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トランプタワー

眩しいくらいの青い空。こんな日は、空から何かふってきそうだ。


「どいてー!」



「お姫様がふって来た。」



「ごめん。凛おろして。」



咄嗟に受け止めたわけだけど、飛び込んで来たのは椿だった。



「椿!理由を話せば許す。」



高い所からの着地が苦手な竜ちゃんはオロオロと塀の上で歩いていた。



「やだ!凛と遊びに行くもんねーだ。」



ぎゅうっと首に腕を巻き付かれ苦しい。



「凛!レッツゴー!」


「はー?」



意味不な椿を横抱きしながら、走った。






竜ちゃんが見えなくなったところで、椿をおろした。



「あー。重かったー。」



「竜は軽いって言ってくれるからいいよ。」


「でー?説明がなんたらって何してんの?ったくー。せっかく部活が休みなのに。」



「…いつもみたいに、私から竜にキスしたの。そしたら…」



椿の話を省略すると、竜ちゃんを押し倒してしまったらしい。で、心の準備が出来ていない竜ちゃんが驚いて、我に返って逃げる椿を竜ちゃんが追いかけて、おいかけっこになったらしい。


「確かに、竜ちゃんは結婚式でキスもするとか言ってた純情男だもんなー。なのに、椿は奪ったわけだ?」



「う。私責任とって結婚するよ。」



「あーあ。男と女逆だな。」



「まだ竜からはキスしてくれないし。私の事好きじゃないのかな。」



「そんなにしたいなら、俺がしてやるよ。」


「凛?」



目の端に竜ちゃんが写った。俺は椿を引き寄せ、椿の整った唇に俺の熱い唇を重ねた。



「凛…。」



息を切らせて走って来た竜ちゃんは、俺を無理矢理椿から引き離した。



「な…にしてんだ?」


「ちゅー?」



右頬にストレート入りました。



「椿!お前は誰とでもするのか?」



ボケーっとしている椿。



「聞いてんのか!」



「あー。イテ。竜ちゃんどうどう。」



ギロンと目だけこっち向いた竜ちゃん。



「ごめんなさい。凛は悪くないの。私から誘ったの。」



「違うだろー。俺から」



「…分かった。」



しょんぼりと、竜ちゃんは帰って行った。椿を見ると、目に涙が溜まってる。



そんなモンか?



椿も肩をふるわせながら反対側に帰って行く。



と思ったら、前方から竜ちゃんが走って来て椿を後ろから抱きしめた。



「竜?」



「オレが悪かった。オレんち戻ろう。」



「うん!」



…だから。このカップルの展開かなり謎なんだけど。俺を通り過ぎる時の竜ちゃんのドヤ顔は、さすがに腹が立った。



あの唇の感触は癖になりそう。



俺は無意識に自分の唇を触っていた。





俺もマンションに帰ると、部屋の前に栗林が立っていた。



「お坊っちゃま。お帰りなさいませ。」



「ただいまー。」



「…氷で冷やしましょう。」



暗証番号を押した後に、ガチャ。と鍵を開けた。



「竜様ですか?」



「ん。気持ちー。」



「竜様が殴る喧嘩は珍しいですね。」



氷を頬にあてながら、栗林の嫌味を聞いた。


「でー?今日は何しに来たのー?」



「今日は休日ですので、個人的に坊っちゃんの様子を見に来ました。一人では寂しいと思いまして私でも遊び相手になりますよ。」



懐からトランプを出した。



「二人でトランプはつまらないよー。」



「こうやって…」



トランプでタワーを作り出した。



「ね?」



「ふーん。私服で来れば良かったのにー。」


「では、バスルーム借りますよ?」



「持って来たのか?」


栗林がにこにこーっと笑ってドアを閉めた。俺はまだ一段目のトランプタワーに息を吹きかけた。当たり前にパタンと倒れる。



ガチャ。



「倒すの好きだな。」


「でたー。はじめ兄ちゃん。」



私服だと、執事の栗林からはじめ兄ちゃんに早変わり。つまり、兄弟同然になる。小さい頃部屋にこもっていた俺の唯一の遊び相手が、はじめ兄ちゃんだった。



「オレが決めた部屋は気に入ったか?」



「ばっちしー。」



「久しぶりにトランプタワー競争しよっか!」



「赤いのひいたー?」


「こんくらい大丈夫だ。ほら早く!」



「はいはい。」



無邪気に笑うはじめ兄ちゃんは、執事の時と正反対でコロコロと表情が変わる。



「よーい、スタート!」



はじめ兄ちゃん上手いなー。



俺はプルプルふるえながら、トランプを…。二枚立たせるのも難しい。既に二段に突入したはじめ兄ちゃん。俺は、邪魔する事に決めた。



「ふー。」



「おーっと!凛も一緒に作るか?」



「いいの?」



というパターンになる。不思議とトランプタワーを作ってる時は嫌な事を忘れられる。はじめ兄ちゃんの真剣な横顔を見るのも面白い。




「できた!五段タワー!」



「ほとんど、はじめ兄ちゃん作だねー。」



ワシワシと頭を撫でられた。



「凛も協力してくれたじゃん。こことか。」


「重ねるトコロだけねー。」



「元気出たみたいだな。今日は泊まっていいか?」



「バレバレかー。はじめ兄ちゃんなら大歓迎ー。」



近くにいて、守ってくれる人がいる。



鈴姉さんの将来の旦那さん。頭を撫でられて一番安心できる人。



「何見てんだよ?」



「カッコイイなって思ってさー。」



「ははっ。当たり前だろ?」



リラックスした執事も、たまにはいいだろ?

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