038話 阿久利 イワレヒコの本拠地訪問 2
安芸の国、野貝原山 地中の拠点 イワレヒコと孔明の会話
「なあ 孔明、阿久利たちだがこんなにまわり道させる必要があったのか? 遺跡にカムフラージュした岩の残骸巡りをしただけだろう。普通に近道させても良かったんじゃないか」
『わが君 それは間違いです。苦労すればするほど有り難味が増すのが人というものです。これは様式美です!』
「そうだった、お前は<三顧の礼>という意味もないのを重んじる奴だったのを忘れていたわ」
『意味がないというのは間違いです。大いに意味があります。その証拠にわが君もずいぶん楽しんだではありませんか』
「まあちょっとは楽しんだがな。それはそうと例の奴を出すのか?」
『ふふふふ......登場させますかね...』
安芸の国、野貝原山 地中の拠点
阿久利ともみじは入口から奥へ通路をどんどん進んでいく。たまに分岐点はあるがそちらへ行こうとしてもその先は真っ暗で照明はついていない、まるで誘導されているようだ。というか孔明が中心部へ誘導していたのである。
体感で300mくらい歩いたであろうか前方に大きな扉があり行き詰った。扉の大きさは高さ3m幅1.5mが2枚あった、つまり両開きである。丁番らしきものは見当たらないのでスライド式の引き戸と思われた。
『胸の高さにあるパネルに手を翳して下さい』
どこからともなく孔明の声が聞こえてくる、今度はキョロキョロとしなかった。流石に二人は学習していたのである、声の主を探しても無駄だと。
しかし「パネル」とは何ぞや?? なにか全面に1尺角の黒い板らしき物があったので、よく判らないままに手をかざしてみた。すると板はわずかに光り七色の光が点灯したあとに音声を発する。
『資格者であることが確認できました。以後手をかざす必要はありません。自動的にセンサーが反応して扉は開きます』
すると全面のスライドドアが音も無く開いた、阿久利に続いてもみじが入ろうとすると弾かれる。もみじは、はたと気づいてパネルに手をかざす。阿久利の時と同じ経過をたどると認証完了の声が聞こえてくる。阿久利に続いて入室したのである。
入室?? これは部屋と言えるのか、とてつもなく広い空間で向こうの壁まで100mくらいあった。そこには半透明の巨大なドームがあり、中は見たことの無い金属の箱みたいなものがいくつもあった。表面は様々な色の光が走っている、ところどころで激しく点滅している箇所もあった。
封建時代の人間がスーパーコンピュータを見て理解できるだろうか? わかるのは『不思議な金属の箱』というくらいだろう。
『ようこそ<わが君の秘密基地>へ、今お二人の前にあるドームの中の巨大な箱が私、<孔明>の本体で御座いますよ。案内を差し向けますのでそのままお待ち下さい』
と言うと変わった服を着た人間らしき者が現れた。案内の人間らしき者が<ついて来い>みたいなゼスチャーをすると二人はそのあとを追う。一旦廊下に出て真っ直ぐ進み、突き当りの反対側の扉を開くとそこは10m四方の部屋で前面斜め上に大きなパネルがある。5m×2.5mくらいだろうか黒い板だった。
そこへ18歳くらいの華奢な体つきの若者が入って来た。
『自己紹介は済ませましたね、孔明こと<亮>と言います。外界で活動するためのアバターです。依り代と言えば解かりますか?』
「まあ 孔明さんってこんなに可愛らしい顔でしたのね。弟みたい♡ もみじと仲良くしてやって下さいまし、年頃も近いみたいだし...」
『阿久利さん、年頃も近いと言われても1,500歳+18歳のお爺さんですよ』
「そんなこと関係ありませんわ、イワレヒコ様だって何万歳かも知れませんし...要は見た目が大切でございますわよ」
阿久利は無茶苦茶を言っているようだが、実は理に適っている。アバターには生殖能力があるため二人の間に子供ができちゃったりする。もみじの方も満更でもないという顔をしていた。
「悪くはないですわ」「むしろ実は嬉しい」
といった内心では好感触を抱いているのが見え見えだったのである。
『まあそれはともかく、この部屋の説明を致しましょう。ここは「指令室」といって各作戦の指揮を執る場所です。例えば前面の大型モニターを使用して遠くのものを見たり、実働部隊と通信して作戦の指示を出す場所です。むろん画面は切り替わりますし、分割表示もできます。両側のサブモニターでの補助もできます』
孔明こと亮が言うと前面のモニターとサブモニターが起動する。メインモニターには広島城の本丸御殿が、サブモニターには三次藩庁の陣屋と養父である浅野長照の姿が映し出される。これを見て二人はびっくらこいた、画面の中の父親が動いていて声まで聞こえるのである。
「父上、父上、聞こえますか。阿久利です!!」
『阿久利さん、向こうにはスピーカーがないので声は聞こえません。話しかけても無駄ですよ』
「会話は出来ないのですか?」
『設備を整えれば可能ですが今は出来ません』
『ここがお二人の職場です。阿久利さんが<指令>でもみじサンが<指令補助>になります。仕事には追々慣れてもらえればいいです。服装はこちらで支給しますね』
「それは構いませんが...言いにくいのですが...私、髪が無いのです。殿が切腹された後、剃髪しまして...今は坊主頭です......」
『お任せ下さい、イワレヒコ様からその件について指示を受けています。阿久利さんに相応しい服装と頭髪を用意しております』
「ねえねえ、私のは無いの?」
『勿論ございますとも、もみじサンに似合う服も用意しておりますとも』
『ではこの拠点の施設の案内をします。メインモニターをご覧下さい。この拠点の心臓部が計算脳セクターになります、私の本体部分ですね』
と言うやいなや画面が切り替わり、平面図が映し出される。100m四方の計算脳セクターを取り囲んで円形の通路がある。時計回りに解説すると南側が指令室関係、西が医療関係、北に大食堂、東が居住区と表示された。訓練場や長期休眠室などは別のフロアーにある。
『指令室の周りに小部屋が幾つかありますが、指令室要員の控室です。ご自由に使用して下さい。
では阿久利さんは隣の控室へどうぞ、もみじサンはその隣の部屋へ』
暫くのち部屋から出てきた阿久利の格好はとんでもないものであった。上着は半袖、下はミニスカートに皮のブーツ、頭髪はなんとオカッパ型の銀髪かつらだった。元々スタイルは良かったのでとても似合っていた。現代風に表現するならば、出るところは出て、くびれるところは引っ込んで、いわゆるボン・キュ・ボンと言いうやつだ。
もみじはこの時代の女性らしく超ロングヘアで、ポニーテールのように後ろでまとめていた
『イワレヒコ様、見ていますか。応答して下さい』
「おう、見てるぞ。阿久利はとっても似合っているぞ。髪が伸びるまで暫くその恰好で頼むな、目の保養になる。もみじも凄く可愛らしいぞ」
と上の方から声が聞こえてきたのである。しかも嬉しそうだった......




