出本 一という男は...
キャラクター紹介
【出本 一】
主人公、極度のルーティン遵守癖があり。自己が定めた決め事を破るのを極度に嫌う。あだ名はロボット。
【虹宮 雨】
出本の幼馴染でライバル。彼とは対照的に極度の気分屋でいつも周りを振り回す。自信家で絵に描いたような「エゴイスト」である。
【風見 華】
同じく2人の幼馴染。2人の喧嘩を楽しそうにいつも眺めている。ぼーっとしている様で意外と聡明で2人の仲裁役もこなす。科学オタク。
2100年3月5日、時間は午前5時半。
出本 一の朝は早い。
布団を畳み、洗顔を終え朝食は5分で完食。
そのまま歯を磨いて着替えたのちいつも通り6時のジョギングを始める。
いつもと変わらない朝、かれこれこの生活も6年目に突入している。
起きる時間から朝食のメニューも、ジョギングのコースも、唯一変わると言えば身長くらい。
朝から夜まで、月曜から日曜まで、1月から12月まで。彼の中でのルーティーンはただの一度も破られていない、否破らせていない。
決めたことは曲げない、変えない、疑わない。
それが彼、出本 一という男...。
「よし、行ってきます父さん、母さん」
朝のルーティンも終え、カバンを片手に家を出る。7時半きっかり、これもいつも通り。
いつも通りの街中、通学路を歩き...そして。
「おはよー!今日も今日とて時間きっかりね...。小学の時と同じでこのまま皆勤賞確定かしら...。」
「すごいよね、風邪なんかも引いたことないし...わたしうらやましぃなぁ...」
いつもの曲がり角で現れたのは2人の少女、溌剌な声をツインテールに乗せながら挨拶をしてきたのは虹宮 雨。彼の幼馴染でライバル。
もう1人の大人しめでショートボブの彼女は風見 華。同じく幼馴染で雨のお世話がかりみたいなことをいつもしている。
「そう羨むな、不可能とは言えサボり魔のレインが悪い...それさえなければお前だって風邪なんか引かなかったろ。アホだし。」
アホという言葉に雨が反応する。目尻を吊り上げながら一の胸ぐらを掴む。
「誰がアホだこのロボット人間がッ!!大体羨ましいなんてかけらも思ってないから。あんなちんけな賞なんかより私はもっと大きなものを目指してるの!」
「いだだだ!!離せバカッ!...たく...どうせいつもの『アレ』だろ?...まだ適性も分かってないってのに強気だな...」
一はため息をつきながら先を歩き始める。
それを追う様に2人が横に並びなおして歩く。
「そんなの決まってるじゃない、私がそんじょそこらの一般人と同じと思ったら大間違い!私が10年ぶりのゴールド、いや、この学校初のプラチナ号になるんだから!」
「...まぁいい、どっちにせよ今日わかることだからな」
一の言葉に雨は目を細めて微笑む。
「私より適性が低いことが怖いんだ?」
一の額に血管が浮かぶ
「お前覚えてろよ?それで俺より低かったら飯奢らせるからな」
「よしきた!今日の勝負は絶対負けないから...」
「今日も仲良しだね?」
「「良くないッッ!!!」」
華の言葉に間髪入れずに2人がハモリ返す。
華はそんな2人をニコニコ眺めながら着いていく。
昼前の四限目。高校への進学を控える生徒のカリキュラムはほぼ終わっているため、もっぱら自習だったが今日は違った。
「___と、この様に並行世界、並行宇宙論は長年研究と技術発展により日本の生活基盤をグッと押し上げました。」
先生が現代史をモニター越しに授業している。教室に座る生徒たちは退屈そうにそれを聞く、当然だろう。
受験勉強で何度も目にした部分、耳のもしている。文字通りタコができるレベルだ。
昔の学校はこれを「黒板」と言うやつに先生が書きながら説明していたらしいが、そんなこと今の時代にやりたがるものはいないだろう...。
そんな退屈な時間、当然彼女は真面目に聞くはずもない。
「はい、雨さん。今何を説明していたか分かっていますか?」
先生は名指しでモニター越しに質問を、否質問という名のお叱りを飛ばす。
雨は窓の外、グラウンドを眺めながら返事をする。
「きいてましたよ〜」
「ではこれからされる適性検査は何のためか___」
「カットを行う訓練兵、士としての適性。世界線捕捉範囲と自己捕捉数を図るものです」
先生の詰め(しつもん)に流れる様に即答する。
「では士とはどう言___」
「PWLAリングによって観測された自身の並行世界での能力・経験・技能を「今現在」に収束をさせ、常人ならざる力を得た兵士です」
日本人ならこれくらい言えて当然、と言わんばかりの雨の態度に明らかな怒りを纏いながら先生は口を開く。
「さすがは優等生ですね雨さん、あとはその態度だけどうにかなれば完璧___」
「そんなのどうでもいいですから早く適性検査しましょうよ、もう待てませーーーん」
雨は手を上げて態とらしい口調で戯ける。
彼女がこう言った態度なのは珍しくないが、今日は特に落ち着かない。
それも当然ではある。
士を目指すものとして、この「適正」は自身の価値を決定づける最重要事項である。
「確かに、カット高専への進学が決まっている貴女お気持ちはわかりますが、とぢらにせよ検査は午後からです。大人しく待っていてください。良いですね?」
ため息をしながら、仕方がないと言う顔で先生は雨を嗜める。
キーンコーン...
と、そんなところでチャイムが鳴ったところで目の色を変えて雨が急ぎ教室を出る。
「あっ!雨さん?!号令が___はぁ、」
そんな彼女を横目に一は内心ため息をつきながらも、同じ様に焦る気持ちを抑える...。
彼女同様、士を目指す以上。この適性検査は人生を決めるものと言って差し支えない、その上同じく進学が決まっている高専ではこの適性の高さによって待遇、立場、人権すら左右されるのである。
昼休みが終わり、3年生は適性検査の設備が準備されるグラウンドに集まっていた。
「遂に、ね」
ワクワクが止まらないと言わんばかりに雨は呟く。
「そうだな、...まぁ俺は適性がどうであれ目標は変わらない」
一は真剣な眼差しで検査用の装置を眺める。
「アンタらしいわね、でも悪いけど結果は決まってる。私はプラチナ級に間違いないし今回の勝負は私が勝つから。」
「はいはい、まぁそれもすぐにわかる」
「えっと、ごめんなさい。そのプラチナ級?とか適性ってどんなのだったっけ?」
間の抜けた華の声に雨は肩を落としてリアクションする。
「は、華...興味ないとは言えそんな基本中の基本を忘れるなんて...」
「良いだろ別に、華には危険だし興味ない方がいい。」
「そうだけど...、まぁいいや。いい?まず適正って言うのは___」
【世界線観測範囲】
個人がそれぞれ持つ自身の大枠の並行世界の種類の数。
基本的に個人が持つのは一つだが、稀に複数の世界線に接続が可能なものもいる。現在3つ同時に接続できる士が最大である。
【自己捕捉数】
世界線観測範囲内に観測ができる自身の可能性の数のこと。これが多ければ多いほど、士への変身時の能力値が高くなる。
「これが適性の内容、でこれらを参照して出される適性等級が___」
【ブロンズ級】
自己捕捉数が5〜10。
一般的にほとんどの人類がここに位置する。
【シルバー級】
自己捕捉数が11〜20。
500人に1人程度。
【ゴールド級】
自己捕捉数31〜40。
10000人に1人程度。
【プラチナ級】
自己捕捉数41〜50。
100万人に1人程度。
【プリズム級】
自己捕捉数51以上。
現時点で国内では10人しか存在は確認できていない。
現時点での最大捕捉数は69である。
「と、ざっとこんな感じね。ゴールド級で一騎当千。プラチナ級は最早一国を滅ぼせるなんて話もあるわ」
「へぇ〜凄いね。レイちゃん国も滅ぼせるんだ。」
「まだそうとは決まってないけどな。それをこれから確かめるんだ...。」
「あ、そっか。2人とも良い結果だと良いねぇ?」
華の言葉に2人は小さく微笑む。
そして、漸く3人の順番が回ってくる。
現時点で学校内の結果としてシルバーが5人、他は全てブロンズである。
「私はブロンズだって、ざんねーん」
先に測定をした華が肩を下ろす、本人的にはくじ引きの様な感覚なのだろう。
「じゃ、次は私ね...!」
先程まで落ち着かないどころか浮き足立っていた彼女も、流石に冷や汗をかいて緊張している。
「では、PWLAリングを装着し。ポッドの中にお立ちください。」
PWLAの社員が指示をし、雨はリングを腕に装着し装置の中に入る...。
「測定開始、世界線捕捉数___」
「...6」
「6!?」
社員どころか周りで野次馬していた生徒や先生がざわめき始める。過去最大数の3にダブルスコアで更新すると言う事態に辺りは騒然としさらなる野次馬を呼ぶ...。
「え、自己捕捉数...49。プラチナ級...です」
「マジかよ!?」「こんな田舎の学校で!!?」「いやでも虹宮なら納得かもな...」「先生!こりゃニュースだニュース!!大事件!!!!」
学校は一時騒然とする。それもそのはず、学校どころか市内でも初めての事態。当の本人も少し唖然としていた...。
「...ほんとにプラチナ級...になっちゃった」
「すごーい!!レイちゃんやったね!!」
満面の笑みで華が雨に抱きつく。少し遅れで実感が湧いた雨は弾ける様に笑って一緒に喜び合う。
そんな中
一は
「えー、出本 一さんね。自己捕捉数...測定不能。等級無しだね。」
「な...___」
出本 一という男には...。
才能がなかった。
まさかの宣言通りプラチナ級となった雨。
対照的に適性無しと宣告されてしまった一。
彼らの高校生生活は?!
彼のこれからは!?
次回【俺と勝負だ!】
お楽しみください。




