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キヨの質問タイム

「立川ー!そっち行ったー!」



スカッ。



「タイム!」



レフトの部長がズンズンと近づいて来た。



「おい。何してんだ?」



「ん?あ、今2・3年対抗練習試合だっけー。」



「立川はベンチ行け。代わりに、石田ー!ライトな。」



俺は、何も言わずベンチに座った。



「凛先輩?さっきからずっと唇触ってますよね。口内炎すか?」



キヨっちが隣に座って俺の顔を覗き込んだ。


「んーん。ここが熱いの。」



「…部活中にまた、ハズい事を。」



「ふーん。ハズいのー?」



「いや、全然!大丈夫すよ!」



「キヨっち耳の後ろに赤い痕ついてるー。」


バッと慌てて左耳を隠すキヨっち。



「そーゆうの。恥ずかしいって言うんだよー?ちなみに痕とか嘘だから。」



キヨっちに、ニッと笑いかけた。そんな話ばっかしてたら、部活が終わった。



「立川来い。」



「何だよー。」



部長に呼ばれた。後をついて行ったら職員室の監督の机の前にたどり着いた。



「西岡は、転校する事になったって事は知ってるよな?」



「は?」



西岡の方を見ると、目をそらされた。



「少しの間だが、お前が次のキャプテンだ。」



「…もう2年がいいんじゃ無いんすか?キヨ…荒城とか。」



「西岡の推薦だ。なぁ。」



「お前なら任せられるんだ。頼む!」

俺の前で、両手を合わせる西岡キャプテン。


「何で俺ー?ひょっとしてみんなに断れて最後の切札とかー?」



ピクっと、監督と西岡の肩が反応したのを見逃さなかった。



「まとめんの無理だしー。」



「少しは授業の出席を埋めてやるから!」



「…それって、詐欺?」



「動物園のチケットやるから!」



「んー。」



ここまで頼まれると何かウケんだけど。



「ま、いーか。」



「ありがとう!」



男二人に手を握られてもねー。



「いーかげんな部長になるかもよ?」



「立川はやればできる!」



「よし!仕事を教えるから。」



部室に入り、俺は鼻歌まじりに、着替え出した。


「立川、まさかニューキャプテン?」



「ん。優しーいキャプテンで良かったなー!」



内田の質問に笑顔で答える俺を見て、部室中にほぼ全員のため息が響き渡った。



「ちょー待て。何その落胆したようなこの雰囲気ー。」



「凛先輩!先輩で良かった。」



「おい。荒城どういう意味だ?オレなら無理なワケ?」



咲枝は、キヨっちが本気で嫌いらしく最後に舌打ちまでした。



「まあまあ。喧嘩はやめようぜ。」



「そーそ。内っちの言う通り。ってかひょっとしてーみんな俺を待ってたのー?」



「短い間だがこれからよろしく。」



「ん。ほぼ藤崎に任せるけどー。」



「仕事の内容教えただろ?」



「はいはーい。」



部長が俺を仕付けるのに安心した野球メンバーはぞろぞろと帰って行った。



「先輩今日寄ってっていいっすか?」



「んー。いいよー。」


部長と副部長は仲良く部室を出た。



「凛先輩、キスしたんすか?」



とんでもない質問に、ガリっと自分の指をかんだ。



「いつつー。悪い?俺もちゅーくらいするしー。」



「マジすか!?詳しく教えてくださいよ!」


「えー?こーゆうのは大切な思い出とゆーかー。」



キツネっぽいキヨが、ウキウキした目で見てる。



「家でならいーよ。」


「やりっ!」



カバンを振り回して喜んでる。俺はベルトをしめて着替え終わった。



「帰るぞーい。」



「あ!待って下さいよ!」



放し飼いってこんな感じかもなー。曇ってるのと時間的に薄暗くなる中、走って俺のマンションに向かった。



「雨降らなくて良かったすね。」



ガラス張りのエレベーターの中で、外を眺めながらキヨが口を開いた。



「個人的には雨好きだよ俺。」



「濡れるの嫌すよ。」


チーン。



キヨは跳ねてエレベーターをおりた。それを見て笑いながら後ろから、ゆっくりおりる俺。



「ここっすよね!」



「そーだよ。」



暗証番号を押すのに慣れた。キヨは一生懸命見てる。



ガチャ。



「ただいまー。」



「凄いっすよね!一人暮らしとか憧れるなあ。」



「ははっ。意外と寂しいモンだよ。」



「で、誰としたんすか?ウチの学校の先輩?」



「んーん。」



冷蔵庫からオレンジジュースを出してガラスのコップにつぎながら答えた。


「はい。オレンジジュース。」



「見れば分かりますよ。それより真相を!」


「苦しくなる人。」



「…はい?」



「彼女を見ると心がぎゅぎゅぎゅうーって、締め付けられるんだ。」



自分がハズくなりオレンジジュースを半分飲んだ。



「いいすね。オレにはまだいません。」



「片想いで、彼氏いるんだけどー。」



「えー!?マジすか?でも、嬉しそうすね。」



「まーねー。」



嬉しい?違う。従兄弟の彼女に無理矢理キスして嬉しいはずない。


キヨは俺を憧れなんて言うけど、それほどの器はないんだ。



「お互い、いい相手見つけましょーね!」



あー。キヨにはお見通しか。



キヨのその一言で現実に引き戻された。

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