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PWLA(パウラ)  作者: EST
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切れ!スタートダッシュ

キャラクター紹介

出本いずもと はじめ

主人公、極度のルーティン遵守癖があり。あだ名はロボット。

等級ランクプリズム。


虹宮にじみや レイン

出本の幼馴染でライバル。自信家で絵に描いたような「エゴイスト」である。

等級ランクプラチナ。


風見かざみ はな

2人の幼馴染。仲裁役。科学オタク。


朱井あかい アイン】

高専の教師にしてパラレル理論の第一人者の一人。

若さと青春をこよなく愛す科学者。

口癖は「これも若さか__」


あらすじ

時は2100年、日本は並行世界の観測に成功しそこからエネルギを得ることで未曾有の技術発展をしていた!

中でも並行世界の自分を憑依させ人ならざる力と能力をある技術「PWLA」は日本にさまざまな発展をもたらした____


高専は入学早々、朱井と言う博士の提案で変身テストを行なったレイン

しかし、雨は変身と同時に記憶侵食メモリーバグに襲われ錯乱状態となり暴走してしまう!

咄嗟に一は彼女を救うべく変身をするが____

(アレ____私何してたんだっけ?____)


レインは微睡から目覚めた様な感覚を覚える。

否、目覚めたというにはあまりにも思考はぼやけている。

さらに言えば視界はさらに不明瞭で、と言うより見えているのに頭に入ってこない。


(頭が重たい、なんだっけ?____ここは確か__)


「ぐッ____!!?」


脳内の声と感情と記憶のフラッシュバッグが一気に増える。

漠然とした恐怖が確かな実像を持って感情を支配する。


恐怖から逃れたいという欲求、何故?と言う疑問、どうにもできないと言う不満と怒り、嫌だと言う拒絶。

それらが増殖した上から別の思考や感情に塗りつぶされていく感覚に再び思考が鈍化していく。


(なにこイヤダイヤダイヤダれ、私は確かPイタイイタイイタイイタイ____変身をしコワイコワイダメダメダメイヤコンナノクルシイシニタイシニタクナイイタイノヤダナンデコンナノワタシダケコンナノ____)


「ふぅうう゛...ぅう...ぐっ、ぁあ゛ッ!!?」


彼女自身の記憶、確かにこれまで生きていた記憶に知らないはずの、しかし夢幻というには生々しすぎる記憶が割り込み塗りつぶしていく。

まるで今までの記憶の方が幻だったんじゃないかと思う程に錯乱していく。


(こんなの知らない!!こんなな私じゃない!!でもあいつは確かに!?この顔は確かに私!夢?!違う!!)


何十台のラジオが同時に流れている感覚に襲われてはストレスにストレスを感じてさらに怒りと悲しみと恐怖がリフレインしていく...。


(うるさいうるさいうるさいうるさい!!____どうしたら良いの?!もう黙って!もう誰か、誰か__誰か____!!!)


「レインッッ!!!!聞こえるかぁッッッ!?!!」


「ッッ!!?」


一瞬、急に顔を叩かれたような衝撃に思考に空白が生まれる。

静かさがうるさく感じるほどの急激な変化に視界が広がる。


「ぁ____」


ようやく自身の状況を再把握する、ここは実験室で目の前にいるのははじめで...。


「な、なんでアンタが居るのよ!?」


「やっと聞こえたか...いいかよく聞け!今お前は記憶メモリー侵食バグで錯乱してる!深呼吸しろ!落ち着け!自分を見失うな!思い出せ!!」


「そ、そんなこと言ったって____」


(一は死んだはず、アレは偽物だ___)


(違う!!それはあっちの私の世界の話でこっちは生きて)


(そう言う幻影に違いない、そんな手を使うのはヤツらの常套手段)


(自分の身を守れ、殺せ、痛みから苦しみから恐怖から解放されたいなら____)


「いやっ、はじめ...逃げて...!ちが、だからっ、...殺っ...死...がっ」


彼女の体からエネルギー波が乱発されては部屋を揺らす、頭を抱え、幻影を振り払うように腕を振り回し、秒毎に人が変わったかのように言葉が溢れていく。


「____仕方ない、少し乱暴するからな」


はじめは一息つきながら歩き始める、ゆっくりとレインに向かって一歩ずつ。


「ッ!来たらダメ!こないでっ...く、くるなっ!これ以上は....はっ、ハァッッッ、ハァッッッ!!!」


今までとは一際違う、明確に殺意を持った念動力を一瞬溜め____


「近づくなぁぁああ あ゛ ぁ゛ あ゛  あ ゛  あ゛ッッッ」


溜められたエネルギー波ははじめ目掛けて一直線に放たれる、空間を歪ませるほどの濃度と勢いは間違いなく必死の攻撃である。


「____ッ」


はじめはその念動波を右腕で軽く殴りつける。

凄まじい破裂音と振動が部屋を震わせ体を芯から痺れさせてしまう。


「きゃぁぁあっ!」


強化ガラス越しにでも頭に響く衝撃に堪らず華は耳を塞ぎ悲鳴が出てしまう。


「む、無茶苦茶だ...!あんなの真正面からぶつかって無事なはず...___!?」


別室の3人は目の当たりにする、今しがた必死の攻撃を受けたはずの彼は何事もなかったかのように全身を続ける。


「くるなくるなくるなぁぁあぁああああぁあッッ!!!」


再び放たれる念動波、それを一は片手で打ち払うそれを何度も何度も繰り返しながら確かに前進していく。


「そんな...アレを受けても平気なのか...」


「そりゃ当然だろう。今、出本には100人分の憑依がされている。強度は並大抵の戦車なんかとはにならないレベルだろうさ。」


一の身体の輪郭が虹色に輝く。その姿に菊地は呟く。


「これがプリズムクラスの万華カレイド現象...」


「万華現象?」


華が菊地の呟きに反応する。


「プラチナクラス以上の変身者は、自身の体の周りにエネルギーの膜を何十にも張る影響で空気を屈折させるほどの光を纏うように見える。」


「それがあの光...」


「プラチナとプリズムは通常白く光輝くが、そこから更に自己捕捉数が上がると虹色に光出す事がある、___それが通称」


万華カレイド現象エフェクト、世界で実例を3つしか見られていない現象だ...まさかここで見ることになるとはね。」


目を輝かせながら朱井は一の姿に魅入られていく。


「言ってる場合ですか!?このままじゃこっちが危険です!安全装置の許容を超えかねません...!」


冷や汗をかきながら緊急停止の準備を進める菊地の腕を朱井が掴んで静止する。


「まぁ黙って見てろ、あいつも考えなしで突っ込んだ訳じゃない。__それに大人が若者の青春を邪魔しちゃいけないよ」


どこか眩しそうに2人を眺めながら朱井は呟く。


「なんで来るのよ!今更!わ、私はもう諦めたのに!なんでッッ!!」


振り払うような念動波を振り払いながら一歩一歩前進していく。


「どうせこれも幻覚!また嘘!きっと私はまた置いていかれる!!」


顔を苦悶に歪ませながら嵐のような攻撃を繰り出し、一はそれをいよいよ正面から受け止めて、それでも前進していく。


「だから私は、わたしは、ワタシハァ!!!」


目の前まで迫った一に、念動力で雨は首を締める。

一の首に手の跡が浮かび、顔をのけ反らせながら一は声を詰まらせる。


「アンタを...一を、置いていこうと...したのに...!!!」


一は首を閉められながら、力を込めて一歩。

ついに手が届くところまで来る。


「____ッ!」


止め切れない、と確信して思わず身構えた雨は次の瞬間体を包む腕の感覚にハッとする。


「...っはぁ、はぁ...はぁ」


「っふぅ...悪かった、ごめん」


一の謝罪に、声を絶え絶えさせながら雨は涙を溢す。


「俺には何もないって、分かってるつもりだった。そう勘違いしてた。」


「う...うぐぅ...」


大粒の涙を流す雨を静かに抱き止めながら一は続ける。


「お前らが、...お前がいるってのに...すっかりそれを忘れてた。ごめん、...もう諦めない。誰も置いていかない...居なくならない...だから__」


「もう大丈夫だ____」


「ぁああ゛ぁ゛あぁぁぁあ____」


部屋に多声の泣き声が響く中、精神バイタルの安定を見て菊地が一息つく。


「はぁぁ、し、死ぬかと思いましたよ...」


「ほんと君は根性がないなぁ、腰抜かしてないで装置止めな。」


ハッとしながら急いで2人のリングを停止させ、2人は元の姿へと戻っていく。


「____」


「っ!」


雨は糸が切れたかのようにその場で倒れ込む、はじめはそのまま抱き支えては安堵の息を漏らす。


「うわぁぁあぁぁああん!!ふだりどもだいじょうぶ?!?!」


泣きじゃくりながら大慌てで華が入ってきては、2人に抱きついて心配を口にする。


「うっ!、...あぁ、俺は大丈夫だ。雨も寝てるだけみたいだ、心配かけたな」


「ほんとだよっ、いきなり飛び出したと思ったらメチャクチャし始めるしほんと怖かったんだから!!」


いつも怒ったりしない華の動揺っぷりに、漸く現実味が戻ってきては一も冷や汗を滲ませて体が疲れを感じる。


「悪かったよ、まぁ何にせよひとまず安心だ...医務室まで雨を連れて行こう」


背中に抱き抱え直しては華を連れて歩き始める。


「それにしても、はじめくん...まさかプリズムクラスだったんだね」


「...俺もビックリしてるよ。なんで検査の時は何も出なかったんだ?」


「朱井先生に聞いたけど、検査用のリングは自己捕捉数がマックスで70までしか測れないからオーバーフローしたんだろうって」


華の説明に少し呆気に取られながらすぐに納得した一はしかし、と続ける。


「自己捕捉数が100...なんで俺がこんなスコア出せたんだろうな。」


「それについては私も気になるね...是非とも研究させて欲しいところだ」


部屋を出たところで朱井が待ち受けていた。腕を組みながらまじまじと一を凝視する。


「そ、それはまぁ構いませんが__」


「分かっている、早く医務室まで連れて行ってやれ」


一が言うより早く、手を振るジェスチャーをしながら催促をする朱井を尻目にその場を離れ始める。


「...なんか疲れる1日だったな」


「そうだね」


「大体はコイツのせいな訳だけどな」


その言葉に華は苦笑いを浮かべる。


「でも、レイちゃん悩みが晴れたみたいにスッキリした顔してる。やっぱり一くんが隣にいないと寂しいんだよ。」


「____」


少しの間互いに沈黙が生まれる。気まずさと言うよりは言葉を選んでいる、お互いがそれを分かっている。

そんな逡巡が少し流れたのち____


「華...」


「うん」


「俺...決めたよ。...頂点を目指す。」


「うん」


コイツをもう、置いていかないように。___置いていかれないように。」


「応援してる」


3人の激動の、そして長い物語の始まりの1日が終わっ___


「____ッは!...ここは」


本当の見知らぬ景色、見知らぬ天井。雨はゆっくり起き上がり辺りを見渡す。

華が夕日に照らされて傍で突っ伏して寝ているのに気がつけば慌てて肩を揺らす。


「華ッ、ハナッ!ねぇ起きて!!」


「うぇっ、うぁうぁう〜...ハッ!レイちゃん起きたぁ!!よかったぁぁあ!!!」


今度は雨が華に抱きしめられ揺さぶられる。


「うぐっ、うぐぐぐ__じゃなくて!」


なんとか華の抱擁を解いて質問を投げかける。


「わ、私どうなったの!?と言うか何があったの!!?____」


「あわわわわ、レ、レイちゃん落ち着いて...!は、話すから〜!」


しばらくあたふたした後、華は事の一部始終を雨に話した。

雨は呆然としながらそれを聞いた後、ため息を吐く。


___一はじめが...、そっか。」


目を伏せて軽く俯けば口を震わせて呟く。


「私またアイツに助けられちゃったんだ」


「......」


華は黙って聞いていた。励ますでも慰めるでもなく、転んだ子が起き上がるのを待つような眼差しで。


少しして華がグッと顔を上げて力を入れ直す。


「華!」


「うん」


華は微笑んで返事をする、嬉しいような少しどこか可笑しいようなそんな顔で。


「決めた、私もう誰にも負けない...ここにいる奴らにも、アイツにも、___私にも」


「うん、応援してる」


「(やっぱり2人はこうじゃないとね___)」


「...で、一はどこに行ったの?」


「あっ...、日課のトレーニングに行くって___止めたんだけどね?」


「...まぁ、知ってたけど。____アイツ今度コロス」


「あ、あはは____」


3人の激動の、そして長い長い物語の始まりの1日が今度こそ____終わった。



翌日の朝、3人にとっては今日からが本格的な学校生活である。

一はルーティン通りに朝食に身支度、ジョギングに軽いトレーニングを終えて寮を出る。

雨は華に起こされ介護さながらのサポートを受けながら寮を出る。


華の介護もとい面倒見の良さは長年の雨の朝のだらしなさが功を奏したのか最早プロレベル。

30分前に起きたばかりの雨の顔は眠気が残っているのに身支度は完璧というチグハグな状態である。


かくして、キラキラの寝ぼけ顔とシャキッとした仏頂面がご対面する。


「...おはよう。」


「おはよう...その様子だとよく眠れたみたいだな。華は?」


「別棟の教室、私たちとは科が違うから___」


2人は歩き始める、沈黙を嫌う様に話し始める。

雨の気後れを表す様に少し後ろを歩く形になる。


「そうだったな、孤立しないか心配だ」


「大丈夫でしょ、私たちよりよっぽど社会性高いもの」


「お前はわかるが俺まで一緒にするなよ」


少し振り返って睨む一に雨はそれよそれ、と薄ら笑いを浮かべる。


「目つき悪い上に誤魔化したり気を使ったりしないじゃない。それも無意識に、私は意識してしてるけど無自覚の方がやっぱり印象は____」


雨の口が止まる、また悪い癖だと。これじゃこのまま言えずじまいになる。それはダメだ、と。


「...なんだよ、急に黙るなよ。お前の小言は聞きたくないけどな、これはこれで気持ち悪__」


はじめ____」


2人はそこで立ち止まる、同時に一は振り返り雨の目を見つめる。

見つめた瞳は伏せたところから左右に揺れて、少しの間逡巡を待って...。


「昨日は__」


「俺の勝ちだ」


「は?」


意を決した言葉に思わぬ台詞で被せられ言葉に詰まる。


「だから、昨日の勝負は俺の勝ちだ」


「____」


「俺はお前の攻撃を受け切って、その上で行動を不能にした。正式な試合じゃないが誰が見てもあれは俺の勝ちだった」


「...なっ」


言葉を失っていた雨がハッと我に帰る。


「だから、先に行くぞ。」


____!


雨は言い返そうとした口を閉じる。


一の眼差しはまるで、『追いかけてこい』と____

『置いていかないぞ』と____

そう伝えてきているのに気がついて、つい。


「バカね、もう負けないから。今度は私の完全勝利よ、だから____」


バカにするな、すぐに追いつく____

そう2人の視線は交わる。言葉はもう不要だと、そう互いは確信する。



そうこうしているうちに教室に着いた2人は適当な席に並んで座る。

するとすでにきていた生徒たちはざわめき始める。


あれが噂の?____

プラチナクラスだ...____


隣のやつ誰?____

めちゃくちゃ可愛いじゃん____

お前話しかけてこいよ____


「......人気者だな」


「当然じゃない...でもつまらない。モブしかいないのこの教室...」


「その姿勢でよく俺よりマシってさっき言ったなお前」


なんだこの悪徳令嬢モドキ、と一は目を細めながら飽きれる。

そんな2人に数名の男子が話しかけてくる。


「はじめまして、え、てかやっぱめちゃくちゃ可愛い。君噂のプラチナの子だよね?同じクラスって聞いてテンション上がったわ」


「それな、マジでラッキーだったわ。あ、連絡先交換しようよ、交友関係は広くないとね?」


「なんなら今日放課後遊びに行こうよ、俺たち校内のスポットもう覚えたからさ!案内させてよ、ね?」


矢継ぎ早に話しかけてきながら雨を囲う男子生徒を眺めながら、一はそれらに目線すら配らない雨に呟く。


「おい。応えてやれよ、友達になりたいってよ」


「...?」


態とらしく一の方を向いて肩をすかせるポーズを取る雨に、流石に男子達は戸惑いを見せる。

そこで、唯一彼女と話している一を今度は標的にする。


「そーそー!コイツもそう言ってるんだしさ。絶対楽しいって、こんな仏頂面の弱そうな奴より俺たちのほうがさ____」


「___ぁ」


一は雨が悪い顔をしているのに気がつく。

悪いというよりは間違いなく何かをやらかす、そんな時の顔をしているのを直感する。


だがもう遅い、男子の口は止まらない。


「俺たちシルバーだけどコイツなんかゴールドでさ、やっぱりつるむなら弱い奴より俺たちの方が」


「ごめんなさい、私人の強さを見抜けない人と面白そうじゃない人とは付き合わない主義なの。____貴方達どっちも満たしてないんだもの、出直してもらえる?」


「____あーぁ」


もう知らないからな、と言わんばかりに一は顔を逸らす。


「なっ__」


「大体まだクラスしかわかってないのに自慢げにひけらかしてるの最高にダサいから、アレよね。貴方達小説ならモブか噛ませよ噛ませ」


「___」


男子達は呆然としている、当然だろう。薔薇には棘があるどころの騒ぎではない。ヒュドラが出てきて暴れはじめているのだから。

しかし男としてここで引き下がるわけにはいかない、とゴールドクラスと紹介された男子生徒が口を開く。


「じゃあ俺たちよりそっちの木偶の坊の方がいいってのかよ?」


一矢報いようと半笑いで一を指さしながら言い捨てる相手に、嘲笑しながら雨は返す。


「確かに芸はない奴だけど、アンタらよりはマシだわ。__100倍はね?」


「ならコイツに勝ったら__」


「そうね、勝ったらデートでもなんでも付き合うわよ」


「は?」


見事に巻き込まれた一は口を開きながら顔を向き直す。


「おい、なんで俺なんだよ。関係ないだろうが」


「だってこいつらしつこいし」


「ならお前がカタ付けろよ」


「こいつら面白くないし面倒だもの」


「ほーぉ、なら先にお前を片付けてやろうか」


「面白いこと言うわね、いいわ早速昨日の借りを返してあげる__」


加速しはじめた2人の会話に周りが置いていかれはじめた矢先、聞き覚えのある声が響く。


「はっはっは、まったく君たちは相変わらず青春してるな!若くて結構結構。でも残念、今日はもう組み合わせは決まってるからな〜、と言うかその前に普通の授業もあるからとりあえず座れお前ら。」


「...あ?!昨日の!?」


教壇には朱井が立っていた、雨は席を立って思わず指を刺す。

朱井はその様子を見ながら楽しそうに笑う。


「なんだ、なんで教師なんかしてるんだって顔だな。当然だろう、じゃなきゃ学校で研究なんかできないしな」


ほら座れ座れ、と号令をかけては男子達は渋々戻っていく。


「と言うか華から聞いてなかったんだな」


「...アンタ知ってたの?」


「まぁ本人から聞いてたからな」


「まぁそう興奮するな、私が恋しかったのは分かったから。いやー、私も罪な女だなほんと」


態とらしく髪を靡かせる朱井に雨はなんだこいつと言う顔で睨んで。


「さて、冗談はさておき。自己紹介からだな、私は朱井あかいアインだ、好きなものは若さ。嫌いなものは老害!愛を込めてアイ先生と呼ぶ様に」


クラスが朱井の雰囲気に押されながら静かになる。構わず彼女は話を続ける。


「担当教科は科学と物理、でもまぁ他の教科も一通り出来るから質問はどんどんする様に。なんでもいいぞ、恋愛相談なんかも承るからな、なんならそっちの方が好みだ」


「質問いいですかー」


雨が手を上げる、一はデジャヴを感じながら冷や汗を流す。


嫌な予感がする___


「お、なんだ虹宮〜。先に言っておくが彼氏は募集中だぞ?」


「先生って見た目若いですけど歳は___」


次の瞬間、物が空気を切る音と共に白い塊が雨の額にぶち当たる」


「いたぁ!?」


「おいおい、虹宮ぁ...お前もレディなら知ってるだろ?女性にその質問は禁忌タブーだ。」


明確な殺意が部屋に舞う、教室が一気に冷え込む様な錯覚を生徒達は覚えた。


「な、何今の!?ってか何これ...?」


目の前に落ちた白い棒を手の取り首を傾げる。

一はそれが何かを知っていた。


「...チョークだ」


「チョーク?」


雨は首を傾げ、朱井は感心した様に喜ぶ。


「なんだ出本、物知りだなお前。そう、これはチョーク。昔はこれで黒板ってのに手書きで書いてものを教えていたのさ」


「い、いつの話よそれ。マジで本当に歳いく__ぎゃん!!」


再び白い閃光が雨の額を貫く。


「...学ばないよなお前」


「っるさい!」


さて、と朱井は前置きをし本題に戻る。


「自己紹介も済んだし、これから授業に入るわけだが...午前中は普通の学科だ。研鑽カット戦の授業は午後からとなる」


教室の雰囲気がまた変わる、其々がやる気と闘志が滲む様に...


「んん、いいねぇ。まさに若さって感じだな...で、さっきも言ったが最初は取り敢えず私が決めた相手と研鑽カット戦をしてもらう。」


朱井がPWLAリングを持ち上げて説明を続ける。


「コレの使い方はもうトリセツを読んでわかってるな?各々自分の能力を知って、明日からは自由に相手を決めてお互い切磋琢磨してもらう」


「へぇ、随分自由なのね...」


「それが私の教育方針だ。無論質問や相談はいつでも受け付ける。PWLA一級技師の資格も持ってるからな、なんでも頼る様に。」


「...思ったよりしっかりしてるのね、てっきり青春口癖出不精博士かと__」


雨の呟きを朱井は地獄耳で聞き取る。


「まだチョークはあるぞー?」


「なんでもありませーん」


「...お前ほんとに学ばないな」


朱井は気を取り直して続ける。


「皆も知っての通り、来年ウチでは6月に新入生だけで行う新人戦がある。コレで好成績を残せれば、特待生としていろんな特典が与えられる。」


生徒達の目の色が変わる。

そう、この此処では強さが全てである。権利も優遇も強さで変わるのだ。


「特典はすごいぞ〜、成績はもちろん設備や食堂も割引が効くし異性からはモテモテ間違いなし!活躍具合によってはスポンサーの打診もあるからな」


研鑽カットは今や日本内でのトップスポーツである、全国の大企業がスポンサーとして選手であるジュエルに投資をする。

最早野球選手よりも夢があるような、そんな時代になっている。


「と、言うわけだ。その若さと勇敢さで未来を貪欲に掴みにいく様に!じゃ、私は別のクラスで授業だから...また午後にな〜」


朱井が去った後、生徒達は各々無言の熱意に包まれていた____


時間は過ぎ、4時間分のカリキュラムも終わり昼休みになっていた。

2人は華の手作り弁当を頬張りながら話していた。


「そう言えば相手は先生がすでに決めてるって言ってたな」


「まぁ誰が相手でも関係ないわよ、捻り潰してやるわ」


「仮にもクラスメイトだろ...」


「じゃあ手を抜けって?」


「そりゃそうだがな、言い方というか...まぁいいや」


雨は薄ら笑いを浮かべながら指を刺す。


「アンタが相手だったら1番いいけどね、泣くまでやってあげるから」


「そのやる気は良いけど、大丈夫なのか?また暴走しないか?...まぁそれを考えたら確かに俺が相手の方が良いけど」


「はん、私を制御できるのは俺だけでーすって事?余裕綽々で腹が立つわね」


目に炎を灯す雨にそうじゃなくて、と一は割り込む。


「コレでも心配してるんだ、あんなに錯乱するのが毎回なら戦うどころかまともにコミュニケーショも取れないだろ?」


雨は出鼻をくじかれた様に目を細めてため息をつく。


「アンタに心配されるなんてね...。でも心配無用、もう昨日みたいなことにはならないから」


「自信があるのはいいが、虚勢なら__」


「とにかく、心配はいらないわ。しっかり見てなさい、私は一秒ごとに進化するってことを教えてあげる」


一は虚勢ではないことを雨の顔を見て悟る、ならば心配は不要だと気を取りなおす。


「分かったよ、じゃお手並み拝見と行こうか」


「こっちのセリフ、昨日のアンタの記憶が朧げだだから。せいぜい見せてもらうわよ。プリズムクラスの力を____」


チャイムの音と共に、2人は席を立つ。


「よーし、集まったな〜?じゃあ早速だがコレからお前らには一発試合をしてもらう。」


朱井たちは総合体育館に来ていた。

体育館と言っても広さは普通の学校の役3倍ほどに広さである。

更に学校の施設とは思えないほどのハイテク具合がのぞける装置や建材の質の高さが空間の異質さを物語っている。


それだけでも生徒は興奮ものだが、これからついに自身の力とご対面と言うところ、目に見えてわかる様に全員浮き足立っている。


「知ってると思うがー、研鑽カットであった傷や怪我は終了と共に安全装置によって無かったことになるが____別に怪我は痛いし気絶もする。」


浮き足立った生徒達は先ほどが嘘の様に静かになる。

当然だろう、無かったことになるのは結果だけ。過程での記憶や感覚はちゃんと感じる。痛いし苦しいのは当然彼らの足をすくませるのに十分だった。


「こんなのでビビるなよ、とは言わないが。遅かれ早かれ通る道だ、覚悟はしておけよ。ただ今回は初回なこともあるので、試合の終了条件は軽めに設定する。」


朱井は指を三本立てる。


「出血があからさまな傷と骨折を負った時点」


「気絶した時点」


「試合場の10㎡から出た場合」


「今回はコレが条件だ、だから出来れば傷は最小限に。場外か行動不能にしてからの降参サレンダーを極力狙う様に。じゃあこの組み合わせ表通りに前半組、後半組で早速始めるぞ〜」


紙を壁に貼り出せば生徒達はそれを見て試合場に入っていく。


雨は自分の名前を前半組で見つけては意気揚々と向かっていく____


「じゃ、私が合図したら開始だからなー。早く準備しろ〜」


「さ、私の最初の踏み台は誰かしら...」


雨はやる気十分、と待ちきれない様子でいるところに現れたのは見覚えのある顔だった。


「...へぇ、なんだアンタか」


雨の対戦相手は朝絡んできた男子生徒の1人、ゴールドクラスの奴だった。


「まさかこんなにチャンスが早く巡ってくるなんてな...話が早い。その生意気な態度公開させてやるよ」


「ふふ、わ、分かりやすい噛ませのセリフ...わざとやってるの?っふふ」


失笑する雨の様子に、もはや怒り心頭に発する相手の様子を眺めながら一はため息をつく。


「(しかし、雨のやつほんとに大丈夫なんだろうな。俺は後半組、もしまた暴走するなら俺が止めるからな____)」


静かに覚悟を決める一を他所に、雨は昨日のことを思い出す。


雨は目を覚ました後再び朱井の元を訪れていた。


『どうしたらさっきみたいにならずに済むのよ!?』


『...凄いな、あれだけのことがあってその日に聞いてくるとは』


『良いから答えなさいよ、時間がないの私には』


『そうは言っても、結局は練習しかないって言うか...個人差があるから何度か見ながら調整していくのが普通...』


『分かったわ、じゃあ今から付き合って__』


『今からぁ?!____』


____「よし、準備はいいな?じゃあ始めー!!」



生徒達はそれぞれ早速リングを掲げて作動させる。


「「「「接続リンク開始オンPWLAスタート!!」」」」


それぞれが姿を変えていく。あるものは騎士に、あるものは超能力を得て、あるものはハイテクノロジーの武装をして...

体育館は騒然とする、交わる力と力。武器と武器の音が響いてまさしく闘技場の様な熱が舞う。


その中でも一際注目を集めるのは当然雨の所だった。


「コレが俺の力...すげぇ、力が湧いてきやがる」


雨の対戦相手は刀を武装し闘気を纏っていた。

自信が手に入れた力と武器に自信が湧き上がり彼は声を上げる。


「しゃぁ!コレでテメェの自信満々な顔を青ざめさせてやるぜぇ!」


上がったテンションはアドレナリンとなり、彼自身も止められないほどの衝動へと変わる。

早速と言わんばかりに雨に袈裟斬りの形で刀を振り上げ振り下ろす。


「(アイツ____!殺す気満々だぞ、雨__!!)」


暴走だなんて言ってられないかもしれない、そんな一の焦りは直ぐに霧散した。


「がぁっ!?なっ!?」


振り下ろされた刀は雨の周りに展開されたエネルギーシールドに弾かれる。

驚いた様に相手は少し怯む。


渾身の攻撃がまるで通じていないこともそうだが、目の前にはプラチナクラスの白金のオーラ。

明確な力の大きさを見せられ冷や水を浴びせられたように顔から血の気が引く...


「____もう終わり?...今、気分が悪いから何もないならもう__」


「う、うわぁぁあぁああ!!!!」


雨の殺意の籠った瞳を向けられ錯乱状態となった相手は、一心不乱に刀を振る。

凄まじい音が絶え間なく鳴り響いては、その威力は決して安いものではない事を示す。


だが、雨のエネルギーシールドはそれを意に返さない、傷どころか揺れることすらなくただただ虚しく金属音だけが鳴り響く...。


「____煩い」


「う゛ッ」


雨が指を相手に翳せば、相手の動きが止まる。サイコキネシスによる金縛りにより無理やり拘束をして見せる。


「はぁ...テンション上がらないわね、噛ませにしてももう少し期待してたけど...ゴールドってこんなものなの?」


雨は軽く指を振る、振る度に刀が手から離れて飛んで、相手はその場に座らされ腕を後ろに回され無力化される...


「ぐ、ぐぉっ!...ぐぅう!!」


必死にもがくがびくともしない、そんな相手の顔を雨は退屈そうに踏みながら話し始める。


「退屈させないって言ってたけど、この様じゃ説得力皆無ね?...ま、もう良いわ。貴方には飽きたし、もう終わり」


「ヒッ」


「確か、気絶させたら良いのよね...知ってる?首の頸動脈を圧迫すればどんな人間も10秒持たずに気持ちよーく眠れるそうよ?」


身動き一つ取れない状態の相手の首を、三角絞めのように頸動脈をキメる形で念動力で締め上げる。


「ッ...!!!ッ...ッ____」


『対象者の意識喪失を確認、試合を終了します。安全装置作動」


顔を踏まれながら座ったまま男子が気絶させられる、と言う衝撃的な試合を見せられ体育館は再び騒然とする。


「(...心配するべきは相手の方だったか...)」


ますますこれからの雨の学園生活を案じながら、一は冷や汗をかいていた...


「はい、大体終わったなー?幻痛や気分がすぐれないものは休んでおけよ〜」


朱井は後半組に声をかける。


「さ、次は後半組だ。張り切って行こうか!」


ほら早く!と催促をするが生徒達の足は重たい。それも当然だろう、雨が見せたもはや蹂躙とも言える試合は若干のトラウマとなっていた...


「まるでお通夜だな...まぁあんなの見せられたらそうなるよな」


一はすでに準備を終えて対戦相手を待っていた。

そして、現れたのは男子生徒だった。


「お、デビュー戦の相手はあんたか。確か虹宮さんのツレだよな?」


その生徒はどこか陽気で、ともすれば軽いと言えるような雰囲気であった。


「名前は確か...出本!出本だったよな...。あ、俺は阿瀬あぜ、よろしくな」


「あぁ、よろしく。」


そんな会話をしている間に朱井の掛け声がかかる。


「準備できたな?よーし、じゃ景気良く全員思いっきりスタートダッシュ決めろよ〜?試合開始ーーー!!!」


阿瀬はそれを聞いて一と一緒に変身をする。


「「PWLAスタート」!!」


周りで見ていた生徒が声を上げる、阿瀬の身体は雨と同じ白金のオーラを纏っていた。

そう、阿瀬はこのクラスで2人しかいないプラチナクラスの2人目だったのだ。


「悪いな出本...、俺は手加減は苦手だからな。運がなかったと諦めて____」


しかし、そんな驚きはすぐに掻き消される。体育館中がどよめき始めていた...。


「____おまえ、それは」


阿瀬は呆然とする。

そこにはプラチナも凌ぐ、最高クラスの中でも限られたものしか発動しない虹色のオーラ【万華カレイド現象エフェクト】を纏った一の姿があった。


おい誰だよあれ____

うちのクラスにプリズムクラスが居たのかよ!____

嘘だろ____


生徒達の視線は一が占領する。

プラチナが2人もいるだけで十分驚愕だが、最早そんな事を忘れさせるほどの事態にざわめきは喧騒へと変わっていく。


「嘘だろ...そ、そんな情報何処にも____」


「そうだな...アレだ。運が悪かったと諦めるんだな」


一は腰を落として構える、ほんの少し殺気が漏れただけで阿瀬は後退りする。

阿瀬は慌てて武装していた両刃剣を構えながら防御の姿勢を取る。


「(アレが一の...さぁ、今度はアンタの番よ。見せてもらうから...)」


「...いくぞ____!!」


瞬間、阿瀬は凄まじいものを目にする。

変身者は程度にもよるが動体視力や思考速度も上昇するため高速で動くものも捉えることが可能となる。


プラチナクラスともなれば、集中すれば10分の1の速度でものを捉えるほどである。


阿瀬も例に漏れずその動体視力で一の初動を見ていた...が、まるで捉えきれなかった。

動いたと思った時には距離はすでに半分まで縮んでいたのだ。


「(は、速すぎだろ!!?こんなのに襲われたらひとたまりもないッッ!!)」


阿瀬は咄嗟に、強化された身体能力をフルに使い横へ回避する。


「____」


一はその動きを捉え、即座に方向転換を____


「(____?地面に着地できない、と、言うか)」


初動にて跳躍した一は勢いそのまま着地をする前に阿瀬のいたところを過ぎるどころか凄まじい速度で場外まで飛んでいってしまう。


「と、止まれねぇ!!!!っごあ!!?ぐっ!!」


まさに1人事故、場外でようやく着地したと思えばそのまま広い体育館の端まで転がっていき壁に激突する。


『場外を確認、試合を終了します。』


2人の変身が解け、体育館は静まり返る。


「「「え?」」」


はじめ達は呆気にとられたような間抜けな声を漏らす。


一が得た力は確かに規格外であった、故に____

正しく、彼はその力に振り回されるのであった。


ついに始まったデビュー戦!

雨は暴走を抑え、自分の力をものにした。

しかし今度は一の力が制御不能と言う事態に!?


自身の体を振り回すどころか吹き飛ばすような力を一はどうするのか。


次回「特訓!まともに戦えるようになれ?!」


次回もお楽しみください。

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