プロローグ
うっすらと立ち込める霧の向こうに、見知らぬ少女が立っている。
湯上りのようにほんのりと赤く染まった顔には驚きの表情。
アップにしてまとめている髪も含めて、全身がびしょびしょに濡れている。
身につけているのは黒っぽいワンピースの水着だけ。
肌も血色のいい感じで、ほんのりと赤く染まっているのがなんとなくわかる。
はっきりとは見えないが、整った顔立ちをしている気がする。
しかしそんなことよりも。
彼女の左肩に変なものが載っている。
あれって妖精とかいう生き物?
いやいやいや。
大きさはたぶん三十センチ以上。
四分の一のフィギュアくらいの大きさがあるのでは。
霧の中でもわかる、淡い紫色の長い髪とルビーのように真っ赤な瞳。
水着のような服をまとい、その背中には半透明な蝶の羽のようなものまで生えている。
整ったその顔立ちやスタイルは、よく出来たフィギュアのようも見えるが、絶対にフィギュアではない。動いてるし、何やら怒っている。
そういやあなんだか蒸し暑いけど、ここはどこだ?
あたりを見回そうとすると。
「こらー! キョロキョロするなー!」
妖精さん(?)に怒鳴られた。
そのサイズのわりに声は大きい。
「あなたは誰なのー?」
びしっと指さされた。確かに生きているっぽい。
「えっと……」
思い出そうとしてみる。
ん? なんか頭が痛い。ズキズキする。
触ってみたら……手が真っ赤だ。
え? 血?
まるで自分のものではないような、べっとりと濡れ、真っ赤に染まっている手のひら。
あれ? なんか体中が痛いぞ……? 左手も動かない。おかしい。
こちらをじっと見ていた、妖精さんを肩に乗せた少女が、ふと驚いたような表情を浮かべた。
ますます凝視されている気がする。
足元は水? プール?
にしては浅い。ひざ上くらいまでしかないし。
いやこれはお湯だ。
お風呂??
周りを見渡す。
自分の周りにはなんかレンガだかコンクリートだか何やらガレキっぽいもの。
周りのモヤの向こうには…目の前の美少女と似たような水着姿の女の子が多数。たぶん。よく見えないので。
肌色成分がかなり大盛りなのは確実だ。見えないのが良いのか悪いのか……。
「あの……大丈夫ですか?」
目の前の少女が心配そうな表情を浮かべている。
声も可愛いな、と思ったらクラリとした。めまいかな?
状況も自分もなんかおかしい。それだけはわかった。
たぶん恋心でクラリとしたのでは無いはず。
「スープラに近づくな!」
後ろから怒鳴り声が聞こえ、同時に衝撃が来て意識が途切れた。




