しようと焦り、危険を冒すことも厭わなかったあの謀士とは、まるで別人のようだった。帳中にいる将たち、そして劉備までもが、より沈着で、より壮大な力が、この「死から蘇った」鳳雛の中に目覚めつつあるのを感じた。


「ただ……」龐統はふと話題を変え、視線を東南――荊州のある方角へと向けた。「こちらのことを、孔明にも知らせねばなるまい。『伏龍』は既に出で、『鳳雛』も翼を折っていないと、奴にも知らせてやらねばな。この天下の碁盤は……」彼はそこで言葉を切り、目に諸葛亮も見たことのない、トップレベルの戦略家特有の深い寒光を走らせた。「まだ始まったばかりだ」


帳外、西川の風が旗を吹きなびかせ、はためく音が、まるでこの新たな鳴き声に応えているかのようだった。


(第一章 完)

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