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047話 松江城天守の戦い 1


 出雲の国 松江藩 松江城にて


 元禄15年5月3日(1702年6月)、午前10時頃であろうか松江城攻防戦が始まった。

趙雲はじめ趙雲隊は大手門、三の門、二の門、一の門を突破して本丸に入った。

これと同時に西より攻め入った木下㒶定(きんさだ)が指揮する関羽隊は、亀田橋より侵攻し西門を破壊し二の門内側を占領し、趙雲隊と合流して一の門を突破して本丸に入った。

ここで戦闘指揮所の阿久利から指示があった。


「こちら戦闘指揮所。木下分隊は千鳥橋を浅野軍に任せて、関羽隊本隊と合流せよ。事前の打ち合わせ通り作戦を実行する。稲荷橋を封鎖している浅野軍、北惣門橋を封鎖している池田軍は警戒を厳重にせよ。本丸を攻めるに当たって落城時に脱出者が出るものと思われる、蟻の子一匹逃すな! 以上だ」




 イワレヒコ本拠地 戦闘指揮所


「姫様、木下分隊を戻して何をさせるのですか?」


と部名もみじが阿久利に尋ねる


「ふふふふ...まあ見ていなさい。彼ら槍の使い手が得意なことですよ」


「はて? どういった事でしょうかね」


「木下分隊に橋の破壊だけでは余りにも可哀そうでしょう。少しは活躍の場を与えてあげないと」


「言われてみれば確かに...」


「あなたは虫型偵察機を使って、松江城の隠し仕掛けを探しなさい。大事な任務ですよ」


「は~い、了解しました~」




 松江城 天守入口 付櫓(つけやぐら) にて


 時刻はちょうど正午頃、松江城攻略が始まって一刻くらいであろうか。突撃隊を率いる趙雲の前に立ちはだかるのは、実戦を想定して築かれた漆黒の巨大要塞である。

「牛ごぼう積み」と呼ばれる頑強な石垣の上には、黒い雨戸で覆われた下見板張りの天守が、まるで黒漆の鎧をまとった巨人のようにそびえ立っていた。

 松江城は五層六階の天守に付櫓を加えた複合天守で、付櫓が入口となっている。天守は牛蒡積の天守台の上に立ち、外観は黒い全面板張りの二重櫓の上に、三重櫓を載せた望楼型天守である。

一、二層は黒い板張りの壁に狭間や石落としなどの防衛設備を持つ。三層は入母屋屋根(破風)をどの方向からでも見えるように配置し、天守の最上階は高欄を四方に巡らし壁のない展望のきく望楼で、監視塔と司令塔の機能が備わっている。


 付櫓(つけやぐら)とは、日本の城で天守や主要な櫓、城門に付属して建てられた小規模な櫓のことである。天守の出入り口を守る防御施設としての役割が強く、敵が天守に近づいた際に側面から攻撃するために張り出して作られることが多い建築構造だった。

付櫓の主な役割は防御と攻撃だ。天守の入り口に直結し、侵入してくる敵を横から攻撃する。鉄砲と横矢を掛けるための重要な防衛拠点となっていた。

付櫓の入口は鉄延板張りの大戸があり、入ると枡形の小部屋になっている。ここで防衛側は飛び道具で集中攻撃を仕掛けるのである。

また入口の両側にある石落としは外から見ると三角に出っ張っているが、中から見るとその隙間から石が落とせる構造になっている。



 突撃隊を率いて本丸にある天守の付櫓に到達した。付櫓の入口は鉄延板張りの大戸があり、今は非常事態のため閉じていた。その鉄張り大戸の両側に石落としがあるが、趙雲はじっと石落としを凝視している。

その時戦闘指揮所から指示が出たのである。


「木下分隊の木(きの)-1と木-2は左の石落としへ、木(きの)-3と木-4は右の石落としを担当せよ。その他の突撃隊員は鉄砲と弓矢の対処だ、雨(あめ)霰(あられ)と矢玉・鉄砲玉が降って来ると予想する」


 木下分隊の4人は阿久利から指示を受けると石落としの下へ進み出た。手に持った武器はなんと強化棒の先に円盤が付いていた。ちょうどレコード盤くらいの円盤だった。

これで何をするのかその場にいるイワレヒコ軍の全員と、松江城下で中継を見ていた浅野綱長・池田吉明は疑問に思ったのである。


「パーン、パーン、ヒュッ... パーン、パーン、ヒュッ、ヒュッ、ヒュッ」


と連続で射かける音がする、凄い音量である。木下分隊の4人が付櫓に接近し石落としの下へ入ると、早速付櫓から石が落ちて来た。木下分隊の4人はそれぞれ落石に対処する、強化棒の先に付けた円盤で

「えいっ」

とばかり落石を突き上げた。石落としから落ちて来た石を城の中へぶち込もうというのである。

槍の達人によって突き上げられた石は、今度は逆の運動法則に従って元の場所に戻ろうとする。それも10倍の速度でだ、これを『10倍返し』という。


「ドカーン、ドカーン、ギギギギ... ドカーン、ドカーン、ギギギギ...」


付櫓の内部から不気味な破壊音が聞こえたが、落石は結局のところ4個止まりであった。考えてみれば当然と言えば当然であった。

打ち返された石は戦車砲弾並みの運動エネルギーで付櫓に飛び込み、内部でバラバラになり跳弾の如くなったはずだ。

狭い空間で跳弾現象が起これば、内部にいた者は挽肉だろう、おそらく誰も生きてはいまい。


 続いて木下分隊の4人は強化棒の円盤をコンパクトディスクくらいに縮小し、付櫓の入口の鉄板張り大戸の前に立つ。4人が並んで強化棒を構え、気を練り気合を込めて一気に突き出した。


「ドォン、ドォン、ドォン、ドォン、」


4回音がした後に各自、連続突きを繰り出す。淡路流槍術の本領発揮である。小さな貫通音が繰り替えされた後に、鉄板張り大戸は内側に千切れて倒れるに至った。


 入口を潜り中に入ると枡形の小部屋がある。ここは石落としの部屋から少し離れているためか死者は無く戦闘力を無くした怪我人で溢れていた。跳弾現象を甘く見てはならない、至る所で怪我人が呻(うめ)いていた。

本来ここは攻め入った敵を迎え撃つための場所であって、守備側が全滅する場所ではない。その証拠に天守内部からこの小部屋を狙うための鉄砲狭間が設けてあった。

趙雲達が階段を駆け上がるとそこは此の世の物とは思えないほど悲惨な場であった。先程の10倍返しされた部屋である。部屋と言うか部屋があった場所と言った方正しい......


 一階層では松江藩士が多数襲いかかってくる。その数約30人余り、対するは関羽隊・趙雲隊の18名がこれに対応する。すなわち出会い次第強化棒でぶん殴るのである。何故か全員強化棒である、隊員曰く

『持たば太刀、払えば薙刀、突けば槍』

とにかく万能武器だそうだ。ホムンクルス部隊の中では棒術が大人気らしい。

鎧武者集団が刀を持たずに棒を振り回すなど気にしたら負けである。

趙雲隊副隊長の礒貝十郎左衛門などは知性派らしく、流血沙汰は好きでなかったため強化棒は大変気に入っていた。

二階層も同様に制圧していったところで戦闘指揮所から連絡が入った。


「こちら戦闘指揮所、探索担当の部名もみじです。突撃隊の皆さんにお知らせです。三階層と四階層は『武者隠し』が至る所にあります。また天井に階段が収納されている場所もあります、ご注意ください」


 松江城の「武者隠し」とは、天守の内部(主に3階や4階)にある、屋根裏や破風(はふ)の隙間を利用して設けられた隠し部屋のことである。攻め込んできた敵兵を待ち伏せし、不意打ちや奇襲を行うための軍事的な防御の仕掛けを指している。

小部屋へ出入りするための階段や、外から見つかりにくい小さな潜戸(くぐりど)もあった。

また普段は隠し階段を外しておくことで、敵に侵入された際も容易に見つからない構造になっていた。

階下から侵入してきた敵の背後や頭上を取り、鉄砲を撃ち込んだり刀で斬りかかったりして迎撃するための仕掛けである。



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